2017 Fiscal Year Annual Research Report
有機ハイドライドによる水素貯蔵に関する実験教材の開発
Project/Area Number |
17H00292
|
Research Institution | 愛知県立豊野高等学校 |
Principal Investigator |
足立 敏 愛知県立豊野高等学校, 教員
|
Project Period (FY) |
2017
|
Keywords | 有機ハイドライド / 水素吸蔵 / ジメチルシクロヘキサン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、有機ハイドライドによる水素貯蔵について、高校生でも簡便に実験できる教材開発をすることである。スモールスケール化し、メチルシクロヘキサン(C7H14 : MCH)に貯蔵した水素を取り出す実験装置を開発する。化学結合している水素を触媒反応により取り出す実験をすることで、化学のアプローチでも水素の貯蔵・運搬が可能なことを学習する機会となる。 本研究では、C_7H_<14>→C_7H_8+3H_2の反応をPt触媒により進行させた。反応容器は、試験管サイズにすることを目標に、まずは中が見やすいように自作アクリル容器を使った。アクリルがMCHにより腐食することがわかったので、次に市販のガラス瓶を利用し取り組んだ。加熱装置は、まずはホットプレートを利用し、開放形で実験の安全性を確認した後、ニクロム線を巻いた自作加熱器を使った。しかし試行錯誤の後、加熱には市販のハンダごての交換用ヒーターが適していることがわかった。触媒は、Pt担持カーボンをカーボンペーパーに付着させたものを利用した。そこへMCHを滴下し、加熱液膜状態で反応させた。このとき、滴下したMCHは急激に温度が上昇し気化、またカーボンペーパーは急激に温度が低下するため、反応時の正確な温度測定が困難であった。そこで、サーモカメラを使い、非接触かつリアルタイムで温度測定をして、温度降下の度合いを測定した。ヒーターの印加電圧と温度の関係を計測して、最終的には電圧測定のみで温度がわかるデータを用意した。発生した水素は自作のガスビュレットで測定を試みた。しかし、圧力変化が激しく、容器の気体リークもあってか、安定した測定値は容易に得られなかった。そこで、MCHが変化した後に残るトルエンの濃度を測定して反応量を知ることも試みた。これには、4-ジメチルアミノベンズアルデヒドがトルエンと反応し、共役系が伸長することで赤色に呈色するという先行研究を利用した。これらの実験から、安全性のことも考えて反応温度は250℃程度を上限にしたが、約30%の収率があることがわかった。 目標である試験管内での反応を実現するには、もう一歩研究を進める必要があるが、試行錯誤の研究の過程は、有志高校生とリアルタイムで共有したことで、化学研究の興味関心を高めることができた。
|