2017 Fiscal Year Annual Research Report
毛髪を用いた睡眠薬摂取歴の証明に係る染毛処理の影響に関する研究
Project/Area Number |
17H00301
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Research Institution | 大阪府警察本部科学搜査研究所 |
Principal Investigator |
志摩 典明 大阪府警察本部科学搜査研究所, 主任研究員
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Project Period (FY) |
2017
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Keywords | 睡眠薬 / 毛髪 / 染毛処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
分析試料の1つとして挙げられる毛髪は、被害申告が遅れたケースでは薬物検出が可能な唯一の試料であるほか、摂取時期の証明にも有用な試料である。これまでに、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI-MS)によるイメージング分析を行い、毛髪中から睡眠薬ゾルピデムを検出し、その画像化に成功している。高感度液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析(LC-MS/MS)による定量結果と併せて、以下のような知見を見出していた。 1. 薬剤摂取(単回摂取)24時間後において、ゾルピデムは毛根全域(皮下部分約4~5mm)に渡って分布する。また、濃度のピークが2箇所(毛球部位と頭皮近接部位)で観察されたことから、毛髪への取り込み経路は2箇所あることが示唆された。 2. 毛球からの薬剤の取込みは摂取後2週間程度続くことが示唆され、摂取後2週間における薬剤の分布幅は、単回摂取にもかかわらず約10mmにまで拡張する。なお、濃度のピークは変わらず2箇所観察される。薬物の摂取歴の推定はこの2箇所を特定することにより行う。 本研究では、性犯罪被害者が事件後に染毛してしまうことを想定し、染毛処理(特に酸化染毛 : 美容院等で行う一般的な染毛方法)が薬物分布に与える影響について検証した。 酸化染毛後のゾルピデムの分布を観察したところ、ゾルピデムはわずかに検出されるのみで、濃度のピーク2箇所を特定することは困難であった。従って、染毛処理を受けた毛髪では、摂取薬物の特定が可能なケースはあるが、摂取歴の証明(摂取時期の特定、単回/複数回摂取の識別)については困難であることが示唆された。これは、酸化染毛の過程でメラニン色素(毛髪の黒色色素)が毛髪から除去されることが原因で、親和性の高い薬物がその際に一緒に毛髪から脱落するものと考えられた。 本研究で得られた結果は、性犯罪捜査のための貴重な知見になるものと考えられる。
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Research Products
(1 results)