2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H00302
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Research Institution | 長崎県警察本部刑事部科学搜査研究所 |
Principal Investigator |
嶋田 裕史 長崎県警察本部刑事部科学搜査研究所, 警察職員
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Project Period (FY) |
2017
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Keywords | コリンエステラーゼ / 神経毒 / 電気化学法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 生体中のコリンエステラーゼ(ChE)を阻害することにより神経伝達に支障をきたし、中毒を引き起こす有機リン系化合物およびカルバメート系化合物(ChE阻害剤)の検出法を開発した。検体とアセチルコリンエステラーゼ(AChE)および基質(アセチルチオコリン)とを混合し、AChEの作用で生じるチオコリン濃度を測定することで検体中のChE阻害剤を検知することができる。すなわち、生じるチオコリンが少なければ、検体中のChE阻害剤の存在を示す。本研究では、電気化学法を用いてチオコリンを測定する簡便・安価な方法を新たに開発した。 上記の検体・酵素・基質の反応液とアセトニトリルを混合したものに金電極を浸漬して表面にチオコリンを結合させ、この電極を用いてフェリシアン化物イオンの酸化還元電流を測定すると、生成したチオコリン濃度(ChE活性)に応じた強度の電流が観測された。本法により、殺虫剤であるDDVP(有機リン系化合物)およびメソミル(カルバメート系化合物)を検出することができ、検出限界はそれぞれ1.0μg/mLおよび0.1μg/mLであった。 2 本法は、血液中のChE活性(ChE阻害剤による中毒の指標)評価法へも応用可能であった。ヒト血清中のブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)活性、すなわち、BuChEの作用によって生じるチオコリン濃度をモニターすることで、DDVPおよびメソミルによるBuChE活性低下を感知することができた。 3 倫理審査を経てボランティアから提供を受けた血液試料(赤血球、血漿、全血)について、本法から得られたChE活性は、分光光度法による従来のChE活性測定法から得られた結果と良好な相関を示し、血中ChE活性評価法として妥当なものであることが示された。 4 サリンやVXなども有機リン系化合物であるため、本法はこれらの検出にも応用可能と考えられる。本研究で用いた電気化学法は、簡便・迅速・安価な測定手法であり、可搬型の装置を用いることで、事件・事故現場でのon-site分析への展開が期待できる。
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Research Products
(3 results)