2017 Fiscal Year Annual Research Report
内耳形態による化石カメ類の生息環境の推定 : ナンシュンケリスは本当に陸生だったのか
Project/Area Number |
17H00317
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Research Institution | 福井県立恐竜博物館 |
Principal Investigator |
薗田 哲平 福井県立恐竜博物館, 研究員
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Project Period (FY) |
2017
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Keywords | カメ類 / 内耳 / 水生適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、1. 現生カメ類の内耳形態を解析し、水中生活への適応度による内耳形態の違いを定量的に明らかにした上で、2. 絶滅したカメ類の水生適応の程度を推定することを目的とした。 1. まずCT撮影装置を用いて、12科40種(現生種は14科356種)におよぶ現生カメ類の頭骨標本から内耳の3次元CGモデルを作成した。X線CT撮影は福井県立恐竜博物館(テスコ社 : 300kv)や東京都立産業施術研究センター(東芝 : 100kv)の装置を使用した。主成分分析の結果、系統の影響は受けつつも生態によって有為に形状が異なることが示された。さらに正準判断分析から、陸生種は半水生種や水生種に対して、顕著に形状の差が見られることが分かった。以上より、内耳形態には生態による差異が存在し、特に陸生種か否かについては比較的高い精度で識別できることが明らかとなった。 2. 次に化石種への適用だが、スッポンに近縁な系統でありながら大型陸生種とされている絶滅カメ類ナンシュンケリス類(後期白亜紀)の頭骨を使用した。浙江自然博物館所蔵の頭骨化石を用いて上海自然博物館の装置(North Star Imaging : 225kv)で試みたが、直径約15cmの頭骨を充填する赤褐色の砂岩を透過することができず、内耳のCT画像を得られなかった。そこで、すでに内耳の3次元モデルが公開されている化石種の中から生態についても良く分かっているProganochelys(後期三畳紀 : 陸生)とPuppigerus(始新世 : 海生)のデータを加え、改めて主成分分析を行った。その結果、Proganochelysは非常に強い陸生傾向を示す位置に、Puppigerusは半水生または水生傾向を示す範囲にプロットされた。これらのことから、絶滅したカメ類においても頭骨標本から内耳形態を抽出することによって、古生態を議論できることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)