2017 Fiscal Year Annual Research Report
奥秩父山地の登山道の歴史と現状~歴史的要素を組み入れた体験プログラムの開発
Project/Area Number |
17H00457
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千嶋 武 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 技術専門職員
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Project Period (FY) |
2017
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Keywords | 秩父地方 / 登山道 |
Outline of Annual Research Achievements |
秩父地方は, 多くの峠によって近隣の武蔵・上野・信濃・甲斐などの国と結ばれていた。秩父と甲府を結ぶ秩父往還(雁坂峠)は, 戦国時代には武田信玄が鉱産資源に頻繁に利用したとされ, 江戸時代には, 甲斐善光寺や身延山への参詣, 生活物資の甲斐での売買, また甲斐から三峰山への参詣のために多くの人々が往来した。本研究では, 演習林内を通過する秩父往還と信州道について, その歴史的価値, 見どころ(史跡), 峠道としての利用と自然環境の関係などを明らかにするため, 文献調査と踏査による利用の痕跡の調査を行った。文献調査から秩父は長野県に次いで峠の数が多い地域で, 歴史の古い峠が多く、秩父往還の雁坂峠は縄文時代の石器や峠越えの安全を祈願して峠の神に手向けた小銭類が出土している記録がある。踏査は, 平成29年8月3日~4日に雁坂登山道(秩父往還), 9月28日~29日に十文字登山道(信州道)をそれぞれ1泊で, 平成30年3月16日に栃本集落内の信州道を日帰りで行った。GPSで軌跡データと史跡などのポイントデータを記録し, 史跡・植生・風景などプログラム作成に必要なデータを得た。十文字登山道では江戸時代に建てられた里程観音を, 十文字および雁坂登山道では, 大正時代に建てられた道標を集落の外れまで確認することができた。また, 栃本集落の畑地の中を通過する道は石垣で補強されており, 当時の道の重要性を知ることができた。調査を夏・初秋・冬に行ったことで, それぞれの季節における登山道沿いの植生と登山道の状態を把握することができた。登山道は, 登山だけの利用ではなく, 教育や社会貢献の面にも十分活用の機会が考えられ, 今後の課題としては, 昨年度得たデータを基にプログラムを作り, その中に大学演習林の研究活動も含め, 参加者からより一層の興味を引き出し, 学習効果への誘導が期待できるものを取り入れたプログラムをつくり実行する。
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