2017 Fiscal Year Annual Research Report
マグネシウム投与時の腎臓内シスプラチン量減少メカニズムの解明
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17H00477
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 佳敬 北海道大学, 病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2017
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Keywords | シスプラチン / マグネシウム / トランスポータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではラットを用いて、CDDP腎障害に対するマグネシウム(Mg)投与の予防・軽減効果の検証およびその機序の検討を行った。シスプラチン(CDDP)2.5mg/kg/週の腹腔内投与を3回繰り返すことにより、CDDPの反復投与を再現した。採血はCDDP投与前、CDDP投与5日後、7日後に行った。 その結果、腎機能障害の指標として用いた血清クレアチニン値はCDDP1回目投与5日後より生理食塩水を投与したコントロールラットと比較して有意に上昇し高値を維持したが、Mg併用によりその上昇は有意に抑制された。近位尿細管障害マーカーであるKidney injury molecule-1(rKim-1)の発現量もMgの併用で有意に低下した。血清Mg値はCDDP1回目投与後より有意に低下し、その後は横ばいで推移したが、こちらもMgを併用することにより有意にその低下は抑制された。 以前我々はCDDPの近位尿細管への取り込みを担うOrganic cation transporter 2(rOct2)の発現量はCDDP単回投与後にはコントロールラットと比較して約1.4倍に増加するが、Mgの併用によりその発現が0.5倍へと低下すること、近位尿細管からのCDDP排出を担うMultidrug and toxin extrusion protein 1(rMATE1)の発現量はCDDP単回投与では変動が認められないが、Mgの併用により1.7倍に増加することを報告している。一方で、3週反復投与後にはrOct2, rMate1の発現量はCDDPならびにMgの投与の影響を受けなかった。CDDP3回反復投与でも単回投与後と同様に腎プラチナ量の減少が認められたことから、反復投与後の腎プラチナ量の低下には他の輸送担体の関与の可能性が示唆された。そこで、近位尿細管へのCDDPの取り込みに関与すると報告されていたrOct1、rCtr1に対するMg併用の影響を検討した。rOct1発現に対してMgの併用は影響を与えなかったが、rCtr1発現量はMg併用に伴い約20%へと大幅に低下し、3回反復投与後の腎プラチナ量減少の一因と考えられた。 CDDPの投与回数により腎トランスポータの発現量に差が認められたことから、今後はその要因ならびにCDDP、Mgによるこれらトランスポータ発現の調節機構について解明する予定である。
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Research Products
(3 results)