2017 Fiscal Year Annual Research Report
グリア細胞に着目した抗がん剤による報酬機能異常の発症メカニズムの解明
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17H00496
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
江角 悟 岡山大学, 病院, 薬剤主任
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Project Period (FY) |
2017
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Keywords | ドキソルビシン / シクロホスファミド / 脳内自己刺激行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的 本研究では、抗がん剤反復投与ラットを用いた生化学的検討により抗がん剤によるグリア細胞の形態および機能異常を特定し、抗がん剤による報酬機能障害のメカニズムを解明することを目的として検討を行った。 方法 実験にはWistar系雄性ラットを用いた。まず、ラット内側前脳束に脳内刺激用電極を慢性的に挿入・固定し報酬獲得行動の1つである脳内自己刺激行動を学習させた。本行動を獲得したラットに対して、抗がん剤としてドキソルビシン5mg/kgおよびシクロホスファミド50mg/kgを週1回、2週間反復投与した。最終投与の1週後の脳サンプルを摘出しグリア細胞機能の評価に用いた。なお、この時点で報酬機能障害が認められることは先行研究により確認している。 主要な研究成果 脳内グリア細胞のうち、アストロサイトの細胞骨格マーカーであるGFAPの発現について、抗がん剤投与群は対照群と比較して記憶に関連する海馬領域で大きく低下した。また、ミクログリアの細胞骨格マーカーであるIba-1の発現について、抗がん剤反復投与ラットは対照群と比較して海馬および情動に関与する側坐核領域で大きく上昇した。Iba-1は神経炎症時に発現量が増加することが知られており、抗がん剤投与による炎症性変化がIba-1の発現量に影響を与えたと考えられる。側坐核はドパミン神経の主要な支配下領域であり、今後は側坐核におけるIba-1発現量増加とドパミン神経機能変化の時間的および空間的関連性について明らかにする必要があると考えられる。
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