2017 Fiscal Year Annual Research Report
光学異性体であるカチノン類およびその代謝物の定量と摂取時期の推定
Project/Area Number |
17H00544
|
Research Institution | 石川県警察本部刑事部科学搜査研究所 |
Principal Investigator |
石丸 麗子 石川県警察本部刑事部科学搜査研究所, 専門研究員
|
Project Period (FY) |
2017
|
Keywords | カチノン類 / 光学異性体 / 薬物代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
危険ドラッグの主たる薬物群であるカチノン類の代謝経路はほぼ解明されたものの, カチノン類およびその代謝物はいずれも不斉炭素を有しており, これらの光学異性体の生成比を個別に評価した報告はなされていない. そこで本研究では, カチノン類の代謝によって生成される複数の光学異性体を, シクロデキストリンの包接作用を利用したキャピラリー電気泳動質量分析法(CE-MS)により相互に分離し, 個々の代謝生成量を比較・評価することで, 詳細な代謝機構を明らかにするとともに, 薬物摂取時期を推定し得るマーカーの探索を目的とした. 本研究では, d-, l-メトカチノン, カチノン, エフェドリン, プソイドエフェドリン, ノルエフェドリン, プソイドノルエフェドリンの計12化合物を分析対象とした. CE-MSにおいて, 12化合物についてのフラグメンター電圧およびコリジョンエネルギーを最適化し, 泳動液にheptakis-(2,3-diacetyl-6-sulfato)-β-cyclodextrinおよびhighly sulfated γ-cyclodextrinを添加することによって, すべてを一斉分離可能な分析条件を確立することができた. dl-メトカチノン(乱用薬物として流通しているカチノン類は基本的にラセミ体)をヒト肝ミクロソーム処理したところ, 代謝物としてd-, l-カチノン, エフェドリン, プソイドエフェドリンの生成がいずれも確認され, それぞれの生成量は顕著に異なることが明らかとなった. これは, 第I相反応におけるN位の脱メチル化およびカルボニル基の還元に寄与するとされるCYP2D6および11β-hydroxysteroid dehydrogenaseの作用が立体選択性を有しているためと考えられ, これら2つの代謝経路に関わる光学異性体の生成比が薬物摂取時期推定のマーカーになり得ると示唆された.
|