2017 Fiscal Year Annual Research Report
細菌DNAおよびmtDNA分析による劣化した唾液の同定・個別化に関する研究
Project/Area Number |
17H00675
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Research Institution | 神奈川県警察科学搜査研究所 |
Principal Investigator |
大田 隼 神奈川県警察科学搜査研究所, 法医科, 生物科学職
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Project Period (FY) |
2017
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Keywords | 唾液 / 細菌DNA / 劣化 |
Outline of Annual Research Achievements |
資料の同定、個別化を目的とした鑑定実務において、法科学的資料の特徴である劣化した試料への対策は重要な課題である。唾液は犯罪現場に遺留される代表的な体液種の1つであり、唾液に含まれる細胞由来のDNAはDNA型鑑定によって捜査に有益な情報を提供する。しかしながら、劣化した試料において汎用される唾液の同定指標である唾液アミラーゼ活性は失われやすく、個人識別に資するヒトの核DNAおよびmtDNAの量や検出感度はその活性とは相関しない。そこで、本研究は口腔内細菌DNAを指標とした唾液の同定およびmtDNA分析による個人識別に着目し、劣化試料に対する有効性を明らかにすることを目的とした。唾液の同定指標とする口腔内細菌は、先行研究のあるStreptococcus salivariusおよびVeillonella atypicaに加え、新たにStreptococcus oralisとPrevotella maculosaを対象として検討した。細菌DNAは、リアルタイムPCRを行い、続くPCR産物の融解曲線分析によるMelt peakを指標として検出した。 本研究の結果、新たにPrevotella maculosaのDNAを指標としたPCRによる検出系が設計された。微生物分解試料を用いた検討の結果、アミラーゼ活性が失われてヒトの核DNAの検出が困難な試料であっても、Streptococcus salivarius DNAおよびmtDNAの検出は可能であった。また、熱変性によってアミラーゼ活性が失われた試料からでも細菌DNA、ヒトの核DNAおよびmtDNAは検出された。紫外線の影響を検討したところ、照射量依存的なDNA検出性の低下が認められた一方、アミラーゼ活性は安定に検出された。これらの結果から、細菌DNAによる唾液の同定およびmtDNAによる個別化は、微生物や熱による作用で劣化し、アミラーゼ活性が失われている試料に対し、有効であることが明らかとなった。今後は、引き続きStreptococcus oralisについても検討を進めるとともに、細菌の種類による特性(感度、特異性等)についても検討を重ねる予定である。
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Research Products
(1 results)