2017 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子診断について高校生の理解を促す実験開発と授業展開
Project/Area Number |
17H00682
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Research Institution | 神奈川県立高浜高等学校 |
Principal Investigator |
井上 陽子 神奈川県立高浜高等学校, 教員
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Project Period (FY) |
2017 – 2018
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Keywords | UDPグルクロン酸転移酵素 / 遺伝子診断 / 遺伝子バリアント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、イリノテカン(抗がん剤)の代謝に関与するUDPグルクロン酸転移酵素の遺伝子バリアントをヒトのDNAからPCR-RFLP法により検出することを想定した。また、モデル生物であるゼブラフィッシュ(水中生活を行う)でもイリノテカンを無毒化する遺伝子が存在することを同実験により合わせて検証し、進化をも俯瞰できるよう試みた。さらに、大学医学部の遺伝子診療部の医師、認定遺伝カウンセラー、臨床検査技士と共に高校生を対象に遺伝子診断を考える授業を実施し、授業前後のテスト及び質問紙調査法により効果を評価した。 その結果、以下のことが認められた。 (1) 薬物代謝に関する実験開発 データベースよりヒトでは、UGT1A1遺伝子の211G→A(Gly71Arg)にバリアントがあり、211G→Aのバリアントを持つ場合は酵素活性が低下し、有害反応に影響することが解った。一方、ゼブラフィッシュにも同じ遺伝子が存在するものの、ヒトのバリアントが認められるのと同位置の塩基はAであり、アミノ酸配列ではK(DNAの塩基配列ではAAA)に変化していることからイリノテカンの代謝酵素活性については、判定が困難であった。ゼブラフィッシュは進化上ヒトとは離れているが、遺伝子の配列についても大きく異なっていた。また、高校の授業で実験を実施するにはPCR-RFLP法よりも時間のかからない方法を検討する必要性が認識できた。 (2) 遺伝子診断を考える授業 授業前後のテスト及び質問紙調査法の結果より、高校生は本授業に参加することによって倫理面や遺伝情報の保護、病院で行う確定診断とwebから申し込む遺伝子検査の違いなど遺伝子について正しく認識できることが解った。 今後は3側に変異を入れたアレルスペシフィックPCRを用いることや倫理審査を受けた上で日本人のがん患者のDNAを用いるなど特に実験開発において検討を続けたい。
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