2019 Fiscal Year Annual Research Report
防災と被災地復興の基盤を形成する地域災害資料・情報学の構築―国際比較の観点から―
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17H00772
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
白井 哲哉 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (70568211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
バールィシェフ エドワルド 筑波大学, 図書館情報メディア系, 助教 (00581125)
阪口 哲男 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (10225790)
照山 絢子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 助教 (10745590)
辻 泰明 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (30767421)
宇陀 則彦 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (50261813)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アーカイブズ / 地域災害資料 / 知識情報学 / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究事業は、2018年度末にインドネシアのシラクアラ大学との国際シンポジウム開催及び研究代表者である白井が単著『災害アーカイブ』を刊行するなどの大きな成果を挙げたので、3年目である2019年度は研究上の新段階へ向かうための基礎的調査研究を遂行した。 第一は、国内資料研究班において、継続して進めてきた福島県双葉町役場が保有する災害資料約170箱分の整理及び目録データ作成作業で、2020年度末で約9割の目録データ化を終了した。これにより2020年度の目録データ作成完了が視野に入った。また双葉町における被災資料の調査活動を継続して進め、研究メンバー中心となって被災地の大字誌を地元で刊行するなどの成果を挙げた。第二は、資料情報システム研究班において、双葉町の災害資料の一部の画像及び双葉町の被災地の画像にボランティアがキーワードを付与するマイクロタスク型クラウドソーシング技術のシステムを改善し、有効回答数を増加させた。これにより従来より多くのデータが蓄積されるようになった。第三は、海外資料研究班において、前年度の国際シンポジウムの成果刊行に向けた準備を開始するとともに、フランス国立視聴覚研究所及びフランス国立図書館内「イナテーク」においてヨーロッパの災害関係放送番組の調査などを行った。 また海外資料研究班を中心に研究メンバー全体で実施した事業として、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所及び国立チェルノブイリ博物館・チェルノブイリ市立博物館の視察調査を行った。特に、国立チェルノブイリ博物館ではコロレスカ館長から半日に及ぶレクチャーを受けることができた。調査にあたってはキエフ国立大学の江川裕之講師の御高配を賜り、現地との研究交流を継続させる足がかりを作ることができた。現地で複数の論文の提供を受けたので、ウクライナ語から日本語に翻訳して研究メンバー間で共有を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究事業は、日本国内における東日本大震災関係の災害資料の調査分析及び情報発信システムの構築と、海外における災害資料の実態調査を並行して実施する構想である。2019年度末までに、前者については大量の資料の目録データ作成完了が射程に入ったこと及び情報発信システムの改善が進んだ。また福島の被災地と災害アーカイブに関するフォーラムの開催も実現できた。後者については、台湾・インドネシア・ウクライナと海外における複数の災害資料調査研究機関とのコンタクトが叶って今後の研究交流の基盤が構築できるとともに、国際シンポジウムの開催も実現できた。これらは本事業の最終年度の成果として目指していたところであり、それが3年度目末の段階で相当程度達成できていることは、当初の計画以上に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は本研究事業の成果報告のまとめ方について検討を進めるとともに、新たな研究事業の構想を進めている。本研究事業については、2020年度末で双葉町の災害資料群の輪郭が解明できるので、それと海外調査の成果を合わせた「災害アーカイブ学」の提唱を目指す方向で研究メンバーから報告を求めることを考えている。 その一方で、被災地で救出される被災資料や保全される災害資料は、各国でさまざまな特徴があることも少しずつ分かってきた。今後はこれらの国際比較研究に向けた方針を立てる必要がある。また海外においては被災者のオーラルヒストリーがアーカイブ対象として明確に挙がっているが、本事業を含めて日本ではこの点が必ずしも十分に視野に入っていない。「災害アーカイブ学」の確立と国際的な研究連携を今後図っていく上では、上記の課題に対応できる調査研究体制を整備してさらなる研究の推進を図っていく必要がある。そこで現在、基盤研究(S)の申請を行っているところである。 本研究事業を推進する上では国内外におけるフィールドワークが不可欠である。現在の新型コロナウイルス感染防止をめぐる国内外の情勢においても、疫病の流行を一つの災害事象と位置づけて資料のアーカイブ方策を検討する必要があり、そこへの視野も広げていく所存である。
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Research Products
(10 results)