2017 Fiscal Year Annual Research Report
Technology to Regulate Stem Cell Functions via Dynamic Modulations of Microenvironments
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17H00855
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 求 京都大学, 高等研究院, 客員教授 (00706814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 洋史 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50551173)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / 幹細胞制御 / 細胞微小環境モデル / 細胞接着 / 細胞変形・遊走 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では周囲の物理的・化学的刺激により誘引された環境の動的変化を用いて幹細胞の機能(分化・自己複製)を制御する新しい技術基盤の開拓と、幹細胞の動的応答メカニズムを明らかにすることを目指す。当該年度の実績を3つのワークパッケージ(WP)に分けて以下に概説する。 (WP1)「化学的刺激による造血幹細胞の自己複製と遊走の制御」では、造血幹細胞の変形と遊走の時空間パターンを、臨床現場で使用されている2種類の細胞可動化薬剤および骨髄に存在する細胞誘導因子の存在下で定量した。薬剤の機能が細胞変形や遊走に与える影響を「動的表現型」として指標化し、これを用いることを国際誌にて提案した(Monzel, et al., Scientific Reports (2018))。 (WP2)「物理的刺激による間葉系幹細胞の自己複製と分化の制御」では、分担研究者:吉川と光学系を設計し、共焦点光学系を反射干渉顕微鏡に組み込んだ装置の開発を行った。また、連携研究者:原田・中畑と、弾性率を動的に可逆変化できる水和ゲル基板を開発し、この上でヒト間葉系幹細胞が安定に接着するための表面機能化に取り組んだ。 (WP3)「細胞間接着を使った幹細胞の多能性維持」では、人工多能性幹細胞(iPS細胞)をE-cadherinで機能化された脂質二分子膜の表面で安定に接着するための条件を、研究協力者:山本を中心に確立した。一方、Coherent X-ray Diffraction Imagingによって凍結固定した細胞の表面構造と細胞内電子密度を数10 nmの空間分解能で測定する実験・解析手法を、マラリア感染性ヒト赤血球を用いて確立し、その成果を国際誌に発表した(Frank, et al., Scientific Reports (2017))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度である当該年度には、3つのWPについてそれぞれ、サンプルとなる細胞の増殖培養、物理刺激・化学刺激による細胞制御を可能とする細胞微小環境モデルの構築、弾性率・張力・接着力といった細胞力学の精密計測手法と、細胞の自発的変形と運動の解析手法の確立について、並列に推進してきた。そのために研究代表者である田中が指揮をとり、各研究分担者および連携研究者の専門と役割分担に基づき個別に研究を推進しながら、同時に組織内の連携を綿密に取ってきた。このような組織体制を構築することで、初年度にも関わらず大きな成果を挙げた。また、当該年度以降で計画していた光ピンセット装置を用いた細胞膜の張力計測(WP3)に関しては、連携研究者:鈴木を中心にC2C12筋芽細胞を用いて実験装置・解析手法を既に確立したほか、当初は計画していなかった「細胞形状と細胞内電子密度の可視化」という重要な成果を挙げることもでき(WP3)、いくつかのテーマでは申請時の研究計画を超えて研究を展開することができた。 また本研究課題の推進に当たっては技術補佐員を雇用した。細胞の拡大培養や細胞微小環境モデルの作成など、実験手順の最適化を終えた範囲に関して業務を適切に分配することで、効率的に研究を推進する体制を既に整えている。 一方当該年度には、研究組織内の連携を進める中で、安定な細胞接着、外部刺激への応答、定量的な解析の精度を担保する測定手法を同時に実現できる実験系を構築する上で、いくつかの課題が明らかとなった。これらの課題に対応する方策については研究組織内で既に議論・試行を十分に重ねており、当初の研究計画に大きな変更を加えることなく研究を推進することができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、本研究課題は非常に順調に進捗しているので、当初の研究計画に則り各WPについて以下の方策で研究をさらに展開していく。全てのWPに共通して、細胞の変形と運動を記述する運動方程式を連携研究者:太田と確立し、その理論モデルから微小な外部摂動の影響を定式化・予測することで、幹細胞制御基板のための材料設計の指針として活用する。 (WP1)骨髄微小環境において重要な細胞接着分子Nカドヘリンと細胞遊走因子SDF1αの共存系の実験モデル上で、造血幹細胞の接着強度を精密測定する。圧力波を用いた接着強度計測装置を用い、上述の分子の密度や化学的外部刺激の有無による細胞接着力の変化を定量する。造血幹細胞を未分化状態で長期に保持できる最適条件を決定し、ヒト造血幹細胞を自己複製培養できる技術基盤を創出する。 (WP2)力学的摂動によって誘起される細胞形状の動的変化を記述するために、細胞主軸方向に対する細胞骨格の方向秩序をネマチック秩序変数で記述し、その時間発展を明らかにする。同時に細胞接着を共焦点‐反射干渉顕微鏡により可視化し、ヒト間葉系幹細胞における細胞骨格と接着の形成が基板弾性率の動的変化という物理刺激に対し協奏的に応答する動力学を明らかにする。さらに、細胞移植医療において重要な課題である細胞周期の同期を実現するために、幹細胞の多分化能の維持率や自己複製率を解析し、培養幹細胞を休止状態に追い込む条件を見つけることを目指す。 (WP3)細胞の自死を防ぐのに必要なROCK 阻害剤やBlebbistatin(化学的刺激)の投与レベルと細胞の力学的特性の相関を、接着強度計測・光ピンセット装置を用いた張力計測によって明らかにする。ヒトES・iPS 細胞の多能性を維持したまま単一細胞を安定培養できる条件を決定し、ヒト多能性幹細胞を一細胞分析できる技術基盤の創出を目指す。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Lensless Tomographic Imaging of Near Surface Structures of Frozen Hydrated Malaria-Infected Human Erythrocytes by Coherent X-Ray Diffraction Microscopy2018
Author(s)
Frank, V.; Chushkin, Y.; Froehlich, B; Abuillan, W.; Rieger, H.; Becker, A. S.; Yamamoto, A.; Rossetti, F. F.; Kaufmann, S.; Lanzer, M.; Zontone, F. & Tanaka, M
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 7:14081
Pages: 1-9
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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