2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H00912
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Research Institution | Osaka University of Tourism |
Principal Investigator |
伊藤 鉄也 大阪観光大学, 国際交流学部, 教授 (10232456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 裕久 大阪観光大学, 国際交流学部, 准教授 (70288695)
王 静 大阪観光大学, 観光学部, 講師 (30758529)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 平安文学 / 多言語翻訳 / 日本文化 / 受容史 / 『十帖源氏』 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者がこれまでに調査し収集した、世界各国語に翻訳された日本古典文学作品の翻訳書を、所属基盤機関である大阪観光大学図書館で、全6回にわたって公開展示した。これは、科研費による研究成果を広く公開したものである。国際交流に関しては、「翻訳家の目で見た日本古典文学の特徴」(2017年11月1日(金)、広島大学ライブラリーホール)に、研究協力者として情報収集と整理を担当している学生9名を引率して参加した。研究代表者はシンポジウムの司会進行を担当し、併せて『源氏物語』をロシア語に翻訳されたタチアナ・L・ソコロワ・デリューシナ先生や広島大学の学生との交流も果たした。 また、インドとミャンマーの2カ国へ、資料の調査と収集及び研究に行った。インドでは「第9回 インド国際日本文学研究集会」の打ち合わせを、国際交流基金ニューデリー事務所とハイデラバード英語外国語大学で実施した。そのため、前年度にホームページ上に公開した情報を再度整理して印刷版とした『平安文学研究ジャーナル《インド編 2016》』(伊藤鉄也編著、250頁、2018(平成30)年2月)を持参して配布した。ウルドゥー語やテルグ語など多数の辞書も入手した。ミャンマーでは、これまではないとされていた多くの日本文学・文化関連の翻訳書を確認できた。中でも、『源氏物語』の多国語翻訳においては、34種類目の言語となるビルマ語訳『源氏物語』を発見したことは、大きな収穫であった。このビルマ語訳『源氏物語』については、翻訳者と2度の対談を実施した。日本語への訳し戻しも含めて、日本文化の伝流と変容をテーマとする本科研において、あらためて取り組むことになる。 日頃の研究成果を報告し討論する研究会は、6月に大阪で、1月に東京で実施した。その詳細は、『海外平安文学研究ジャーナル 第7号』(2018年発行予定)で報告する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
世界各国で翻訳されている平安文学の研究情報は、少しずつ国を拡げて集まってきている。これらは、[海外平安文学研究翻訳情報]として、大きなデータベースに育てているところである。その成果を踏まえて、今後は受容史と研究史の整理へと向かうことになる。ただし、江戸時代の簡約版『十帖源氏』を多国語翻訳し、日本文化の変容と理解について共同研究を展開することについては、思うように進展しなかった。これは、本科研における初年度であること以外に、研究代表者の所属機関が国文学研究資料館から大阪観光大学へと移り、研究環境が一新したことも原因となっている。これについては、2018年度に研究態勢を整え直して取り組む予定である。 共同研究基盤の整備を目的として、世界各国の方々との情報交換やコラボレーションの窓口となるホームページ「海外源氏情報」(http://genjiito.org)を拡張して、[海外平安文学情報]のサイトを構築する計画を進めてきた。しかし、その業務を請け負った会社が情報公開の仕組みを構築できなかったため、このプロジェクトは2年目の2018年度の課題とすることにしたい。その経緯は、「【全10回一覧】昨春採択の科研(A)のホームページが公開できない理由」(http://genjiito.sblo.jp/article/183095783.html)に詳細に報告した通りである。多くの方々に研究成果としての情報が利活用していただけるように、公開を原則としたコラボレーションの手法での研究を推進していきたい。 その他の研究課題については、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
海外における『源氏物語』については、ほぼ情報を集めることができた。次はその守備範囲を拡大し、平安文学作品で翻訳されているものの情報を集積していきたい。そのためにも、インターネットを活用することはもとより、人的なネットワークも活用していくことになる。これについては、研究代表者がこれまでに構築してきた人脈と、研究協力者の人的ネットワークとのコラボレーションに期待したい。 『十帖源氏』については、前年度は研究代表者が東京から大阪へと転任したことに伴い、実作業者が大きく変化した。2年目は新たな研究協力者のもとで、「須磨」巻と「明石」巻の2巻を対象として取り組んで行くことになる。 研究情報も、現状では『源氏物語』に偏っている。そのため、幅広く知られている『百人一首』も、調査研究の対象に加えることとした。平安文学へと広げるためにも、研究協力者とのコミュニケーションを密にして、効率的な情報の整理を果たしたい。そのため、「Evernoteビジネス」という情報管理ツールを2018年4月より導入し、研究協力者の間での情報共有の仕組みを飛躍的に高めた対処をすることにした。 新たに構築し直す、共同研究におけるツールとしてのホームページをフルに活用して、研究成果を積極的に国内外に公開していくつもりである。
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Remarks |
「海外源氏情報」(http://genjiito.org)のリニューアル版を2018年度早々に公開する。
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Research Products
(3 results)