2018 Fiscal Year Annual Research Report
Effects of High Frequency Tradings on Efficiency and Stability of the Foreign Exchange Markets: Analysis using High-frequency Data
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17H00995
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
伊藤 隆敏 政策研究大学院大学, 政策研究科, 特別教授 (30203144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 昌弘 一橋大学, 経済研究所, 非常勤研究員 (60732435)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 外国為替市場 / 高頻度データ / 裁定取引 / 仲値 / 高速取引 / 指値 / マクロ統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、外国為替市場における高速頻度取引(high-frequency trading)の発達が、市場の効率性と安定性にどのように影響しているかを実証的に明らかにすることである。データは電子ブローキングシステム(EBS社)の中に蓄積される、高頻度(1秒の100分の1)の大量のデータを使用する。昨年度は、ロンドンの仲値(4pm WM/Reuters fixing)と東京の仲値(9:55am)前後の価格の動き、取引量の動きから、私的情報を保有する銀行が、仲値形成に影響を及ぼそうとして取引実行のタイミングや実行価格について「工夫」しているかどうかを検証した(Ito and Yamada (2017), Ito and Yamada (2018))。本年度(2018年度)は、この日本の論文を発表する機会を増やして研究成果の伝播につとめた。2019年3月にGRIPSで開催したEBSデータ国際会議では、アメリカから二人の学者を招待した。Melvin教授はわれわれが分析したロンドンでの談合疑惑の結果として生じた民事裁判で、訴えられた銀行側の証人としての経験を話して、伊藤・山田論文が非常に核心をついていると評価した。Levich教授も東京市場の仲値決めに関連して、非常に興味深い結果と評価した。一方、Melvin教授の発表論文とLevich教授の発表論文は、来年度以降の研究の方向を考えるうえで参考になった。 本年度発表の論文は、Ito, Takatoshi (2018)があるが、これは、外国為替市場が、EBSのマッチング・コンピューターの導入、銀行などのDealerのコンピューターとの接続、などによって外国為替市場が、裁定取引が瞬時のうちにできるという意味で、効率的になる一方、高速取引のなかで、一方的に急騰あるいは急落するというリスクがたかまっていることに警告を鳴らしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は発表論文が2本と予想以上の成果を上げた。今年度は新しい方向の研究を始めたため、Journalの掲載論文は出なかったものの、次の研究課題への仕込みが行われ、おおむね計画通り進行している。現在はマクロ統計の発表日のPrice Discoveryの速さなど為替レートの動き、変動性の分析の研究を進めている。それと同時に、政治的なイベントなどが起きて為替が大きく変動した場合の指値の入り方、キャンセルのされ方を分析することで、高頻度で市場の厚み(Liquidity)・深さ(Depth)の変化を研究するための準備作業を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初研究目的に掲げたもののうち、昨年度、今年度の研究対象にならなかったものについて、来年度は、研究を推進していく。第一に、市場に新しい情報が伝達されたとき(たとえばGDPの発表、インフレ率の発表時)、市場参加者がどのようにその情報をプライシングに反映させていくか、これまでの市場構造の変化に応じて、あらたな均衡価格の発見速度はどのように変化してきたか、などである。第二に、金融機関が取引コンピューターにプログラムを組み込んで、自動的に取引指示を出すアルゴリズム取引の進展とともに、裁定利益機会の発現など、異常現象(アノマリー)の出現頻度は減少、出現したときの継続時間は短縮してきたと考えられる。これを定量的に示したい。これを示すことができれば、アルゴリズム取引の進展により、市場の効率性が増す現象と評価することができる。第三に、アルゴリズム取引の割合が高まると、高速取引のため、いったん一方向へ急激な変化がおきると、それが増幅されるのではないか、という懸念がある。短時間の急激な変化(フラッシュ・クラッシュ)の検証を行う。第四に外国為替市場では、EBSやロイターという株式取引所にも似た売買システムから、個別の金融機関において売り買いをマッチさせてしまう「ダーク・プール」が増えてきた。取引集中型のシステムから、分権型の取引が増えているように見える。これが、市場全体のプライシングやボラティリティにどのような影響を与えるのかを研究したい。マクロ統計の発表日の分析、相場の変動が大きなときの分析の準備を進めてきたが、来年度はその研究に取り掛かる。
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Research Products
(4 results)