2020 Fiscal Year Annual Research Report
Effects of High Frequency Tradings on Efficiency and Stability of the Foreign Exchange Markets: Analysis using High-frequency Data
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17H00995
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
伊藤 隆敏 政策研究大学院大学, 政策研究科, 名誉教授 (30203144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 昌弘 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (60732435)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 為替レート / 高頻度取引 / マイクロストラクチャー / 仲値 / 裁定取引 / 取引実行リスク / 流動性 / 価格発見 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アルゴリズム取引が市場取引に占める比重が大きくなるにつれて為替市場が効率的になったか、という大きな課題のうち、裁定取引利益機会発生の頻度は減少してきたか、裁定利益機会が発生した場合に継続時間の短縮があったか、という点を中心に研究を進めた。為替市場における裁定取引利益機会には、ネガティブ・スプレッド(買い指値が売り指値よりも高い)による利益や三角裁定の利益(円からドル、ドルからユーロ、ユーロから円という3回取引をすることで利潤が出る)がある。このような利益機会の存在を発見したトレーダー(銀行ディーラー)達は、すぐに取引を実行して利益を獲得しようとする。一番速く取引を実行するトレーダーは利益を得られる一方、出遅れたトレーダーは、取引が実行できない場合(利益も損失もなし)や、一部しか取引が実行できない場合(損失となる可能性が高い)がある。したがって、利益機会の発見と実行はスピード勝負となり、銀行コンピューターに搭載したアルゴリズミック取引(高頻度取引、HFT)が自動的に実行されるようになることで、利益機会は消滅するようになる時間は短縮すると考えられる。 1999年から2010年までの、EBSのマッチング・コンピューターに蓄積された1秒単位のデータを検証した。銀行コンピューターがEBSに直接の接続を許されるようになるに従って、利益機会の出現頻度が減り、出現してもその継続時間が短縮したことが発見された。このような研究に対する批判は、利益機会がデータ上観察されたとしても、実際に取引を実行して利益を上げることができたとは限らないというものである。そこで、1秒後も同じ買い指値、売り指値が表示されていれば取引は実行できたという仮定のもとで、取引実行リスク(裁定取引の一部のみ実行されることで、)を勘案しても、アルゴリズミック取引が主流になる前は、裁定利益が出ていたことを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナにより、大学への出勤、共著者との共同作業が著しく制限されるなか、作業は遅れ気味となった。毎年開催してきたコンファレンスも2020年度は開催することができなかった。このため、繰り越しを申請して認めていただいた。繰り越しの結果ほぼ、遅れを挽回した。データについては継続的に購入して、新たな研究に利用できるように整備を続けている。
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Strategy for Future Research Activity |
高頻度取引(アルゴリズミック取引)が市場の効率性に与える影響についてさまざまな角度から検討する。第一の検討課題は、市場に何らかの「ショック」(為替レート決定にとって重要な新しい情報のうち予期されていなかった分が市場に伝えられる)があったときに、買い指値と売り指値がどのように変化するか、変化の過程で流動性が供給され続けるか、新しい情報を消化したあとの新しい為替レートへの到達時間が短縮されるのか、という課題である。この課題解決のための研究と推進するためには、定量的なショックのデータを収集することと、その「ショック」が起きた直前、直後の為替レートと取引量の動きを分析することになる。為替レートは、買い指値、売り指値、取引値(買い指値サイド、売り指値サイド)を区別して分析することになる。 「ショック」の一例は、為替レートの決定にとって重要な変数(たとえば、インフレ率、GDPなど)の政府統計発表である。発表日時のスケジュールはあらかじめ政府から発表されている。政府統計発表の前には、市場の予想が市場参加者の間で形成されているので、予期されない部分は、発表値から市場予想を差し引いた値となる。このように、重要変数の政府統計発表のショックは定量化することができるので、これを左辺の変数として、流動性の変化、新しい均衡への到達時間へのインパクトを計測、分析することができる。高頻度取引を行うものを推定して、アルゴリズミック取引を駆使する高頻度取引者とそれ以外の取引者の行動の違いを区別して分析することが研究方針となる。理論的予想では、高頻度取引者がショックの為替レートへのインパクトを正しく認識できれば、ショックに対する反応が速く、新しい均衡への到達時間を短縮するはずである。このような理論的予想を検証することが、今後の研究方針となる。
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Remarks |
上記URLは、伊藤隆敏の活動全体のホームページ。本研究課題関連の国際コンファレンスは、http://www3.grips.ac.jp/~t-ito/j_hft.htm
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Research Products
(3 results)