2017 Fiscal Year Annual Research Report
対応困難な保護者とのトラブル事例分析と紛争化の防止及び解決支援に関する学際的研究
Project/Area Number |
17H01021
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野田 正利 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60169349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 正人 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (10218331)
小林 正幸 東京学芸大学, その他部局等, 教授 (70272622)
瀧野 揚三 大阪教育大学, 学校危機メンタルサポートセンター, 教授 (60206919)
楠 凡之 北九州市立大学, 文学部, 教授 (30244776)
松本 剛 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (30330111)
佐藤 晴雄 日本大学, 文理学部, 教授 (00245995)
岩田 康之 東京学芸大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40334461)
岩切 昌宏 大阪教育大学, 学校危機メンタルサポートセンター, 准教授 (50283841)
山野 則子 大阪府立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50342217)
古川 治 甲南大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10425382)
西川 由紀子 京都華頂大学, 現代家政学部現代家政学科, 教授 (60249365)
和井田 節子 共栄大学, 教育学部, 教授 (30510804)
山下 晃一 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (80324987)
入澤 充 国士舘大学, 法学部, 教授 (90307661)
岩永 定 熊本大学, 教育学部, 教授 (90160126)
新井 肇 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (60432580)
園山 大祐 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (80315308)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 学校紛争 / 危機管理 / 保護者対応 / 保護者クレーム / 解決支援チーム / 保護者トラブル / 無理難題要求 / 学校の閉鎖性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.「保護者対応トラブル」が他分野のトラブルや紛争と最も異なるのは、保護者と教職員の関係が悪化したとしても、その子どもはなおもその学校に通い続けるという点にあり、総合科学的な検討を必要とする。「対応困難なケース」は、その現象面に着目すれば基本的に次の3つである。1)話し合いにならず、コミュニケーションがとれないケース、2)違法行為や不当要求に発展してしまうケース、3)表面に現れた対立点の解消が主訴ではなく、紛争状態の根本に保護者自身を取り巻く他の要因や過去の重大体験が隠されているケース、である。 2.研究総会は計3回開催した。5月28日に第1回を開催し、メンバーの楠凡之からの専門的知見の提供、および新任1年目で激しい保護者対応トラブルに遭遇し、年休と病気休暇を取得して(その後、復職)担任を降りざるを得なかった女性教諭を招いての事例検討をおこなった。第2回は10月29日に開催し、数年前に保護者対応トラブルから教職員が恫喝される危機的状況に陥った保育園に対して、研究代表者が継続的なアドバイスをすることで窮地を脱することができた保育園長を招いての事例検討をおこなった。第3回は3月11日に開催し、メンバーである弁護士の三木憲明、精神科医である岩切昌宏からの専門的知見の発表、そしてスクール・ソーシャル・ワーカーが遭遇した難しいケースの検討をおこなった。 3.研究成果の社会還元としては、学校部活動問題は保護者対応トラブルと絡むことが多いことから、第9回の「半公開学習会」を8月6日に、第10回の「半公開学習会」を1月7日に開催した。また尼崎市との共催で「先生が元気になる集いインあまがさき」を3月26日に開催した。 4.学校讃歌ブックレット第19号『難しくなる保護者対応トラブル~こじらせているのは保護者? それとも学校?」(B5版、20頁、2017年12月)を発行し、全国の関係者に頒布している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.研究総会を年3回開催し、研究分担者および研究協力者相互において、研究テーマ遂行に関する認識を一致させることができていること、およびその場で、具体的な「対応が極めて難しい保護者対応トラブル事例」の当事者を招いての、詳細な分析を全員でおこなうことができたことにある。特に、最初の保護者のクレーム・苦情の発出から、学校(教師)側の「見立て」(アセスメント)が不十分で、対応の軸がぶれていくことで、トラブルへと発展し紛争へと悪化するプロセスの典型例を、多方面の知見で分析整理する機会が持てたことは、極めて有効であった。 2.研究分担者および研究協力者は、全国各地の教育委員会や学校から研修講師を依頼され、その実績を積む中で、多様な保護者対応トラブルの相談にあたっている。これらの機会を通して、事案のそれぞれのステージ(段階)ごとで、「何を」「誰(学校外の機関を含めて)とともに」「どのように連携して」対応することで、ステージアップ(悪化)を防ぐことが可能となるのかを考察する機会を得ている。その成果の一部は、研究総会での専門的知見の提供として、臨床教育学を専門とする楠凡之、三木憲明弁護士、児童精神科医の岩切昌宏の発表として結実している。 3.研究組織体として、それぞれの成果を社会的に発信する機会を「半公開学習会」(事前申込み制および顕名での参加)として2回実行したほか、大喜利シンポジウムと各種のワークショップで構成する「先生を元気にする集い」を開催できたことも大きい。 4.あわせて研究代表者が、保護者対応をテーマとした、大阪弁護士会主催シンポジウム「学校と保護者の関係の在り方を考える~子どもの最善の利益を実現するために」(11月18日、大阪弁護士会館)で基調講演をおこなった。これらを通して、研究テーマの遂行にあたって、弁護士との共同をより前進させる契機とすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.すでに2018年度の第1回研究総会を6月24日に大阪大学において開催することを決定しており、第2回を11月に開催する予定である。これらを通して研究会メンバーを分けた「トラブル事象研究班」と「紛争解決システム研究班」の成果を持ち寄ることが可能となる。 2.紛争状態になる事案の一つの典型例に、重篤な学校事故によってわが子を亡くした遺族・保護者と学校の間に生じるトラブルがある。多くの場合、学校側のかたくなな姿勢や「早く忘れたい」という思いが強くなる中で、真実を教えて欲しいという遺族側の意識のズレが、その背景にある。すでに確定しているが、6月24日の研究総会の後には、第11回「半公開学習会」としてのシンポジウム「まずは部活動事故を防ぐこと、起きた場合に学校関係者は何をすべきか~2011年・名古屋市立向陽高校、倉田総嗣くん事故から学ぶもの」を開催する。学校事故の被害者遺族と学校側がともにわかりあえたケースの当事者双方を招いての企画は、全国でも例をみないものと考える。 3.また研究成果の社会への還元に努めるために、研究組織として各種の団体(教育委員会、校長会、研究協議会、組合など)との協力のもとに、全国のいくつかの地点で研究集会を開催する。すでに8月10日には富山市教育センターとの共催企画が決定している。さらに2019年夏には札幌で「日本学校教育相談学会」との共催企画が予定されている。 4.研究代表者および研究分担者・研究協力者のもとには、全国各地から実に多くの「保護者対応トラブル」に関わる相談依頼や、教職員のそれに対する対応能力を高めるための研修講師依頼がある。それは、この研究テーマに社会的意義があり、その成果に期待が寄せられていることの証左である。研究会メンバーが、それぞれの研究拠点で具体的な「対応困難な保護者対応トラブル」の事例相談に乗りながら、より緻密なデータ収集をおこなう。
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Research Products
(49 results)