2017 Fiscal Year Annual Research Report
実環境中ウイルス検出用外力支援近接場照明バイオセンサシステム
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17H01048
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
藤巻 真 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (10392656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島 隆之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (10371048)
藤岡 貴浩 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (20759691)
守口 匡子 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (60298528)
白土 東子 (堀越東子) 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (60356243)
宮沢 孝幸 京都大学, ウイルス研究所, 准教授 (80282705)
久保田 智巳 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ付 (90356923)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バイオセンサ / ウイルス / 免疫アッセイ / 抗体 / DNAプローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究開発の目的は、環境中に存在するウイルスを検知して感染を予防することができるウイルスセンサの開発であり、実環境下で1ウイルス粒子検出が可能なウイルスセンサの実現を目標としている。人に感染するウイルスとしては、ノロウイルスやインフルエンザウイルス、動物ウイルスとしては、ネコモルビリウイルス、ネコパラミクソウイルス、ウシ白血病ウイルスなど、下水処理水などにおいては、植物ウイルスであるトウガラシマイルドモットルウイルスなどを標的としてセンサ開発を行う。最終的な数値目標は、1ウイルス粒子/100マクロリットルの検出、4桁以上のダイナミックレンジの実現、多型の一括検出の実現、DNAプローブによる検出、実環境試料への対応の実証である。 今年度の成果として、ノロウイルスのウイルス様粒子検出において、4桁の検出ダイナミックレンジを達成した。この成果によって、10~10000粒子/100マクロリットルのノロウイルス検出が可能となった。高感度化においては、インフルエンザウイルスを用い、ウイルスタンパク質をターゲットとすることによって、実質的に1粒子/1mLの検出に成功した。この結果は、センサの液セルに注入する検体中にウイルスが1つでも含まれていれば検出できることを示しており、環境中ウイルス検出を実現する大きな一歩となった。 多型一括検出においては、異なる複数の抗体をナノ粒子に修飾する技術を確立し、翌年度における検出試験に向けた準備が完了した。DNAプローブ開発においては、インフルエンザウイルスA型の同定用プライマーとPCR産物の配列をもとに、性能試験用のビオチン化DNAプローブと検出用DNA配列をそれぞれ設計、入手して検出準備を行った。実環境対応としては、トイレから採取した水中にノロウイルスのウイルス様粒子を混入させて検出試験を行い、検出が可能であることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高感度検出を目標にシステムの設計を行い、試作を行った。等倍対物レンズを備えた顕微システムを導入し、レンズ系及びプリズムによる光の屈折を利用した広域均一照射系を実装した。標識用粒子に金ナノ粒子を用いると、局在型表面プラズモン共鳴によって発せられる強い散乱光を光信号として利用可能であることから、金ナノ粒子の局在型表面プラズモン共鳴を効率よく励起可能な530nmのLEDを光源として選定した。また、この波長にて高い電場増強度を得られる多層膜構造を設計し、センサチップを試作した。試作完了後に、ノロウイルスのウイルス様粒子を用いて検出試験を行ったところ、等倍対物レンズでは粒子の視認性が悪く良好な観測画像が得られなかったが、4倍対物レンズを用いることによって良好な検出が可能であることが分かった。この試作機を用い、検出試験に用いるナノ粒子の添加方法や反応時間を最適化することで、4桁のダイナミックレンジを達成した。また、ウイルスタンパク質をターゲットとすることによって、実質的に1粒子/1mLの検出に成功した。ただ、目標としていた、視野拡大による高感度化は、撮像デバイスの素子サイズの制限から、等倍対物レンズによる観測系最適化までは至らなかったことから、引き続き視野拡大による高感度化を目指す。 DNAプローブ開発においては、まず入手が比較的容易なインフルエンザウイルスA型の同定用プライマーとPCR産物の配列をもとに、性能試験用のビオチン化DNAプローブと検出用DNA配列をそれぞれ設計、入手して検出準備を行ったが、検出系の構築までには至らなかった。実環境対応としては、水処理におけるウイルス検出では、トウガラシマイルドモットルウイルスが指標ウイルスとして認知され始めていることから、ノロウイルスに加えてトウガラシマイルドモットルウイルスの検出実験も行い、検出が可能であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
検出システムの高ダイナミックレンジ化においては、既に目標としていた4桁のダイナミックレンジを達成した。しかし、ウイルスの濃度が高い領域では、凝集塊の発生を抑制できず、定量性向上には課題が残っている。抗体付着量またはDNAプローブ付着量を制限したビーズを用いて、定量の高い検出を実証する。高感度化においては、ウイルスタンパク質をターゲットとすることによって、実質的に1粒子/1mLの検出に成功し、目標を1桁上回る感度を達成したが、目標としていた、視野拡大による高感度化は、撮像デバイスの素子サイズの制限から、等倍対物レンズによる観測系最適化までは至らなかった。引き続き視野拡大による高感度化を目指す。今年度の研究から、単に視野面積を広げるだけでなく、ビーズを動かす方向も考慮して視野を設定すると、実質的な視野拡大が可能であるとの着想を得た。このことを利用し、システム全体として、さらなる高感度化に取り組み、現状からさらに2倍の高感度化を目指す。また、ノロウイルスの多型検出用に開発した複数種の抗体を修飾した磁気ビーズ群を用い、遺伝子型に依らず、検出が可能であることを実証する。 DNAプローブ開発においては、性能試験用のビオチン化DNAプローブと検出用DNA配列をそれぞれ設計、入手して検出準備が整ったことから、本モデル系を元に検出系を構築する。また、ネコモルビリウイルスを対象とした、DNAプローブによる検出も実施する。 実環境対応としては、ノロウイルスの実環境下試験では、下水処理水中に、型の異なるVLPを加え、多型の一括検出が可能であることを実証する。また、実際の水処理場において、流入水や処理水を採取し、トウガラシマイルドモットルウイルスの濃度をPCRで確認するとともに、我々が開発したセンサでも検出を行い、性能の比較実験を行う。
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Research Products
(17 results)