2017 Fiscal Year Annual Research Report
Ambient SIMS Technique for Liquid-Solid Interface Analysis
Project/Area Number |
17H01058
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松尾 二郎 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40263123)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬木 利夫 京都大学, 工学研究科, 講師 (00402975)
青木 学聡 京都大学, 学術情報メディアセンター, 准教授 (90402974)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イオン / SIMS / 大気圧分析 / 質量分析 / 固液 / 高速重イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
大気圧下で液体が存在する表面を評価することが可能である高速重イオンを用いる2次イオン質量分析法(MeV-SIMS法)を使い、固体と液体との界面状態の探査的研究を行う。細胞、触媒、電池など様々な分野で固液界面は極めて重要な役割を担っているが、真空を基礎とする表面分析技術では限界があり、固液界面はいまだに十分解明されていない。これまでの分析手法では困難であった固液界面のダイナミクスの解明などを試み、固体と液相との界面で起こる特異な現象の解明を行える革新的な評価技術を実現する 高速重イオンによる“MeV-SIMS法”を用い、液滴が付着した試料からの2次イオンスペクトルを計測すると、2次イオンスペクトルは時間とともに変化する。これは、表面に付着した液体が揮発することによるものであり、最初は液体表面から放出される2次イオンである。液体からの揮発が進み液相の厚みが薄くなると固液界面からの2次イオンスペクトルが観察される。さらに、揮発が進むと液体分子がすべて蒸発し固体からの2次イオンスペクトルのみが計測される。界面吸着層からの2次イオンスペクトルが固液相界面の情報を持っているので、様々な吸着層の2次イオンスペクトルを計測した。 まず最初に最も多くの場所に存在する水分子の吸着層について、SIMS法を用いて計測を行った。液体状態にあるこれらの液相の2次イオン測定は過去に行われておらず全く前例のない計測である。基板に水滴を滴下して形成した1mm程度の厚い水分子層の表面から観測される2次イオンは液体表面からのものであり、水分子の場合には水クラスターが多く観察される。特に、3量体や4量体の強度が強く観測され、1量体や2量体より高いということは、レーザーを使った液体からの質量分析法の結果と類似しており、水分子の構造安定性を強く反映していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
固液界面を評価するためには、透過力の高い高速重イオインを1次イオンとして用いる必要がある。数MeVの高速重イオンの飛程は数mmと十分長いため、大気圧中に引き出すことはそれほど困難ではない。しかし、表面で生成した2次イオンを効率よく質量分析計に引き込むには、様々な工夫が必要になってくる。通常のSIMS法では高電界を印可することにより、静電力で2次イオンを引き込むが、大気圧下では残留ガスとの衝突を繰り返すため、イオンの運動エネルギーが失われ電界に従った軌道を取らない。このため、大気圧下では静電力だけでなく、粘性流の流れを使って2次イオンを引き込むことが必要となる。また、1次イオン、2次イオンとも最終的には高真空と接続する必要があるため、差動排気を用いても、大気圧とのインターフェースを取る部分には100umのピンホールとする必要がある。2次イオンをこの少穴から質量分析装置へ効率的に引き込むためのインターフェイスの開発に成功し、大気圧下での2次イオン測定を成功させた。これにより、水などの高い蒸気圧を持つ液体についても測定可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
大気圧下での測定に必要なインターフェイスの開発に成功し、高い蒸気圧を有する液体でも固液界面の評価が可能となった。今後は、様々な手法で固液界面を形成し、その評価を進める。具体的には、液滴を滴下した表面(2017年度に測定)に加えて、気相から液体分子を表面に吸着させることにより極薄の固液界面を形成する手法を開発する。この場合には、極めて薄い液相が表面に形成されるので、固液界面を直接計測できる可能性がある。これまでの研究で液体表面や固液界面特有の構造は厚くても数層程度であることが明らかになっており、液体分子を吸着により形成することにより数層の液体層を形成し、大気圧SIMSにより評価を行う。
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Research Products
(29 results)
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[Journal Article] Molecular imaging of alkaloids in khat (Catha edulis) leaves with MeV-SIMS2017
Author(s)
Bostjan Jencic, Luka Jeromel, Nina Ogrinc Potocnik, Katarina Vogel-Mikus, Primoz Vavpetic, Zdravko Rupnik, Klemen Bucar, Matjaz Vencelj, Mitja Kelemen, Jiro Matsuo, Masakazu Kusakari, Zdravko Siketic, Muhammad A. Al-Jalali, Abdallah Shaltout, Primoz Pelicon
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Journal Title
NUCLEAR INSTRUMENTS & METHODS IN PHYSICS RESEARCH SECTION B-BEAM INTERACTIONS WITH MATERIALS AND ATOMS
Volume: 404
Pages: 140-145
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] EuBaCo2O5.38の光励起酸素輸送ダイナミクス2018
Author(s)
慶尾 直哉, 羽田 真毅, 西川 亘, 山下 善文, 林 靖彦, 横谷 尚睦, 松尾 二郎, 浅香 透, 鈴木 達也, 恩田 健, 西郷 将生, 阿部 伸行, 有馬 孝尚, 小沢 陽,沖本 洋一, 腰原 伸也
Organizer
The 65th JSAP Autumn Meeting, 2018
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[Presentation] 超高速時間分解電子線回折から見たEuBaCo2O5.38の構造ダイナミクス2017
Author(s)
慶尾 直哉, 村上 寛虎, 羽田 真毅, 西川 亘, 山下 善文, 林 靖彦, 横谷 尚睦, 松尾 二郎, 浅香 透, 鈴木 達也, 阿部 伸行, 有馬 孝尚, 小沢 陽, 沖本 洋一, 腰原 伸也
Organizer
The 78th JSAP Autumn Meeting, 2017
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