2019 Fiscal Year Annual Research Report
下部マントル深さ~1000kmの粘性率異常の原因解明と化学組成の制約
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17H01173
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山崎 大輔 岡山大学, 惑星物質研究所, 准教授 (90346693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 明 岡山大学, 惑星物質研究所, 客員研究員 (10262841)
辻野 典秀 岡山大学, 惑星物質研究所, 助手 (20633093)
芳野 極 岡山大学, 惑星物質研究所, 教授 (30423338)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 変形実験 / 下部マントル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、最近のジオイドの研究で明らかになってきている下部マントル深さ~1000 kmにおける約1桁程度におよぶ粘性率急上昇の原因を物質科学的に解明し、地震波トモグラフィで見て取れるこの深さで滞留している沈み込んだスラブとの関連を明らかにすることである。これにより、沈み込んでいくスラブの挙動に新たな制約を与えることが可能となり、マントル全体のダイナミクスの理解を深めることを発展的な目標としている。 下部マントルは、ブリッジマナイトとフェロペリクレースを主体とする岩石で構成されている。従って、この岩石の粘性率を推定することが研究の根幹となる。しかしながら、ブリッジマナイトとフェリペリースは粘性率が大きく異なっており、前者は後者よりも3桁程度粘性率が高い。それ故、両相の量比ならびに変形により形成されるそれぞれの相の分布や形態などの微細構造が粘性を制御する。そこで、本研究では、両相の量比ならびに変形条件をパラメーターとした粘性率を実験的に明らかにする。 下部マントル条件での粘性率を測定するために、高温高圧変形実験を行ってきている。これらの実験は、本課題研究で導入した新型高圧変形装置によってなされている。この装置を利用することにより今まで困難であった下部マントル岩石の変形実験を行った。また、放射光X線その場観察実験を遂行し、応力-歪み速度の直接測定にも成功し、データの蓄積がなれている。さらに、変形の素過程である拡散現象を理解すべく実験を進めてきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組織発展に関して、ブリッジマナイトとフェリペリースがモル比で1:1の量比の場合には、顕著な粘性低下がみらないということを定量的にX線その場観察実験から明らかにしてきている。また、新たに導入した新型高圧変形装置も順調に稼働しており、下部マントル岩石に対して、X線その場観察実験よりも大きな剪断変形を与える実験に成功しており、さらに広い圧力範囲での実験にも利用されている。一方で、拡散実験に関しては、未だデータを得るには至っていないが、既に実験デザインは完了しており、スムーズに実験を遂行することが可能であると考えている。以上のことを総合的に判断して、おおむね順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
回収した変形試料をさらに出発物質として用いて、組織回復のアニーリング実験を行う。これにより、マントルでの流動に対応するような地質学的時間スケールへ議論を展開していく。また、拡散実験を遂行し、素過程から粘性率へのアプローチを行っていく。最終年度にあたっているため、得られたデータを総合して、マントルのダイナミクス関して考察を深めていく。
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Research Products
(7 results)