2018 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ原子置換ポルフィリンの合成と励起状態制御による機能創出
Project/Area Number |
17H01190
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
忍久保 洋 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50281100)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ポルフィリン / 励起状態 / ヘテロ原子 / 光線力学療法 / 非線形光学応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究において、ポルフィリンの4つのメゾ位の炭素のうち2つを窒素に変換したジアザポルフィリンを還元することによって合成したジアザクロリンおよびジアザバクテリオクロリンが、乳がんの細胞を用いた光線力学療法(PDT)実験において、高いPDT活性を示すことを見いだした。特に、ジアザバクテリオクロリンは800 nmという近赤外光での励起により高い活性を示すことがわかった。そこで、ヒトの乳がんの細胞を移植したゼブラフィッシュの幼生を用いて、個体レベルでのPDT活性を評価した。その結果、760 nmでの光励起により乳がんの細胞の増殖抑制効果を示すことを明らかにした。さらに、これらの分子の励起状態の特性は、励起寿命や過渡吸収スペクトル測定により評価した。その結果、ジアザバクテリオクロリンの一重項酸素発生効率はそれほど高くないことが判明した。したがって、ジアザバクテリオクロリンの高いPDT活性は、従来の光増感による一重項酸素発生とは異なるメカニズムで起こっている可能性があることが明らかになった。 また、ポルフィリン骨格外周部のメゾ位にリンをもつ新規ポルフィリン類縁体の合成に成功していたが、この化合物はの構造および物性について各種スペクトル測定による実験的研究と分子軌道計算による理論的研究を行った。興味深いことに、リン原子上に金を配させると芳香族性が大きく低下し、リンを酸化してリンオキシドとすると反芳香族性へと変化することを見出した。また、リンの酸化に伴って電子状態も大きく変化した。P=O二重結合が強い電子求引基として作用したため、大幅にLUMOエネルギーが低下することが電気化学測定から明らかになった。この結果、化合物の吸収スペクトルは大きく長波長化し、1000 nm以上の近赤外光を吸収できるようになった。このことから、リンを含むポルフィリンは近赤外色素として利用できる可能性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヘテロ原子としてリンを骨格周辺部にもつポルフィリンの合成に世界で初めて成功した。この化合物は芳香族性を持つと予想されていたが、リンを酸化してリンオキシドとすることによって、芳香族性の反転が起こり、反芳香族性になるという興味深い予想外の発見があった。
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Strategy for Future Research Activity |
ポルフィリン骨格へのリンの導入が芳香族性に対して予想以上に大きな効果を持つことがわかったことから、複数のリンを導入し分子の電子物性がどのように変化するかを詳しく調査する。また、複数のリン原子が分子の励起状態の特性に与える影響についても明らかにする。
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Research Products
(39 results)
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[Journal Article] Diazachlorin and diazabacteriochlorin for one- and two-photon photodynamic therapy.2018
Author(s)
Jean Francois Longevial, Yamaji Ayaka, Aggad Dina, Kim Gakhyun, Chia Wen Xi, Nishimura Tsubasa, Miyake Yoshihiro, Clement Sebastien, Oh Juwon, Daurat Morgane, Nguyen Christophe, Kim Dongho, Gary-Bobo Magali, Richeter Sebastien, Shinokubo Hiroshi
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Journal Title
Chemical communications
Volume: 54
Pages: 13829-13832
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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