2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Designable Hybrids Based on POSS Element-Blocks
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17H01220
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中條 善樹 京都大学, 工学研究科, 名誉教授 (70144128)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 一生 京都大学, 工学研究科, 教授 (90435660)
権 正行 京都大学, 工学研究科, 助教 (90776618)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | かご型シルセスキオキサン / ハイブリッド |
Outline of Annual Research Achievements |
設計に従い合成された機能性かご型シルセスキオキサン(POSS)を基盤として「デザイナブルハイブリッド」と呼べる様々な機能性有機-無機複合材料の開発を行うことを目的としている。 当該年度では、主に以下の3つの研究により「デザイナブルハイブリッド」の作製に取り組んだ。 多段階MCL材料の開発では、縮環型ケトイミンホウ素錯体(FBKI)を合成することで、その発光色の力学的刺激応答性を確認した。すると、チオフェン環を修飾したFBKIにおいて、3段階のMCLの発現に成功した。ベンゼン環の導入では2段階の応答であったことから、より小さなチオフェン環の導入による化合物の平面性の向上が、分子間相互作用の鋭敏な応答を可能にしたと考えられる。 POSSと共役系高分子のハイブリッド化を利用した耐熱性白色発光材料の作製では、青色に発光する発光団を集積したPOSSと橙色に発光する共役系高分子をハイブリッド化することで、二重発光性を実現し、混合割合を調整することで白色発光材料の作製に成功した。白色発光はカラーバランスが重要なため耐熱性の発現は困難であるが、POSSの耐熱性とモルフォロジーの保持能力を活かすことで課題を解決することができた。 POSS骨格を用いた好気条件下における発光センサーの開発では、発光部位として運動性に応じて発光強度を変化させるケトイミンホウ素錯体を、ネットワークリンカーとして刺激により可逆的に開裂可能なジスルフィド結合を導入した。その結果、アスコルビン酸ナトリウムの添加により、ネットワーク構造が崩壊することで、発光強度が低下し、また再酸化することでネットワーク構造の修復による発光強度の増強を確認可能なシステムを構築することでできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
POSS骨格を利用した耐熱性メカノクロミック(MCL)材料の創出のためには、まず、MCL性を示す色素の開発が必要不可欠である。一方で、従来色素では2段階の応答が限界であり、外部環境を鋭敏に認識するシステムを構築する必要があった。今回、ベンゼン環をチオフェン環に変更し、分子構造の平面性を向上させるというシンプルな設計により3段階のMCLを達成することができ、これは予想以上の結果であると言える。 耐熱性白色発光材料の作製では、POSSの8頂点に色素を修飾可能な三次元構造を利用することで、修飾された有機色素の性質はそのままに耐熱性を向上させることに成功している。また、三次元構造により、エネルギー移動効率を低減することで共役系高分子との二重発光性を実現している。加えて、POSSは共役系高分子のモルフォロジーを安定化する効果があり、結果として熱を加えても微細構造が変化しないシステムを構築することができた。以上の結果はPOSSの効果を十分に発揮したものであり、「デザイナブルハイブリッド」の有用性を示すことができたと期待している。 当初はPOSSの剛直性を利用した19F MRプローブによる微量生体物質計測を行う予定であったが、当該研究ではジスルフィド結合をネットワークリンカーとした新しい刺激応答性のメカニズムを構築することに成功した。この結果により、POSS骨格と刺激応答性のネットワークリンカーを用いることで、生体反応をモニタリングする指針が整った。19F MRプローブによる微量生体物質計測については、先行研究で確立へ指針を得ているとこもあり、これらのシステムを組み合わせることで、多機能性のPOSS骨格を利用した生体プローブの作製が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究領域で得られたデナイナブルハイブリッドの機能をさらに追及するため、当該年度で得られた成果をもとに、引き続きC,Dの課題に取り組む。 C. 耐熱性メカノクロミックルミネッセンス(MCL)材料の開発 2021年度では引き続き、POSS元素ブロックによる耐熱性MCL材料の開発を行う。剛直なシリカの立方体核上に既知の固体発光性色素を配置することで、色素の熱運動を抑制し相転移温度を上昇させ、色素周辺に確保された空間を利用することで、分子間相互作用形成によるMCLを確認する。MCL色素を利用すると、微小部位や細胞内などの応力を計測できることから有用性が高い。ここでMCL色素による応力検出において、実用では摩擦熱も発生し、それらが発光色変化を損ねることから、熱に耐性を有する材料が必要とされている。 D. 剛直性を利用した19F MRプローブによる微量生体物質計測 2021年度では引き続き、常磁性金属錯体を連結した水溶性高フッ素化POSSをプローブとし、POSS近傍での会合・運動抑制による磁性緩和効果が19F NMR信号を大幅に低下させることを確認する。具体的には、水溶性高フッ素化POSSに常磁性金属錯体を連結したプローブ分子の合成を行い、会合を促進する標的分子との混合を行う。実際に測定を行い、感度・生体親和性・水中での安定性など、情報をフィードバックして最適化を検討する。フッ素化化合物をプローブとして19F NMRを用いた生体分子の計測は、高いS/N比から、生体反応や環境変化、さらにそれらの定量的な計測に有用である。一方、検出感度の低さから、微量の物質の計測は困難である。本研究では、POSSを基盤とした19F MRプローブを設計し、触媒活性の無い生理活性分子の微量検出を目指す。
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Research Products
(5 results)