2018 Fiscal Year Annual Research Report
Chemical ecology of sexual isolation and reproductive interference in pulmonates
Project/Area Number |
17H01448
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
浅見 崇比呂 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (10222598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 仁 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (10291957)
蟻川 謙太郎 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 教授 (20167232)
朴 虎東 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (20262686)
渡辺 信子 神奈川大学, 理学部, 助教 (40291744)
伊集院 久子 神奈川大学, 付置研究所, 研究員 (60398948)
國頭 恭 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (90304659)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 有肺類 |
Outline of Annual Research Achievements |
陸棲の軟体動物では、性的隔離・繁殖干渉の研究が世界的に手つかずの状態にある。原因は、一般に人工繁殖が難しく、多くは世代時間が数年におよぶため、繁殖行動・交雑の人為操作・統計解析が難しいことにある。このため性成熟を制御した操作実験・生物検定(バイオアッセイ)が困難をきわめ、性フェロモンの化学特性・生態機能に関する知見が皆無である。研究代表者は、コハクオナジマイマイ(以下コハク)とオナジマイマイ(以下オナジ)の世代時間を3ヶ月に短縮し、生態・行動・生活史形質の遺伝解析が可能なモデル系を実用化した。これまでの研究により、近縁な本2種には、交尾前の識別、及び交尾中の識別による性的隔離が不完全ながら進化していることを発見した。本2種が交雑すると、コハクは雌としてのみ、オナジは雄としてのみ繁殖する。本研究の目的は、本2種の性的隔離と繁殖干渉のメカニズムを解明することにある。同種個体と他種個体を識別し、選択的に同種個体に対して求愛・交尾を行うことがこれまでの配偶者選択実験から明らかである。この配偶者選択すなわち本2種間の性的隔離が揮発性の分泌物質に依存することを突き止めるには、オルファクトメーターによる選択行動の検証が不可欠である。このバイオアッセイ及び揮発性分泌物質の化学分析を遂行するために、オナジマイマイとコハクオナジマイマイのそれぞれにつき、個体別に成熟させ、必要個体数を常時供給可能にする人工繁殖を研究期間を通して継続する実験条件の改良を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本2種は夜行性であるため、長日条件(明期16、暗期8時間)の暗期に、赤外線を投影、微速度ビデオ撮影し、未交尾の成熟個体(被験者)の進行方向を個体ごとに記録する手法を開発した。本2種間の雑種F1、F2世代は、どちらの親種とも同等もしくは比較的優れた成長・繁殖力をもつことを検証した。同種他個体及び他種の誘引力(性フェロモン産生能)と性フェロモン感受能について、バイオアッセイによる行動実験に加え、ガスクロマトグラフ質量分析により分泌物質の量的比較が可能であることを示す証拠を得た。ガスクロマトグラフ質量分析には、揮発性分泌物をSPME法による揮発ガスを採取することにより実施し、比較実験および再現性の統計解析により最適の採取方法を決定した。オルファクトメータに用いるガラス管の形状を改善するために、ガラス管を分岐させる角度を量的に変更し、実用可能な形状を判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
コハクオナジマイマイ及びオナジマイマイを交雑するには、異種間の交尾を必要に応じて短期間に実現可能な条件を決定し、同時雌雄同体が同時に雌雄二役を行う交尾様式における交雑を実現しなくてはならない。これまでに、雑種個体は、コハクオナジマイマイからしか得られず、オナジマイマイからは得られない。これは、コハクオナジマイマイは雑種形成において雌親としてのみ繁殖成功が可能であり、オナジマイマイは雄親としてのみ可能であることを意味する。この交雑により得られる本2種間の雑種F1と、雑種F1個体どうしの交配による雑種F2世代が他個体(雑種個体、親種他個体、親種以外の近縁他種個体)を誘引する性フェロモン産生能と性フェロモン感受能については未だ不明の点が多い。これまでに開発したバイオアッセイ法の活用・改善により、1個体を被験者として行うバイオアッセイを同時に平行して実施する実験システムを開発する。
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