2017 Fiscal Year Annual Research Report
地球陸域表層で土壌有機物が分解を逃れ蓄積していくメカニズムの探索
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17H01496
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
森 也寸志 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (80252899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 信博 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (30183271)
松本 真悟 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (00346371)
大澤 和敏 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (30376941)
辻本 久美子 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (80557702)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 土壌劣化 / マクロポア / 浸透現象 / 炭素固定 / 植生回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌有機物の増加は土壌の団粒構造を発達化させ,土壌の透水性・保水性の増加が期待される.一方,有機物の増加は微生物活性を高め,土壌間隙に微生物のコロニーやバイオフィルムの形成を促し,土壌の透水性が低下する.この相反する現象に対して,本研究では団粒形成を促進するグルコースの土壌への添加が微生物活性,飽和・不飽和透水係数および保水性に及ぼす影響を定量的に評価することを目的として実験を行った.まず,有機物添加に伴う飽和透水係数と微生物活性の変化を調べるために,シルトローム質土壌にグルコース溶液を滴下し25℃で培養した.次いで,簡易蒸発法とサイクロメーター法を使って有機物添加に伴う土壌水分特性の変化を調べた.また,乾燥に伴うFDA加水分解活性を測定した.結果的に,飽和透水実験から,グルコースの添加に伴って微生物活性が増加し,それに伴って透水性が減少する傾向が培養初期に見られたが,飽和領域における微生物活性の透水係数に及ぼす影響は小さかった.水分特性曲線・不飽和透水係数の測定・予測の結果から,添加土壌において物理的土壌ミクロ間隙の形成に伴い保水性が高まり,結果として不飽和透水係数の減少が観察された.以上より,微生物による物理的な土壌構造の変化は,不飽和領域の透水性を低下させると考えられる. 併せて根圏土壌について以下が明らかになった.イネ栽培後ではダイズ,ナタネに比べてケイ酸の溶出量が多く,アルミニウムの蓄積量が多いとわかった.根圏のpHも低く,アルミニウムの蓄積と関連していると推察された.イネの根圏においては根の作用により鉱物の崩壊が促進されていると考えられ,X線回折装置で鉱物の構造解析を行うと,長石の崩壊の痕跡が認められた.土壌中のアルミニウムは有機物の蓄積と関係が深く,作物間でこの蓄積に差異があるということは,栽培跡地での有機物の蓄積に作物間差があることの因子と推察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機物の蓄積と透水特性についての関係が実験室レベルと圃場レベルで明らかになりつつあり,多数の学会発表が行えたから.
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Strategy for Future Research Activity |
ミクロレベルにおける土壌有機物の生成と消失に併せて,土壌透水・保水特性の関係が明らかになりつつあるので,H30年度は予定通り,メソスケールすなわち圃場における土壌の保全にかかわる調査研究を行う.
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Research Products
(11 results)