2018 Fiscal Year Annual Research Report
The significant role of the kidney as a central organ for metabolic organ interrelationship
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17H01562
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊藤 裕 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (40252457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 一宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30424162)
脇野 修 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (50265823)
徳山 博文 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50276250)
神田 武志 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80317114)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 臓器連関 / 筋萎縮 / インスリン抵抗性 / 腸内細菌 / NAD代謝 / 腎線維化 / 心腎連関 / NNMT |
Outline of Annual Research Achievements |
腎臓を中心とした臓器連関について研究を進めている。腸腎連関について腸内細菌由来の短鎖脂肪酸の受容体GPR41の機能解析を行ってきたが、そのリガンドの一つであるケトン体の腎保護作用について検討を加えた。ケトン体は虚血再灌流モデルの急性腎障害モデルにおいて腎臓においてpyroptosisを抑制する機序で腎障害を抑制することを明らかにした。腎臓―脂肪組織―肝臓連関については、腎不全に伴うエネルギー代謝異常である腎性インスリン抵抗性症候群の発症機序における腸内細菌群の意義について検討した。無菌マウスのシステムを用い、腎不全における腸内細菌の偏奇が直接インスリン抵抗性および筋委縮を引き起こすことを明らかとした。また腎臓自体のエネルギー代謝異常に関する検討ではNAD代謝異常についてさらに検討を加えた。NAD代謝のsalvage経路における律速酵素であるiNAMPTの腎臓における意義を検討したところ、iNAPTの近位尿細管における欠損が腎臓の尿細管を中心とした線維化を引き起こすことを明らかにした。この機序は炎症や組織障害を伴わない線維化であり代謝原性腎線維化と考えている。心腎連関については腎臓における代謝変容が心血管臓器にどのような影響を与えるかという意味でNAD代謝産物のNMNやNMNの代謝酵素NNMTの心血管臓器における意義を検証しており、現在NNMTの代謝産物であるメチルニコチナミド、2-Py、4-PYの血中レベルが腎不全で上昇していることが明らかとなった。今後この変化が全身組織の線維化にかかわってくるか検証する予定となっている。NAD代謝異常および腸内細菌叢の偏奇を中心とした慢性腎臓病進行や全身合併症の発症メカニズムについて学会等で発信している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の研究の進捗は良好と思われる。すなわち、ケトン体の腎保護効果およびNAD代謝異常を中心とする代謝原性腎線維化現象については2019年医に論文発表して一定の成果を得ている。今後は腎NAD代謝におけるNNMTの発現異常についてとその代謝産物である2-Py、4-Pyの腎不全における意義について検討を継続している。NNMT遺伝子欠損マウスの表現型を検証しており、糖尿病や腎線維化モデルにおいて線維化抑制効果を示していることを明らかにしている。また腎不全におけるインスリン抵抗性症候群については無菌マウスのシステムが良好に作動しており、腎不全における腸内細菌の異常の詳細とそれに伴う新規尿毒素の同定が可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
腎臓自体のエネルギー代謝異常に関する研究はNAD代謝を中心に今後されに研究を継続する。NNMT遺伝子欠損の表現型を明らかにするとともに、NNMT活性亢進による心血管臓器の線維化の変化を動脈硬化発症マウスや高脂肪食誘導肥満マウスを用い検証する。その際のNAD代謝産物の血中レベルの変化を捉え、新たな腎不全により生じる臓器障害のメヂィエーター、レノカインを明らかにしたい。これは腎臓の排泄能の障害で蓄積した尿毒素とは異なった概念であり、腎臓の代謝異常から腎臓から分泌される因子であり新たな臓器傷害因子として考えられる。また腸内細菌の偏奇によって生じた腸内細菌由来の物質として我々は馬尿酸、フェニル硫酸を同定している。これらも蓄積によって血中濃度が上昇したものではなく、腎不全の腸管から生じる組織障害性物質である。これらの物質を同定することが腎臓の代謝異常をシグナルとした臓器連関を解明する大きな目標と考える。またこの腎NAD代謝異常の是正の治療法についてついて現在検討中である。すなわちNAD代謝の中間代謝物質で、iNAMPの生成物であるNMNの投与およびNNMT阻害物質の投与が腎障害進行抑制に働くか否かを現在検証中で、これを臨床応用し、腎臓に直接作用する腎不全治療薬の開発が可能になると考えられる。
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Research Products
(8 results)