2019 Fiscal Year Annual Research Report
デスモイド型線維腫症の病態に基づく診断、新規治療開発への学際的・国際的共同研究
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17H01585
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西田 佳弘 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院教授 (50332698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
莚田 泰誠 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (40392146)
新井 英介 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (40612841) [Withdrawn]
酒井 智久 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (40821971)
青木 正博 愛知県がんセンター(研究所), がん病態生理学分野, 分野長 (60362464)
松田 浩一 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90401257)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | デスモイド / CTNNB1 / whole exome sequencing / ゲノムワイド関連解析 / 診療ガイドライン / drug repositioning |
Outline of Annual Research Achievements |
(i) Apc1638N変異マウスにおいてデスモイド様腫瘍組織が発生することを確認した。次にdrug repositioning法で特定した薬剤Xを本マウスに投与して、デスモイド様組織の発症を抑制していることを明らかにした。Meflin特異的CTNNB1exon3欠損マウスを作成し、皮下にデスモイド様組織が発生することを見いだした。(ii)Pdgf-CreとCTNNB1exon3欠損マウスをかけあわせると皮下に線維芽細胞様腫瘍が発生することを見いだした。(iii)64例のデスモイドに対してwhole exome sequencingとRNA sequencingを実施し、従来から報告されているCTNNB1変異に加えてchr6コピー数の喪失が、デスモイド腫瘍形成の原因変異である可能性を示した。また、デスモイドに対する術後成績に関して、3つの遺伝子セット(IFI6、LGMN、およびCKLF)の発現が強力な予後マーカーとなることを見いだした。(iv)ゲノムワイド関連解析については24例を追加して合計98例の解析を実施した。有望な遺伝子Yについてはカットオフ以下となった。(v)drug repositioningによって特定された薬剤Xについてはモデルマウスによってデスモイド発症抑制を確認した。この結果に基づき、PMDAの事前相談、対面助言を実施した。(vi)NIHで作成されたデスモイド患者報告型のQOL評価の和訳版を完成させた。(vii)腹腔外発生デスモイド型線維腫症の診療ガイドラインを完成させて発刊した(2019年9月)。市民公開講座を2019年7月に開催して、ガイドラインや海外での臨床試験の情報を患者・家族に対して発信した。国際的デスモイド研究組織であるDTRFに参加して情報共有を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腹腔外発生デスモイドの診療ガイドラインを完成させ、発刊することができた。デスモイド患者のQOLを評価するNIHの作成したシステムを和訳することができ、今後国際的共通スケールによって評価、比較することが可能となった。デスモイドの発症原因であるCTNNB1のエクソン3の変異遺伝子をmeflinやpdgf特異的に発現させることでデスモイド様腫瘍が発生することを見いだした。多施設共同研究により集積された64例のデスモイに対してwhole exome sequencingとRNA sequencing解析を実施することで、CTNNB1変異以外には明らかな病因遺伝子がないこと、手術成績に関連する3種の有意な遺伝子セットを明らかにした。 Drug repositioning法により特定された薬剤Xのデスモイド発症抑制効果が明らかとなり、今後医師主導治験を開始する基盤データとなった。以上より本研究はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
腹腔外発生デスモイドに対する診療ガイドラインについては、策定しても遵守されるかは不明であるため、今後診療専門施設に対して、診断治療のアンケート調査を実施し、ガイドラインに準じた診療を実施しているかについて調査する。またガイドライン作成過程で各クリニカルクエスチョンに対して実施したシステマティックレビューを各々英語論文化する予定である。Drug repositioning法によって同定された薬剤Xについては、デスモイドを抑制するメカニズムを解析することを予定している。また、薬剤Xの臨床試験に向けてのPMDAとの対面助言の結果に基づいて、医師主導治験用のプロトコール作成を行うとともに臨床試験実施の向けての研究助成金の取得をめざす。whole exome sequencingとRNA sequencing解析を実施することで、CTNNB1変異以外には明らかな病因遺伝子がないこと、手術成績に関連する3種の有意な遺伝子セットを明らかにした成果を論文発表する。ゲノムワイド関連解析について合計98例の解析結果について、臨床情報つけて有望な遺伝子Yについて再解析を実施する。NIHの作成したデスモイド患者のQOL評価和訳版を使用して、日本のデスモイド患者に対する各種治療に関するQOL評価を実施する予定である。Pdgf-CreとCTNNB1exon3欠損マウスをかけあわせたマウスに対してkrasやp53欠損を掛け合わせた場合の発生腫瘍について解析予定としている。Meflin特異的CTNNB1exon3欠損マウスの皮下に発生するデスモイド様組織の再現性の評価および炎症下での発生について追加して評価を行う。
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