2018 Fiscal Year Annual Research Report
A Study to elucidate corruption paradox in contemporary China
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17H01638
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
菱田 雅晴 法政大学, 法学部, 教授 (00199001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
毛里 和子 早稲田大学, 政治経済学術院, 名誉教授 (40200323)
天児 慧 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 名誉教授 (70150555)
高原 明生 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 教授 (80240993)
唐 亮 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (10257743)
趙 宏偉 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (40265773)
朱 建栄 東洋学園大学, 東洋学園大学グローバル・コミュニケーション学部, 教授 (30248950)
大島 一二 桃山学院大学, 経済学部, 教授 (40194138)
厳 善平 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (00248056)
Wank David 上智大学, 国際教養学部, 教授 (60245793)
諏訪 一幸 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (50374632)
南 裕子 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (40377057)
鈴木 隆 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (50446605)
中岡 まり 常磐大学, 総合政策学部, 准教授 (80364488)
岡田 実 拓殖大学, 国際学部, 教授 (90738709)
福田 円 法政大学, 法学部, 教授 (10549497)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中国 / 腐敗 / 反腐敗 / 廉政 / 中国共産党 / 特権 / コネ / 関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国腐敗現象のパラドキシカルな情況を対象として、刺激・行為間の誘引/制約に関するインセンティブ・システムおよび市場体制・行政機構の未発現情況に焦点をあてた制度論からアプローチする実態論分析と、腐敗学構築のための一般分析ツール開発とその検証・適用の二者から構成される。このため、研究計画初年度に引き続き、研究分担者、研究協力者等を糾合した廉政研究会を集団討議の場として設定し、各分担者の個別研究との統合を図ることとし、「戦後台湾における政治と腐敗」(松本充豊・京都女子大学教授)、「カザフスタンにおける日常的腐敗:社会主義後のカネとコネ」(岡奈津子・アジア経済研究所ガバナンス研究グループ長)、「日本のODA腐敗史から見る“一帯一路:廉潔之路”」(岡田実・拓殖大学国際学部教授)、「最近の政治小説から見る腐敗の構造ー『人民的名義』と『2号首長』を中心に」(李彦銘・東京大学准教授)の研究報告をテーマとする廉政研究会、合同ワークショップ等を開催した。研究課題として、1) 中国的腐敗現象の特質と構図、2) 非中国圏各国・地域における腐敗現象の特質、3) 腐敗研究の方法的課題を設定したが、1) では、CGSS(中国総合社会調査)データ等から成人教育分野における不正可能性の剔出、文学作品(政治小説、TVドラマ等)に描出された県級幹部の特権行使の構造を検討し、2)では台湾、カザフスタン、ロシア、韓国等の腐敗汚職事件との異同剔出に努め、3) の腐敗研究方法論の検討に繋げた。 こうした検討作業から浮上するのは、当初仮説的に設定した中央権力からの歪んだ権力分配構造から派生する行政機関における機能不全情況であり、その“真空”情況を貨幣化することでいわば「腐敗の市場化」を行うのが市場諸力であった。加えて、これに正統性を賦与するものこそ、将来的なリターン期待を含んだギフト文化の伝統的習俗であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画第二年度における作業課題を、前項記載の通り、1) 中国的腐敗現象の特質と構図、2) 非中国圏各国・地域における腐敗現象の特質、3) 腐敗研究の方法的課題に設定した。この課題に沿って、本学中国基層政治研究所内に「廉政研究会」を設置し、個人研究の成果と併せての集団討議の場とした。具体的には、計8回の廉政研究会を開催、6月2日「戦後台湾における政治と腐敗」(松本充豊・京都女子大学教授)、8月11日「カザフスタンにおける日常的腐敗:社会主義後のカネとコネ」(岡奈津子・アジア経済研究所ガバナンス研究グループ長)、10月13日「日本のODA腐敗史から見る“一帯一路:廉潔之路”」(岡田実・拓殖大学国際学部教授)、12月8日「中国とロシアー新たな和解」(アレクサンドル・ルーキン・ロシア高等経済院国際関係学部長)、2019年2月8日「最近の政治小説から見る腐敗の構造ー『人民的名義』と『2号首長』を中心に」(李彦銘・東京大学准教授)等の研究報告を受け、台湾、カザフスタン、ロシア、中東欧諸国等多地域あるいはプレ改革期中国、日本のODA 経験等時間、空間をクロスさせ、多方面からの腐敗現象の根源、背景の検討を行った。併せて、中国的腐敗の具体的個別事案の事例蒐集を進めると同時に政治社会学的手法に基づく腐敗関知度/寛容度に関する広範なアンケート調査実施を目標とした準備作業を進めた。これらの作業を通じ、腐敗現象そのものをどのように把捉すべきか、腐敗研究の原点を再確認した。当初設定の作業課題に概ね沿って順調に進展しており、反腐敗機構研究の対象を拡大することで一層の進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、非中国圏の各国・地域における腐敗現象および反腐敗機構の構造・機能の検討を更に拡大すると共に本研究計画の枢要部分をなす腐敗問巻(=アンケート)調査の実施に向けての準備を進める。計画研究第3年度は、韓国およびシンガポール等に視野を拡げる。韓国については、権力産出の原点としての公職選挙に関するさまざまな不正現象(選挙不正)を俎上に載せるほか、第2年度で目指したシンガポール国立大学東アジア研究所(鄭永年・所長)との協働の下、シンガポール汚職調査局(CPIB:Corrupt Practices Investigation Bureau)との交流を深化させる。他方、問巻班の活動を進展させ、中国社会裡に存在する腐敗行動イメージの剔抉に注力すべく、引き続き中国側カウンターパートとの合作強化に務めることにする。というのも、腐敗汚職という政治的にも“敏感(sensitive)”とされる本研究計画のテーマゆえに、腐敗の直接経験といった直截の設問は事実上困難であるところから、現代中国社会裡に沈潜している腐敗認知度/寛容度に主たる焦点をあてた腐敗に関する意識と行動(腐敗現象の存在に関する感知度および腐敗行為に対する寛容度)が唯一の「覗き窓」たることが期待されるからである。当今の中国の政治情勢からは、一定の困難も予想されるが、これまでの共同研究実施によって蓄積された研究ネットワークを通じ、中国側研究カウンターパートとの協力関係を構築することに努めたい。
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Research Products
(21 results)