2018 Fiscal Year Annual Research Report
Ecological evaluation of river restoration projects below dams by combination management of flow and sediment regimes
Project/Area Number |
17H01666
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
角 哲也 京都大学, 防災研究所, 教授 (40311732)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹門 康弘 京都大学, 防災研究所, 准教授 (50222104)
渡辺 幸三 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (80634435)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | フラッシュ放流 / 土砂還元 / トリニティ川 / カリフォルニア / サケ / 産卵床 / 自然再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度にトリニティ川で調査した「河川管理(流況・土砂供給)」,「生息場構造」「生物多様性 」「水質浄化機能」の4要素間の関係を分析するとともに、天竜川と木津川を中心とした国内河川で同様の調査を行って比較分析を行った。平成30年度は、平成29年度に実施した、課題1の河川管理の違いが生息場構造や河床状態に及ぼす影響の解明、および、課題2の河川管理の結果形成された生息場構造が生物多様性(魚類・底生動物)に及ぼす影響に加えて、課題3の砂州フィルタリングによる水質浄化機能に及ぼす影響について取り組んだ。 課題1に関しては,ルイストンダム下流区間ならびに天竜川船明ダム下流区間の調査結果をもとに,面積比,頻度比,生息場多様度等の生息場構造指標を評価し,「流量変動や土砂供給量が中程度の状況下で生息場構造の多様性や河床間隙が最も高まる」という仮説を検証した。 課題2では,生息場ごとに底生動物と魚類の種多様性,種構成,個体数,エネルギー寄与率等の生態学的指標を評価するために ,課題1で明らかにされた生息場構造指標,砂州形状特性値や河床材料に関するデータとの定量関係を回帰分析で導き,流況や 土砂管理による生息場の改善が生態学的指標の変化に繋がっているのかを定量的に検証した。 課題3では,生息場構造の水質浄化機能を評価するために, 平成29年度に行った調査結果をもとに,濁度,懸濁成分量(SS, 強熱減量),粒状有機物の安定同位体比,溶存酸素や栄養塩等の水質項目について,砂州内流下方向の変化を評価するとともに ,河床内に生息する微生物群集の種組成について,次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析で種を同定した。そして,砂州リフレッシュによる微生物群集組成の更新と共に,生物学的な水質浄化機能の改善に繋がっている分類群等を特定し,砂州形状や河床間隙率の違いが水質浄化機能に及ぼす影響を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本側の京都大学および愛媛大学のチームによる事前調整会議を5-7月に複数回開催して、平成29年度の調査結果の共有と平成30年度の研究計画の明確化を図った。 その上で、8月に東京で開催された第12回Eco-Hydraulics 国際会議においてSpecial Session「ISE2018 Session SS27: Integrated Sediment and Flow Management for River Ecosystem Restoration under the Impact of Dam Construction」を企画し、米国よりKondolf G Mathias(UC Berkeley)およびDavid Gaeuman(TRRP)を招聘して論文発表を行うとともに、日本側チームから合計7件の研究成果報告を行った。また、この国際会議に先立って、京都大学防災研究所において、2nd WRRC Seminar ~Integrated Sediment and Flow Management for Nature Restoration in Dam Tailwater Rivers~を開催し、本研究の現在の進展と今後の研究の進め方について意見交換を行った。さらに、京都から東京への移動機会を利用して、天竜川において共同で現地調査を実施し、日本側チームで進めている砂州地形の評価と置き土による水質浄化機能の改善手法について情報提供を行うとともに、意見交換を行った。 これらの一連の交流活動は、これまでに得られた研究成果とさらなる課題の共有化に大きく役立っており、第12回Eco-Hydraulics 国際会議を始めとする国内外のジャーナルや国際会議での論文発表の促進につながっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、平成29年度に米国カリフォルニア州のトリニティ川で調査した「河川管理(流況・土砂供給)」,「生息場構造」「生物多様性」「水質浄化機 能」の4要素間の関係を分析するとともに、天竜川と木津川を中心とした国内河川で同様の調査を行い比較分析を進めている。研究は4つの個別課題から構成されており、課題1は河川管理の違いが生息場構造や河床状態に及ぼす影響の解明、課題2と課題3では,河川管理の結果形成された生息場 構造が生物多様性(魚類・底生動物)および砂州フィルタリングによる水質浄化機能に及ぼす影響をそれぞれ明らかにしている。課題4は,上記研究成果を統合し,トリニティ川,天竜川および木津川をモデルとした最適な河川管理手法を提案するものである。 このうち、令和1年度は,平成30年度に 実施した課題3を継続するとともに,最終年度として課題4に取り組む。 課題3では,生息場構造の水質浄化機能を評価するために, 平成29年度に行った調査結果をもとに,濁度,懸濁成分量(SS,強熱減量),粒状有機物の安定同位体比,溶存酸素や栄養塩等の水質項目について,砂州内流下方向の変化を評価するとともに,河床内に生息する微生物群集の種組成について,次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析で種を同定している。そして,砂州リフレッシュによる微生物群集組成の更新と共に,生物学的な水質浄化機能の改善に繋がっている分類群等を特定し,砂州形状や河床間隙率の違いが水質浄化機能に及ぼす影響を明らかにしてきている。そこで平成31年度はこれら成果をとりまとめて論文化を行うとともに、課題4として,上記課題1から3までの研究成果を集約し,トリニティ川,天竜川および木津川をモデルとして,ダム下流河川の生物多様性と水質浄化機能を再生させるために必要な生息場や河床を維持・創出する河川管理手法を提案する。
|
Research Products
(55 results)