2019 Fiscal Year Annual Research Report
Theory of asymptotic analysis in statistics
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17H01702
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 朋広 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (90210707)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 漸近展開 / フラクショナルブラウン運動 / 確率微分方程式 / Euler-Maruyama近似 / 擬似尤度解析 / ジャンプ / 退化拡散過程 / Wiener汎関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
エルゴード的な状況での一般Wiener汎関数の分布の任意次の漸近展開が得られることを、C. A. Tudor氏との共同研究で見出している。この応用として、混合型フラクショナルブラウン運動の2次変動の分布の漸近展開を導出した。ハースト係数Hの値によって展開の形が変化し、漸近展開は複雑なものになる。 確率微分方程式の解のEuler-Maruyama近似に対する分布論的漸近展開を、マルチンゲールの漸近展開法(Yoshida 2013)によって与えた。ランダムシンボルを特定し、汎関数のMalliavin共分散の漸近非退化性を示し、漸近展開式の解析的正当性を証明した。非エルゴード統計であり、混合正規型の漸近展開である。 離散時間観測されたジャンプ拡散過程の拡散パラメータの推定問題においてはジャンプを的確に除去することが必須である。従来の閾値法は、理論上有効性が証明されているが、チューニングパラメータに結果が大きく依存し、実際の安定性および精度は長年問題となっていた。グローバルジャンプフィルタを導入し、この問題を解決した。グローバルジャンプフィルタは、確率過程の各増分のジャンプの判定に全ての増分を利用する。フィルタは適合的でなくなり、マルチンゲール理論と相性が悪いが、推定量の漸近挙動を解明した。擬似尤度解析(Yoshida, 2011)を構成し、ベイズ型推定量の漸近挙動も示した。 退化拡散過程は生命科学等の多くの応用に現れる。非退化拡散過程の統計推測理論は高度に発達しているが、退化拡散過程のそれは未発達である。エルゴード的退化拡散過程に対して、パラメータの適合型推定量を構成し、その漸近正規性を証明した。退化成分のドリフト推定量は非退化成分の拡散係数の推定量よりも収束は速く、また、非退化成分の推定量の最適分散が退化成分の観測の情報によって小さくでき、漸近効率が上がることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
漸近展開の方法は、エルゴード系において統計理論の基礎であるが、非エルゴード系に対しては、数学的基礎が発展途上である。その確立によって理論統計の発展に資することが本研究の課題であったが、マルチンゲール展開理論のEuler-Maruyama近似への応用、Skorohod積分の漸近展開とその応用という進展があった。また、進行中の一般Wiener汎関数の任意次の漸近展開の理論によって、混合型フラクショナルブラウン運動の2次変動の漸近展開を得るなど、研究は順調に進んでいる。さらに、グローバルジャンプフィルタの導入や、退化拡散過程の推定における新たな結果は、確率過程の統計学における本質的な進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
退化拡散過程の非適合型の推定量の構成と漸近挙動の解明、擬似尤度解析の構築によるベイズ推定量の漸近挙動の解明は課題である。一般Wiener汎関数の漸近展開理論の深化、グローバルジャンプフィルタの積分ボラティリティへの応用など、本課題の成果を基礎に接近が可能な課題が数多くある。これらは必ずしも当初予定されていたものではないが、いずれも重要な問題で、期間内にいくつかで進展が期待される。コロナ禍によって国際研究集会開催や国際共同研究が予定通り進まなかったが、延長期間中に状況が改善することを望んでいる。
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