2018 Fiscal Year Annual Research Report
レジリエントな自己組織化・自己修復ネットワークの設計・拡張と資源配分
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17H01729
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
林 幸雄 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (70293397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 敦 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (30236567)
松久保 潤 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 准教授 (90413872)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ネットワーク科学 / 自己組織化 / 自己修復 / 頑健性 / ループ(サイクル)形成 / 玉葱状構造 / カスケード(連鎖的過負荷)故障 / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
現状の場当たり的な対策や単なる復元から脱却して根本的なネットワークの設計原理を改め、レジリエントな(しなやかな復活力を持つ)自己修復やシステム拡張を促す自律分散・自己組織化の本質的なメカニズムをネットワーク科学の観点から解明する。情報伝搬の要となるインフルエンサーへの攻撃が長いループを重点的に破壊することを逆手に取った、ネットワークの自己組織化や自己修復による適応選択的な頑健性の強化法を導き、最悪ケースの攻撃に対する(互いに通信可能な)連結成分の大きさを数値的に調べ、以下を確かめた。
・昨年度に提案した逐次成長によって自己組織化される、正の次数相関を持つ玉葱状ネットワークが(現実の多くのネットワークを凌駕して)悪意のある攻撃等に対しても強固な頑健性を持つことは、(NP困難な組合せ問題であるが)ループ形成の要となるフィードバック頂点集合のサイズ自体を大きくすることに本質的に関連することを、いくつかの数値実験から裏付けた(国内研究会2件)。また、その次数相関の時間発展を近似する反復式を導出した(国際会議1件)。
・自己組織化による結合耐性の強化のみならず、送受信フロー制御によるレジリエンス機能として、各ノードの転送許容量に応じた適応的ルーティングによってカスケード故障の伝搬を抑えられること、及び、現実のネットワークと比較して上記の玉葱状ネットワークはより抑制効果があることを明らかにした(国際学術雑誌1件、国際会議1件)。 また、カスケード故障に関する複雑ネットワーク研究のサーベイ論文を国内に紹介することで、本手法の位置付けにも役立てた(学術雑誌翻訳1件)。さらに、許容量にほとんど余裕がない厳しい場合ですら、ルーティングの探索順序を制御すれば過負荷故障の伝搬を抑えられることを見出した(国内研究会1件)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、長いループの形成に着目した新たな自己組織化設計として(現実のネットワークと比べて通信効率を損なうことなく悪意な攻撃にも強い)頑健なネットワークの逐次成長法、及び、分散処理に適したその範囲限定版の有効性と、現状において最適耐性を持つ玉葱状構造が創発できることをまず明らかにした。今年度は、ノード間のつながりに関する結合耐性のみならず、情報フローによる負荷も考慮した際に深刻な事態を起こし得るカスケード故障を抑制できる(過剰圧力をバイパス的に逃がして衝撃吸収するのに似た)迂回路によるルーティング法を考案して、レジリエンス機能の実現まで拡張できた。特に、上記の玉葱状ネットワークが、インターネットなどの現実の多くのネットワークと比較して、カスケード故障の抑制により効果的であることも見出すことができた。 さらに、より本質的なメカニズムの解明に向けて、頑健性の強化は(NP困難な組合せ問題ではあるが)ループ形成の要となるフィードバック頂点集合のサイズ自体を大きくすることに密接に関わる見通しを得て、当初の計画以上に進捗できたと言える。
一方、自己修復の課題部分については、近年対象とすべきネットワークの大規模化に伴いメモリ追加など設備増強を必要に応じて施したものの、予備的な数値実験に想定以上の時間を要し、また新たに見つかった既存手法の追試にも手間取るなど、初年度に洗い出した治癒修復法の有力候補を比較するのに十分な数値実験結果を得るまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
自己組織化法による逐次成長ネットワークの頑健性(攻撃に対する結合耐性)の強化を、(地表に構築される電力網や通信網のように)表面成長の制約がある場合においても実現できるかどうか、さらに追及する。また、フィードバック頂点集合との関連性については、インフルエンサー的な拡散中心性やパーコレーション問題で近年着目されている階層的な核構造:k-coreとも絡めて、より詳しく調べていく。
自己修復に関しては、攻撃や故障によって分断されないように連結性を保持する従来の枠組みに留まらず、(概念レベルで具体的な実現手段は不明だった)レジリエンス的な適応強化に相当する、元々の頑健性より強いネットワークに構造変革できることを治癒修復によって実現すべきであることまで問題設定を明確化できた。 そこで、具体的な治癒修復法を、まずは比較的小規模なネットワークにおける数値実験を優先して行うことで絞り込む。また、研究分担者2人がより密接に協力して取り組む体制に改め、まずは修復に使用可能なリンク数の制限に注力した後に、各ノードのチャネル数の制限に検討を広げることで、優先順位を付けて効率的に資源配分の制約が加わった場合の検討を進める。
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Research Products
(7 results)