2017 Fiscal Year Annual Research Report
器官立体構築原理をデータに基づく数理モデルによって解明する-心臓発生を例に
Project/Area Number |
17H01819
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森下 喜弘 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, ユニットリーダー (00404062)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 発生動態 / 理論生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
「我々人間を含む動物の形がどのように作られるか」という問題は、これまで膨大な数の研究論文の中で議論されてきたにもかかわらず、その機構の殆どが未解明のままである。器官立体構築原理の理解のためには、それを検証・予測するための定量的データ解析と数理モデルが不可欠である。本研究では具体的な生物対象として心臓形成過程を例に、実験データに基づく数理モデル(超弾性体モデルをベースとした体積成長・大変形を伴う非線形連続体力学モデル)を構築し、正常発生過程の再現、形態異常の予測を目指す。具体的には実験と理論の両側面から以下の4つの研究課題に取り組み、これらをクリアすることで、最終的に、任意の器官形態形成研究へ応用可能な汎用性の高い解析基盤が整備されることとなる。
(課題1)心臓発生時における一部の細胞軌道データを取得し、微分幾何的定式化とベイズ統計モデルを組み合わせることで組織変形写像と変形テンソルの時空間マップを構築する。(課題2)力学状態に応じた大変形・体積成長を扱える非線形連続体力学モデルを構築する。(課題3)心臓組織内の応力、物性パラメータ、細胞形状の時空間マップの作成と、課題1で得られた組織変形情報と統合することで体積成長・異方的変形のルールをモデル化する。(課題4)正常発生時の心臓形成過程をシミュレーションによって再現し、また形態異常のメカニズムを予測する。このうち、課題1に関しては順調に進み現在論文にまとめている[Kawahira et al., in prep.]。課題2に関しては、非線形連続体力学モデルを用いて組織内の応力分布の計算を行い、組織変形動態との相関解析を行っている所である。課題3に関しては、細胞形状の時空間マップの作成は終了し、これが組織の変形パタンとどのように対応するかの計算も行った。このままの進度で研究を遂行し、課題4の到達を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、課題1(と課題3の一部)に関しては極めて順調に進んでいる。組織レベルの変形動態と細胞動態(3D形状変化、再配列等)の定量化に成功し、両者の関係性も明らかとなった。得られた結果は、過去1世紀に渡って提案されてきたどのモデルとも相容れず、計測と解析によって初めて心臓初期発生時のLooping機構が明らかとなった。得られた結果は現在論文にまとめている所である。
課題2や4に関しても、組織成長や能動的変形を含んだ超弾性体モデル[Kida and Morishita, 2018]をベースにシミュレーションをスタートしている。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1(と課題3の一部)に関する論文を可能な限り早い段階で論文投稿し、その後は課題2と4の中心である、力学シミュレーションに力を注いでいく方針である。
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Research Products
(1 results)