2017 Fiscal Year Annual Research Report
大学間連携により自己成長型大規模データベースを構築する高度学習支援システム
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17H01842
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
廣瀬 英雄 広島工業大学, 環境学部, 教授 (60275401)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 知的学習支援システム |
Outline of Annual Research Achievements |
1 多様化する学生への習熟度を充実させる期待はますます高くなる傾向にあるため、個々の学生に応じてきめ細かく対応できるような教育システムの構築が望まれてきた。本研究では、そのための利用価値の高い大規模な知的学習支援システムの構築を目指すことを目的とし、そのための方法として項目反応理論(IRT)など現代テスト理論を評価法に加味した上で、欠測データに対しても習熟度がロバストに推定できるようなアルゴリズムを構築できるように努めた。その結果、1000人規模の大学入学生全員に一斉にオンラインテスティングが行える状況が整い、多少の欠測があっても全員の習熟度を推定できるようになってきた。さらに、蓄積されつつあるラーニングデータを用いてアナリティクスを実施することも可能となってきた。そのラーニングアナリティクスから得られたことは次のとおりである。(1)毎授業のオンラインテストの結果と期末試験との関係を見つけることはなかなか困難であるが、視点を工夫することによってある程度可能であることがわかった。(2)アダプティブオンラインテスティングから得られた応答マトリクスはスパース性が強く、そのため問題の困難度の推定が難しい。しかし、工夫によって問題の一部の困難度の推定値の近似値を求めることは可能であることがわかった。 2 複数大学間での連携協調により共通的なプラットフォームを構築し利用価値の高い大規模な知的学習支援システムの構築を目指すこととして、数学の基礎科目について「Webアシスト演習」を教科書の付録につけた授業が展開できるようにした。線形代数、微分積分、確率・統計、基礎物理の4つの教科書のオンライン演習が実施可能になり、アクセスデータが蓄積されつつある。また、アクセスデータの分析を行った研究会も開催して、データの解析法を含めた研究交流を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の当初では次の2点を研究計画としていた。(1)これまで、比較的小規模での不完全反応パタンマトリクスからの習熟度評価を可能にしている学習支援システムを、大学間連携の形に発展させるために、大規模なデータベースでも安定して高速に習熟度を推定できるアルゴリズムを開拓すること。(2)また、問題登録システムを構築すること。 (1)については、次の2点で成果が得られている。(a)1000人規模の大学1年生に対する大型のオンラインテスティングシステムを構築し、毎週2科目の数学科目において一斉テストを継続的に実施してきた。このときのユーザ・アイテムからなる応答マトリクスには欠席者、無線LANの接続不良などの欠測データが含まれるが、その割合は5-10%程度と少ないため、Expectation-Maximizationタイプの推定アルゴリズムを利用することで受験者の習熟度を推定することが可能となった。しかしながら、受験者の習熟度に合わせてアダプティブに問題を提示するテスティングでは、大量にプールされた問題の個々に対するアクセスの度合いがかなり異なっているため、スパースな応答マトリクスへの推定法が求められる。29年度では、推定可能なアイテムを選別しそこでの推定を可能とした。(b)コンソーシアム型のアダプティブオンラインテスティングシステムを構築する一つの手段として、同一の科目に対して異なる大学からの問題提供者が容易に問題を登録できるシステムを構築し、演習が実施できるための「Webアシスト演習」付きのテキストを作成した。実際に問題登録が行われ、その経過報告としてのWebアシスト演習研究会を開催し、現状報告と今後の課題について議論することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、大規模な応答マトリクスがスパースになっている状況での項目反応理論(IRT)での安定的なパラメータ推定法を確立させることを最初の目標とする。また、IRTと類似点を持つ因子分析での不完全データの取り扱い(スパースモデリングなど)との共通点や異なった点を比較しながら、機械学習と統計的方法を統一的に取り扱う方法論の研究を進め、実用的で信頼度を保てるようなパラメータ推定の方式を模索しながら研究を進めていく。 ラーニングアナリティクスとしては、大規模オンラインテスティングの結果と期末試験などとの関係性をさらに追求し、オンラインテスティングからの前兆により期末試験の成否を確率的に予測できるかどうかについて研究を深めていく。これは、単にラーニングアナリティクスへの応用にとどまらず、他分野でのリスク解析の方法論にも適用できる可能性があり有用性が高いと考えられる。 また、個別の組織内だけでなく一般に公開された教科書を媒体にして運用されている連携データベースに蓄積された反応パタンから推定されたアイテムの特徴を有効に利用し、インタラクティブ学習システムが真に問題発見能力や問題解決能力につながっているかどうかを確認できるように、ラーニングアナリティクスを深める。さらに、アクセス記録からPDCAを確認してオンラインテスティングの方法を改善していく。29年度に引き続き「Webアシスト演習」研究会を開催して問題点を解決していく。また、その結果を広く公開する。
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Research Products
(11 results)