2017 Fiscal Year Annual Research Report
Advanced fractionation of biomass by phenol coating and the following dilute acid hydrolysis
Project/Area Number |
17H01919
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
野中 寛 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (90422881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅田 元子 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 講師 (10580954)
秀野 晃大 愛媛大学, 紙産業イノベーションセンター, 講師 (30535711)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | biomass / wood / lignin / cellulose / hemicellulose / cresol / fractionation |
Outline of Annual Research Achievements |
バイオマス変換プロセスを成功させるためには,セルロース,ヘミセルロースを利用するとともに,有用リグニンを高収率で得ることが重要である。本研究では,ごく少量のフェノール類を原料に含浸担持し,弱酸加水分解を適用する工夫により,木材全成分の利用を目指す。 まずフェノール類のアセトン溶液に木粉を含浸したのち,撹拌とともに気流乾燥し,フェノールを木粉内外に残留させた。このフェノール含浸木粉に対して,今年度は,弱酸加水分解の溶媒として,主として1.1%硫酸を用いた際の化学反応を調査した。 針葉樹のヒノキ木粉や広葉樹のカバ木粉を,180℃,60分,1.1%硫酸を用いて希酸加水分解を行うと,ヘミセルロースのほぼ全量,セルロースの一部が加水分解され,残渣はリグニンが主成分となるが,有機溶媒にほぼ不溶であった。これに対し,p-クレゾールをリグニン芳香核の3mol倍量含浸した木粉について同様の処理を行ったところ,クレゾールがリグニンに導入され,残渣の有機溶媒への溶解性が向上,木粉辺り約20%をTHF可溶リグニンとして得ることに成功した。加水分解液中の主要生成物は,レブリン酸,ギ酸,フルフラール,グルコース等単糖類で,p-クレゾール含浸の有無で大きな変化はなかった。すなわち木粉中のセルロース,ヘミセルロースを有機酸または単糖類へ変換し,リグニンの一部をTHF可溶リグニンとして得るプロセスの開発に成功した。含浸フェノール量を,3→2→1mol倍量と減らした実験では,THF可溶リグニンの収率は,針葉樹で大きく減少し,広葉樹では2mol倍量まではほぼ同収率で獲得することができた。一方,希酸加水分解温度を130℃で行うと,セルロースの加水分解が抑制され,続くNaOHを用いたソーダ蒸解により,THF可溶リグニンとともに,特に広葉樹においてリグニン含量の少ないセルロースを得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
弱酸加水分解の溶媒として,1.1%硫酸を採用し,網羅的に反応特性を検証することができたため。特に,180℃,60分の加水分解では,セルロースをセルロースとして得ることはできなかったが,逆に有機酸,フルフラール,単糖,有機溶媒可溶性リグニンを得ることができて,当初とは異なる想定の新しいバイオマスリファイナリーシステムを提示することに成功した。p-クレゾール担持量がTHF可溶性リグニンの収率に与える影響,110~180℃におけるセルロース,ヘミセルロースの分解特性,低温での希酸加水分解時間がTHF可溶性リグニンの収率に与える影響,さらには希酸加水分解後の残渣からのソーダ蒸解によるリグニン抽出特性,針葉樹と広葉樹の違いなど,当初予定を大きく上回るスピードで成果を得ることができ,すでに英語論文を1本成果発表したほか,さらに学術論文原稿を準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
①フェノール担持木粉の前加水分解後,アルカリ処理による高純度セルロースとリグニンの分離:フェノール担持木粉を100~200 ℃の間の条件で所定時間水熱処理(酢酸・微量硫酸添加,非添加)を行う。得られた残渣に対して,0.5~2 MのNaOH溶液を加えて,140~170 ℃のアルカリ蒸解を行う。処理後の残渣木粉の組成分析より,処理時間とセルロース,リグニン含有量の関係をグラフ化し,セルロース純度より蒸解条件を探索する。 ② 機能性リグノセルロースナノファイバー,セルロースナノファイバーの誘導:上記①のプロセスの過程で「選択的フェノール結合リグニン-セルロース複合体」(想定リグニン含量40~50 %),「部分的にリグニンが除去された選択的フェノール結合リグニン-セルロース複合体」(同10~20 %),「高純度セルロース」(同0~3 %)が得られる予定である。これらはセルロースナノファイバーの主原料としてよく用いられる漂白クラフトパルプと比較して,リグニンの構造や割合,化学的性質が全く異なるセルロース素材と推測される。そこでまず初めに,これら素材について,直接的に機械的解繊処理を実施し,解繊可能であれば,その物性を調べる。 ③ リグニンの有用性評価:平成29年度の成果である,p-クレゾール含浸木粉の180℃,60分,1.1%希硫酸加水分解によって得られる有機溶媒可溶性リグニンについて,水蒸気爆砕で得られるリグニンに対して実績のある条件にてエポキシ化を行い,硬化剤,エポキシ樹脂本体としての特性を評価する。
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Research Products
(7 results)