2018 Fiscal Year Annual Research Report
Technology introduction and social change in modern Manchuria
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17H02010
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
上田 貴子 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (00411653)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小都 晶子 摂南大学, 外国語学部, 講師 (00533671)
猪股 祐介 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (20513245)
佐藤 量 立命館大学, 先端総合学術研究科, 非常勤講師 (20587753)
蘭 信三 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (30159503)
坂部 晶子 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (60433372)
永井 リサ 九州大学, 総合研究博物館, 専門研究員 (60615219)
西澤 泰彦 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80242915)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中国東北 / 農業 / 医療 / 移民 / 人口管理 / 技術導入 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究チーム全体としては、途中経過を紹介し知見の交換の機会として2018年度第1回研究会を8月11日(土)近畿大学で開催した。分担者の西澤泰彦による報告「建築工事現場の監理―満鉄大連医院本館工事をめぐって」を中心に議論を行った。9月11日勉強会として院生を中心に研究の進捗状況をシェアした。今年度の最も中心的な研究実績としては12月15日近畿大学において、農業技術に焦点をあてた国際ワークショップ「近代満洲をめぐる有機物の循環~草原・森林・農地そして都市へ~」を行ったことである。 また、分担者各自がそれぞれ機会をとらえて、研究の途中経過報告を行った。代表者の上田貴子は「日本人の見た奉天、中国人の生きた奉天」と題して東洋史研究会大会で報告を行い、植民側である日本人と在地の中国人が同じ生活空間をどうとらえるか、そこにある相互作用について報告を行った。分担者の永井リサは日本土壌肥料学会において「中国近代における獣骨肥料供給地としての屠畜場の成立について―天津屠畜場を中心に―」、12月15日のワークショップでも「草原とシラス台地:20 世紀初頭の内モンゴル東部草原からの有機物流出」と題して報告を行い、近代の到来によって獣骨の価値が新たに見いだされ、在地に影響を与える点を報告した。同じく分担者の坂部は植民者と在地社会の相互作用についての一連の研究成果の報告をおこなった。 協力者のキンウィは植民者である日本の勢力が羊毛産業を満洲に扶植するにあたり現地をどのようにとらえているか「「満蒙」における日本の牧羊調査―軍部と満鉄を中心に―」(『都市文化研究』第21号)において論じた。また1年目2年目の調査を踏まえて「モンゴル牧畜社会における預託制度の変容」を日本モンゴル文化学会で発表した。これについては引き続き論点を整理して継続研究を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年8月11日に近畿大学にて第1回研究会を行い、西澤泰彦による報告「建築工事現場の監理―満鉄大連医院本館工事をめぐって」をもとに、在地社会から調達される労働者の管理を建築現場でどのように行うかについて具体的な議論を行うものとなった。 9月には中国東北地域での調査を行う予定であったが、台風による関西空港被災のため、メンバーの一部はこの時期の調査を断念した。この調査ができなかった点を補うためにデジタル化された史料『吉林警団公報』(1926-1931)を購入した。これは社会状況の分析に用いるためである。 12月15日近畿大学において、「近代満洲をめぐる有機物の循環~草原・森林・農地そして都市へ~」と題して国際ワークショップを行った。永井リサ「草原とシラス台地:20 世紀初頭の内モンゴル東部草原からの有機物流出」キンウィ「日本帝国の内モンゴル草原へのまなざし:日本帝国の牧羊調査を中心に」報告をもとに植民者が近代満洲にどのように関心をもつかについて議論した。 海外からは昨年から引き続き中国からサイジラホ氏が参加、新たに台湾国立中興大学の侯嘉星氏にご協力いただき、澳門科学技術大学のMiriam Kaminishi氏、UCLAの池翔氏を招聘し12月15日の国際ワークショップで研究交流を行った。その成果は、侯嘉星氏と池翔氏がorganizer、上田がchair とdiscussantを務めたAssociation for Asian Studies(AAS)Annual Meeting(Denver, USA)のパネルResource Management, Global Market, and the Making of Modern Manchuriaで発表した。 2018年度は前年度に行った海外の研究者との連携をさらに深め、今後の研究成果の国際的な発信を見通すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
史料調査・現地調査については基本的には3年目である2019年度に一定のめどをつけ、各自の実証研究をまとめる作業に入る。中国での档案調査が近年厳しくなっているが、業界団体や機関内の公報などの定期刊行物を史料として利用することなど、档案史料以外を用いたアプローチを行っていく。さらに研究会・ワークショップでの経過報告を行い、最終年度に成果を国際学会で発表準備のために研究グループ内での研究の議論を深めることを目指す。 2年目である2018年度は農業に焦点をあてたワークショップを実施することができ、これにより医療・農業・人間の管理それぞれについてワークショップが行われた。3年目の今年度はこれら3つの分野に通底する「近代性」をもった技術の導入とそれによる社会変容に関する仮説のより緻密な検証を行う。そのために、6月10月に社会変容に焦点をあてた研究会およびワークショップを行う。8月には若手研究者の成果報告となる研究発表を予定している。また12月には医療・農業・人間の管理の近代的技術と社会変容を結びつけうる仮説を俎上に乗せて論点の明確化を図る。これにより本科研における一定の知見が出そろうはずである。 分担者・研究協力者の研究は総じて高い水準の実証的研究を行っている。また日本の満洲および中国東北地域をめぐる研究は世界的に高い水準のものであるにもかかわらず、海外での認知度の低さを国際学会での参加を通じ実感した。この点から本科研グループの研究成果は最終年度である2020年度末(2021年3月)Association for Asian Studies(AAS)でのパネル発表を行い、国際的に発信していくことを計画している。
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Remarks |
Facebookグループページ「近代満洲における技術導入と社会変容」
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Research Products
(11 results)