2018 Fiscal Year Annual Research Report
モデル予測政策決定のためのエージェントベース・データ同化モデル
Project/Area Number |
17H02035
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
倉橋 節也 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (40431663)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 和彦 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (50302378)
高橋 大志 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 教授 (60420478)
吉田 健一 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (40344858)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シミュレーション / ゲーミング / データ同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)農業生産意思決定モデルの構築:農業生産額データから,エージェントベースモデルを構築した。離島においては,水資源の開発が農業生産に与える影響は大きく,飛行場などの整備によって,本土への出荷額も大きく影響される。加えて,近年のアジア諸国からの観光客の増加の影響も含めた実データを用いて,農業生産額に影響する農家の意思決定構造をモデル化した。その結果,販路拡大による農産品単価上昇率や,行政のとりうる意思決定パターンを比較したところ,長期的な価値判断を実施することで,受け取る報酬額が大きくなる結論を得た。 2)安定的な需給調整のための電力市場制度モデルの構築:電力市場は,需要家の自由な選択,企業の自由な経済行為によってイノベーションが促進され,自然に全体の電力需給バランスする集合知と考えられる。電力小売り自由化政策によって,多様な企業の参入によるイノベーションの進展が期待されている。そこで電力市場モデルを構築し,発電事業者が意思決定を行う参加型モデルによって,望ましい電力市場制度設計を実施した。 3)動的なセルフサービスモデルの構築:空港の出発ロビーを研究対象とし,消費者の自動チェックイン器機 (自動機) 選択メカニズムを組み込んだ動的再現モデルを構築した。その上で,サービスオペレーションの再現性を検証し,生産財の最適配置や待時間の極小化を実現するベストプラクティスを探索することに成功した。 4)ビジネスゲームにおけるプレイヤーの行動評価支援フレームワーク:コンピュータを用いたビジネスゲームおよびシミュレーション分析方法を提案し,シミュレーションログを分類し,プレーヤーの行動ログをマッピングする方法を構築した。 結果として,プレーヤの位置付けが視覚化され,可能性のある結果の範囲が提示されることで,プレーヤーとファシリテーターの両方が役立つ情報を受け取ることができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学習アルゴリズムによるパラメータ推定手法として,強化学習を用いた逆シミュレーション学習によるエージェントモデルのパラメータ推定手法の開発を行い,実証データに基づく社会・経済制度のモデル構築を行った。また,データ同化を行ったシミュレーションモデルと,実施に人間が参加するゲーミングモデルとの結合を行うために,電力市場モデル,サービス提供モデルおよびビジネスゲームの構築と実験を実施した。これらの結果,以下の4種類のモデルを構築し,その有効性を確認した。 1)政策意思決定モデル:農業生産額データから,逆シミュレーション手法に基づくパラメータ推定を用いてエージェントベースモデルを構築した。行政のとりうる複数の意思決定パターンに対するシミュレーション結果の比較を行った。 2)先物市場モデル:日本卸電力取引所で取引が行われている現物市場(スポット市場,時間前市場)に対して,今後導入される電力先物市場がどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的に,両者をモデル化した人工電力市場を構築し,経済的で安定した電力取引を行うための市場設計を行った。 3)サービスモデル:サービス提供場面における協調ゲームを構築し, 刻々と変化する状況への対処と,戦略抽出にゲーミングが効果的かを検証した。実験空間にアンビバレントな仕組みを導入し,複数環境の生産財のコントロールをプレイヤが協力するゲームに発展させ,実験を行うモデルを構築した。 4)ビジネスゲーム評価モデル:ゲーム参加者の行動評価支援フレームワークを提案し,シミュレーション分析を行った。シミュレーションログをクラスタリング手法により分類し,プレーヤーの行動のログをマッピングする方法を構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
強化学習を用いた逆シミュレーション手法を拡張し,報酬関数を実データから獲得することを可能とする逆強化学習手法をエージェントベースモデルに適用することを目指す。また,実データの統計的性質を用いて,シミュレーションモデルに適応するデータ同化手法との連携を行う予定である。これらをベースに,具体的な適用事例として,以下を検討している。 1)電力先物市場モデルへの適用 これまでのスポット市場,時間前市場に対して,今後導入される電力先物市場がどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的に,両者をモデル化した人工電力市場を構築する。また,再生可能エネルギーの増加に伴う供給量変動の関係,発電事業者の最低価格保証制度の効果,供給可能量変化(故障等)が市場価格に与える影響,原油価格の変化が市場価格に与える影響などを,データ同化手法を用いて推定するシステムを構築する。このことで,電力市場のシステムプライスから,市場設計を変更した場合の将来予測を可能とする。 2)感染症モデルへの適用 新型感染症を対象としたシミュレーションモデルを構築する予定である。人の移動が広範囲・高頻度で発生する現在社会で重要な事は,感染症の流行を食い止め,人的・経済的損失を最小にする有効な医療政策決定にある。医療政策決定者がどのような現象に着目し,可能な政策変数をどのように操作するのかも,被害を最小限に留めるためには重要である。操作できる政策には当然コストが伴う。また,現在では一国の政策決定だけで流行を留めることは困難であり,各国の協調が問われている。多国間での協調を促す政策立案や政策決定者の育成を目的としたゲーミング・シミュレーション環境を構築し,実際の感染事例データ(エボラ出血熱,SARSなど)から,感染拡大・防止の予測モデルを構築する計画である。
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Research Products
(15 results)