2017 Fiscal Year Annual Research Report
新規のヒト由来膜透過促進ペプチドを利用したバイオ医薬の細胞選択的DDSの開発
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17H02103
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
土居 信英 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (50327673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 慶 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (20580989)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 核酸 / 癌 / バイオテクノロジー / 共焦点顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)モデルペプチドの細胞質送達および膜透過促進メカニズムの解析 膜抗原として様々ながん細胞で過剰発現することが知られている上皮成長因子受容体(EGFR)にpH依存的に結合する一本鎖抗体を作製し、eGFPおよび膜透過促進ペプチドを融合したタンパク質を大腸菌で大量発現・精製した。これをヒト培養細胞に添加して共焦点顕微鏡で観察したところ、EGFR高発現株のA431細胞の細胞内部にeGFPの緑色蛍光が観察された。一方、細胞質内の標的に結合して生育阻害を起こすモデルペプチドとして、まず、C末端で機能するサイクリン依存性キナーゼ阻害ペプチドp27KIP1を選んだ。しかし、これまで膜透過促進ペプチドも同じくC末端に融合していたことから、これをN末端に付け替えても膜透過促進活性を示すかどうか検討したところ、細胞質送達効率が低下することが分かった。そこで、p27KIP1の使用は断念し、次に、N末端で機能するMDM2阻害ペプチド(MIP)をN末端に、膜透過促進ペプチドをC末端に融合したタンパク質を大腸菌で大量発現・精製し、ヒト培養細胞に添加したところ生育阻害を示した。
(2)抗アンドロゲン剤抵抗性前立腺がんに対する抗体医薬の細胞内送達 ARの標的DNAへの結合を阻害する抗体は、ARおよびAR-V7双方の転写活性を阻害する新たな治療薬となることが期待できる。今年度はモデル細胞内抗体としてβ-チューブリンを認識する一本鎖抗体を膜透過促進ペプチドと融合し、細胞内取り込みを調べた結果、細胞質で微小管に結合したと推定される放射状の局在が観察されたことから、我々の膜透過促進ペプチドにより細胞内抗体が機能を保持したまま細胞質にデリバリーできることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ARの標的DNAへの結合を阻害する抗体は、ARおよびAR-V7双方の転写活性を阻害する新たな治療薬となることが期待できることから、mRNAディスプレイ法によりARのDNA結合ドメインを認識する低分子抗体を試験管内選択するために、まず、抗原タンパク質としてARのDNA結合ドメインにリンカーを介してビーズ固定用のタグを融合したタンパク質を大腸菌で大量発現・精製した。最初のデザインでは大腸菌内での発現量が少なく、また、リンカー部分で分解が生じてしまうことが分かったため、再設計した結果、抗原を調製することができた。しかし、抗体作成は間に合わなかったため、今年度は代替のモデル細胞内抗体としてβ-チューブリンを認識する一本鎖抗体を膜透過促進ペプチドと融合し、細胞内取り込みを調べた結果、細胞質で微小管に結合したと推定される放射状の局在が観察されたことから、我々の膜透過促進ペプチドにより細胞内抗体が機能を保持したまま細胞質にデリバリーできることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)モデルペプチドの細胞質送達および膜透過促進メカニズムの解析 ヒトSyncytin1由来の膜透過促進ペプチドによる膜透過促進メカニズムをさらに詳細に調べるために、膜透過促進ペプチドのアラニン・スキャニング変異体の細胞内局在変化を共焦点蛍光顕微鏡により観察し、膜透過促進機能に重要なアミノ酸を特定する。得られた変異ペプチド融合タンパク質の構造機能相関を調べるために、ペプチドの二次構造をCD測定により解析する。上記の情報を元に膜透過促進ペプチド配列のさらなる最適化を試みる。前年度に調製した細胞生育阻害ペプチド融合タンパク質の膜透過促進ペプチド部分の配列を必要に応じて改変し、さらなる細胞質送達効率の向上を図る。
(2)抗アンドロゲン剤抵抗性前立腺がんに対する抗体医薬の細胞内送達 前年度に調製したARのDNA結合ドメインをベイトとして、mRNAディスプレイ法によりARのDNA結合ドメインを認識する低分子抗体を試験管内選択し、ARおよびAR-V7双方の転写活性を細胞内で阻害する還元型抗体を創出する。最終的に取得した低分子抗体遺伝子を前立腺がん細胞株およびAR-V7発現細胞株で一過性発現させ、免疫沈降法により細胞内でのARまたはAR-V7と低分子抗体との結合を確認する。さらに、この低分子抗体がARおよびAR-V7の転写活性を阻害することをレポータージーンアッセイにより確認する。完成した抗AR-V7低分子抗体に膜透過促進ペプチドおよび核移行配列(NLS)を融合したタンパク質を大腸菌で大量発現・精製し、この融合タンパク質を培養細胞の培地に添加したとき、細胞質から核に移行してARの転写活性を阻害することをレポータージーンアッセイにより確認する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Human-derived fusogenic peptides for the intracellular delivery of proteins.2017
Author(s)
Sudo, K., Niikura, K., Iwaki, K., Kohyama, S., Fujiwara, K., Doi, N.
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Journal Title
J. Control. Release
Volume: 255
Pages: 1-11
DOI
Peer Reviewed
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