2018 Fiscal Year Annual Research Report
新規のヒト由来膜透過促進ペプチドを利用したバイオ医薬の細胞選択的DDSの開発
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17H02103
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
土居 信英 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (50327673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 慶 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (20580989)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 核酸 / 癌 / バイオテクノロジー / 共焦点顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに我々が同定したヒトSyncytin1由来膜透過促進ペプチドS19は、従来の膜透過性ペプチドであるTAT と組み合わせることで融合タンパク質の細胞質送達を数十倍向上させるが、その際S19-TATは後期エンドソーム膜への結合にともないベータ構造を形成し、細胞質に離脱している可能性が示唆されていた。そこで本年度はこの機構が正しいかどうかを確認するために、Alaスキャニング変異解析をおこなった。具体的にはS19ペプチドのうち2カ所のAlaを除く17個のアミノ酸を1カ所ずつAlaに置換した変異体を作製し、それらの膜透過促進活性と二次構造を調べた結果、ベータ構造を形成しやすいアミノ酸をAlaに置換した場合に膜透過促進活性が減少あるいは消失し、そのときS19の二次構造がベータ構造からヘリックス構造に変換あるいはベータ構造が減少する傾向にあることが示された。また、変異体の一部は野生型S19よりも高い細胞内取り込み活性をもつことが示唆された。さらに、前年度にS19-TATをN末端に連結すると活性が失われたことから、C末端で機能するサイクリン依存性キナーゼ阻害ペプチドp27KIP1の利用は断念していたが、S19とTATの連結順序や位置を変えて細胞内取り込み活性を検討した結果、N末端に膜透過促進ペプチドを融合しても膜透過促進活性を示すパターンを見出すことができた。 前年度に調製したARのDNA結合ドメインをベイトとして、mRNAディスプレイ法によりARのDNA結合ドメイン(AR-DBD)を認識するVHドメイン抗体の試験管内選択を還元的条件下で4ラウンドおこなった。その結果、異なるCDR配列をもち、ジスルフィド結合なしでAR-DBDに結合できるVHドメイン抗体を多数取得することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
変異体S19を含む融合タンパク質の機能/構造解析をおこなっている過程で、一部の変異体タンパク質が特殊な性質をもつため、それまでに得られたデータでは比較解析が困難なことが判明した。このため、研究方式を見直し、調製の改善方法を検討した上で改めて変異体タンパク質を再調製し、それらの機能/構造解析をおこなう必要が生じたため、結果の取得が遅れ、それに基づく膜透過促進ペプチドの最適化に遅れが生じた。 しかし、ARに対するVHドメイン抗体を多数作成できたこと、また、野生型のS19を用いてもタンパク質/ペプチドの細胞内取り込みが促進可能であることから、最終年度に挽回することは十分可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に新たに見出したS19とTATの連結順序を利用して、初年度に使用を断念していたC末端で機能するサイクリン依存性キナーゼ阻害ペプチドp27KIP1やp53活性化ペプチドについても新たなコンストラクトを作製し、細胞内取り込みによる生育阻害活性を検証する。 今年度に取得したARのDNA結合ドメインに結合できる多数のVHドメイン抗体にそれぞれS19-TATとNLSを融合したタンパク質を大量調製する。これらの融合タンパク質を培養細胞の培地に添加したとき、細胞質から核に移行してARの転写活性を阻害することをレポータージーンアッセイにより確認する。さらに、これらの抗体医薬候補の制がん活性評価のために、前立腺がん由来22Rv1細胞またはLNCaP細胞にジヒドロテストステロンを添加したときに誘導されるPSAの発現をRT-qPCRにより評価する。 我々が同定したS19-TATが抗体やペプチドだけではなく核酸の細胞質送達の促進にも適用できることを確認するために、siRNAに配列非特異的に結合するRNA結合ドメインのC末端にS19-TATを融合したタンパク質を調製し、蛍光標識siRNAとの複合体をヒト培養細胞に添加し、共焦点蛍光顕微鏡で細胞内局在を観察する。また、ARおよびAR-V7遺伝子の共通部分配列に対するsiRNAを用いた場合に、標的遺伝子がノックダウンされることをRT-qPCRにより確認する。
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Research Products
(8 results)