2017 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経疾患後の機能障害の進行と回復過程への学習メカニズムの関与
Project/Area Number |
17H02128
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大須 理英子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (60374112)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大高 洋平 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (00317257)
井澤 淳 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20582349)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ニューロリハビリテーション / 計算神経科学 / 脳神経疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)「機能」の回復と「使用」の回復のモデル構築と行動実験: 本項目では、「機能」と「使用」の関係を明らかにできるような行動実験パラダイムを構築することを目指す。具体的には、課題の遂行が困難になるような外乱を片方の手に加えることで機能低下をシミュレートし、仮想的な片麻痺を作り出す。その状態で、左右どちらの手でも遂行できる課題を課したときの、仮想麻痺手の外乱に対する適応と、左右の手の選択確率の推移を観察する。本年度は、予備実験データについて、モデル化に向けた解析を行った。 2)麻痺手の使用を促進する訓練システムの開発と検証: 麻痺手の機能を訓練する手法は多く提案されているが、麻痺手の使用確率の向上をメインのターゲットとした訓練手法はあまり提案されていない。本項目では、左右どちらの手を使ってもよいからできるだけ速く正確にターゲットをヒットするという課題に、難易度を調整したり麻痺手をアシストしたりして、行動変容(使用確率向上)に貢献し、使用を促進する訓練装置を開発することを目的としている。本年度は、主に、装置の設定と実験プログラムの開発を実施した。また、手などの末梢への刺激を利用して選択を誘導する可能性について検討した。 3)脳刺激による麻痺手の使用向上可能性の探索: 経頭蓋直流電気刺激により、一過的に脳活動を調整することが可能である。一般的に、陽極刺激は脳活動を促進し、陰極刺激は抑制すると言われており、それに対応して、運動野に陽極をおいた場合はその対側の手が使われやすく、陰極をおいた場合は同側の手が使われやすい傾向にあることが報告されている。本項目では、刺激と訓練と組み合わせることで、麻痺手を使うことを習慣づける、すなわち選択確率を学習する、といったことが促進できるかどうかを検証することを目指しており、本年度は、実験装置を導入し、実験の設定を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者がATRから早稲田大学に異動し、4月研究室がゼロからの立ち上げとなり、また、ポスドクや大学院生、助教などの研究に関われる人材を配属できなかったため、全体的に遅延している。また、閉鎖空間で実験できる実験室が配備されていなかったため、本格的な実験は開始できなかった。実験装置については年度末にほぼ整い、動作確認や実験プログラムの開発、予備的な実験を開始した。 1)「機能」の回復と「使用」の回復のモデル構築と行動実験: ロボットで外乱を付加するような大型実験装置の設置は現時点、現環境では困難であることが判明し、ATRで取得したデータの解析を行った。 2)麻痺手の使用を促進する訓練システムの開発と検証: 異動に伴い実験装置やプログラム開発環境を再構築する必要があり、また、ハード、ソフトともに、以前の設定は古くなっており、環境をアップデートしたため、設定に時間を要した。 3)脳刺激による麻痺手の使用向上可能性の探索: 経頭蓋直流電気刺激を導入し、操作法の習得、予備的実験を実施したが、介入実験と見なされるため、本格的な実験の実施には倫理審査会の承認が必要であり、本格的な実験には至らなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本実験においては、早稲田大学の倫理審査会の承認が必要であるため、早急に申請の手続きを進める。また、30年度夏には閉鎖空間となる実験室が完成する予定であり、また、大学院生、学部生など少しずつ人員も整ってきたので、30年度後半には本格的な実験を開始することが可能となる予定である。 1)「機能」の回復と「使用」の回復のモデル構築と行動実験: 前述のように、ロボットで外乱を付加するような大型実験装置の設置は現環境では困難であるため、違う手段で外乱を与える新しい実験パラダイムを検討中である。 2)麻痺手の使用を促進する訓練システムの開発と検証: 電気刺激装置など、さらに実験に組み込む必要がある装置があるが、プログラミングを一部実験補助に依頼するなどにより効率化を図りたい。 3)脳刺激による麻痺手の使用向上可能性の探索: 倫理審査会への申請をすすめる。ただし、経頭蓋直流電気刺激については、その効果について、疑問視するデータもあるため、過去研究や学会における情報などを見極めつつ、予定通り進めるのか方向転換するのかを検討したい。
|