2018 Fiscal Year Annual Research Report
NAFLD-NASH-肝癌悪性化シークエンスでのOSMの機能とその治療への応用
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17H02177
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
森川 吉博 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60230108)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メタボリック症候群 / 非アルコール性脂肪肝炎 / 肝硬変 / 肝癌 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
NASH発症におけるOSMの機能的な役割を検討するために、NASH発症モデル(obMCDモデル:ob/obマウスにメチオニン/コリン欠乏食を4週間給餌したモデル)に対してOSMを腹腔内投与し、肝臓における種々の遺伝子の発現変化について検討したところ、IL-6、IL-4Rα、及びeotaxin-1などの炎症関連遺伝子の発現増加が認められた。また、肝類洞内皮細胞より産生され、炎症や線維化を抑制する作用を持つeNOSの発現がOSMの投与により増加したことから、OSMは肝類洞内皮細胞に対してeNOSの発現を増加させ、肝の炎症や線維化を抑制している可能性が示唆された。さらに、OSMの投与により、肝細胞増殖因子(HGF)の発現も増加していた。以上の結果より、OSMはNASHの炎症や肝障害を抑制する可能性が示唆された。 NASHを誘導する栄養素として、近年、果糖が注目されている。果糖誘導性のNASHとOSMとの関連性について検討したところ、高果糖食を7日間給餌したOSMRβ欠損マウスの肝臓において、野生型マウスと比較して、脂肪滴癒合促進タンパク(CIDEc)、及び好中球エラスターゼの発現増加が認められた。このことから、OSMRβのシグナルは、果糖誘導性のNASHの発症における脂肪滴癒合や炎症を抑制している可能性が示唆された。 STAMモデルでの肝癌発症に対するOSMの予防・治療効果を検討した。NASH発症期のSTAMモデルにOSMを腹腔内投与し、肝癌発症の評価を行ったところ、OSM投与群ではコントロール群と比較して肝癌の発症が抑制された。これは、OSMがNASHを基盤とする肝癌の発症に予防的効果を有することを示唆している。 さらに、OSMRβflox/floxマウスとAlbumin-Creマウスを交配させ、肝細胞特異的OSMRβ欠損マウスを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画により、OSMがNASHにおける炎症、肝障害や、NASH後の肝癌の発症を抑制している可能性が示唆された。本年度の研究実施計画の中では、全身性、及びマクロファージ特異的OSMRβ欠損マウスの解析が残っているため、次年度に行う予定である。一方、類洞内皮細胞において炎症を抑制する分子であるeNOSや、肝細胞増殖因子であるHGFの発現がOSMにより増加することを明らかにした。また、果糖誘導性のNASHの発症において、OSMRβからのシグナルが脂肪滴癒合や炎症を抑制している可能性が示唆された。類洞内皮細胞や肝細胞におけるOSMの機能的役割、及び果糖誘導性のNASHの発症原因に関する報告は少なく、今回の結果は、NASHを基盤とした肝癌の発症におけるOSMの役割を解明する上で大いに役立つ結果である。以上のことより、本年度の研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
NASHを発症するモデル(obMCDモデル:ob/obマウスにメチオニン/コリン欠乏食を4週間給餌したモデル)に対してOSMを連続投与し、OSMのNASHに対する治療効果を検討する。また、上記のマウスモデルに対してトレッドミルを用いて運動療法を行い、運動とNASHとの関連性についても検討する。評価項目として、肝臓における脂肪蓄積量・炎症・線維化・肝障害のレベルを検討する。 STAMモデルに対してOSMを投与すると肝癌の発症が抑制される可能性が示唆された。そこで、本年度は、STAMモデルの肝臓においてOSMRβが発現している細胞を同定し、それらの細胞におけるOSMの作用を解析することでOSMが肝癌を抑制する分子メカニズムを検討する。また、STAMモデルに対してトレッドミルを用いて運動療法を行い、運動と肝癌発症との関連性についても検討する。 全身性のOSMRβ欠損雄マウスを用いたSTAMモデルは離乳前にすべて死亡したため、投与するストレプトゾトシン(STZ)を減量し再度実験を行ったが、肝癌発症の個体差が大きく解析不能であった。雌マウスはSTAMモデルでの肝癌発症率が低いことが報告されているので、本年度は、OSMRβ欠損雌マウスを用いてSTAMモデルを作成し、肝癌発症の評価(腫瘍の数やサイズの検討、肝癌の転移巣の組織学的解析など)を試みる。 前年度、OSMRβflox/floxマウスとLysM-Creマウス、及びOSMRβflox/floxマウスとAlbumin-Creマウス交配させ、マクロファージ特異的、及び肝細胞特異的OSMRβ欠損マウスを作製した。今年度は、これらのマウスを解析することで、NASHを基盤とした肝癌の発症過程において、マクロファージや肝細胞でのOSMRβを介したシグナルがいかなる役割を担っているかを検討する。
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Research Products
(3 results)