2018 Fiscal Year Annual Research Report
中国周辺領域における社会主義的近代とジェンダーに関する社会学・人類学的研究
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17H02232
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
坂部 晶子 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (60433372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
賽漢卓娜 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (20601313)
首藤 明和 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (60346294)
奈倉 京子 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (70555119)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中国 / 社会主義的近代化 / ジェンダー / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新中国設立以降の中国各地の女性自身の語りから彼女たちの多元的な生活世界を再構成し、中国の周縁的領域での女性の生の経路について長期的な変容の社会史を描きだし、社会主義体制下での近代化から転形期への転換のなかでのジェンダーとの関わりの解明をめざすものである。この目的にしたがい、今年度行った具体的な調査・研究の概要は以下のとおりである。 第一に、中国における家族・女性研究の整理と分析を総合して、以下の作業を行った。(1)日本国内において関連メンバーによって2度の研究会を開催し、情報データの共有と意見の交換と集約等のディスカッションを行った。(2)9月に青島で開催した会議では、中国の家族研究の専門家を3名、研究協力者として招集し、プロジェクトメンバーとの意見交換を行った。中国社会科学院の呉小英研究員からは、中国におけるジェンダー研究の導入や展開、家族研究への影響など、理論的経緯についてサジェッションを受けた。また南開大学の杜平准教授からは、中国の都市出稼ぎ民の家族制度への影響について、最前線の研究報告を受けた。さらに延辺大学の全信子教授からは、中国東北から韓国への朝鮮族の結婚移民について全体的な流れと最新の調査報告による情報を得た。中国の家族研究の歴史と最前線について情報交換し、また本プロジェクトの研究枠組みについて精密なディスカッションを行った。 第二に、前年に引き続き、中国の地域社会における女性のライフヒストリーの収集と分析を行った。(1)プロジェクトメンバーはそれぞれの調査テーマにあわせて、中国および日本の調査地において現地調査を行った。(2)これらの調査で集められたデータは、上記の国内研究会および青島での研究会で検討され、調査データの集約と取りまとめについての検討が行われた。 これらの調査・研究の成果は、下記の研究報告に一部反映されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、前記目的に照らして、以下の三段階での研究実施を計画している。第一段階は、新中国成立以降の家族・ジェンダーに関わる調査研究をもとに、社会主義的近代の時期から転形期にかけての社会変容を軸として、女性のライフコースにかかわる重要な出来事や指標の抽出を行う。第二段階は、中国の周辺領域におけるフィールドワークをとおして、実際の女性たちの生き方に関するライフヒストリーを収集、分析することである。第三段階は、第一段階と第二段階を集約するかたちで、中国社会の女性の生の経路(ライフコース)分析のための新たなモデル構築をめざしている。 先に記した【研究実績の概要】にあるように、本年度は、(1)第一段階の作業については引き続き検討を行っているが、ほぼ目的を達成している。(2)第二段階の具体的なフィールド調査については、各プロジェクトメンバーが、昨年度に引き続きそれぞれのフィールドでの調査、インタビューを継続調査している。さらにそれらの調査データに関して研究報告を行い、取りまとめの方向性についても検討を進めている。(3)さらに、第三段階では、中国の女性の生の経路についての新たなモデル構築に向けた論文集の刊行にむけ、すでに各自が執筆段階に入っており、順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、上記【現在までの進捗状況】で言及した、研究実施の三段階にそって、次年度では第三段階を中心に、第二段階の補充調査をあわせて行う予定である。具体的には、(1)フィールド調査はおおむね終了しているが、調査報告書作成にむけて、さらに必要であれば各自補充調査を行う。(2)国内研究会および国際シンポジウムを開催し、研究成果の報告と取りまとめに際しての枠組みについて検討を行う。6月に東京で開催される日中社会学会第31回大会について、本プロジェクトが主催する「社会主義的近代化推進期から転形期にかけての中国の女性、家族の変容」と題するシンポジウムを予定している。報告者は哈爾濱師範大学の鄭楊教授、延辺大学の全信子教授、南開大学の杜平准教授をお招きし、コメンテータとしてプロジェクト・メンバーの長崎大学の首藤明和教授、長崎大学の賽漢卓娜准教授に依頼済みである。 これらの成果を総合し、最終的に研究報告書を日中社会学叢書の一冊として刊行するために、原稿執筆と翻訳、編集等の作業を行う予定である。
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