2017 Fiscal Year Annual Research Report
家族・経済・超越――近現代日本の文脈からみた共同体論の倫理学的再検討
Project/Area Number |
17H02260
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊野 純彦 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (00192568)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 純二 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (00345240)
横山 聡子 (宮下聡子) お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (00511825)
古田 徹也 専修大学, 文学部, 准教授 (00710394)
岡田 安芸子 (藤村安芸子) 駿河台大学, 現代文化学部, 教授 (20323561)
吉田 真樹 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (20381733)
荒谷 大輔 江戸川大学, 基礎・教養教育センター, 教授 (40406749)
中野 裕考 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (40587474)
佐々木 雄大 玉川大学, 農学部, 非常勤講師 (40598637)
麻生 博之 東京経済大学, 経済学部, 教授 (50317905)
岡田 大助 江戸川大学, 基礎・教養教育センター, 准教授 (50713210)
山蔦 真之 名古屋商科大学, コミュニケーション学部, 講師 (50749778)
朴 倍暎 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (70361558)
三重野 清顕 東洋大学, 文学部, 准教授 (70714533)
宮村 悠介 愛知教育大学, 教育学部, 助教 (70747089)
頼住 光子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (90212315)
板東 洋介 皇學館大学, 文学部, 准教授 (90761205)
池松 辰男 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (10804411)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 和辻哲郎 / 近代日本 / 神話 / 主体性 / 資本主義 / 『初稿 倫理学』 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、本研究の主要達成課題のうち、「和辻倫理学の参照軸としての設定」を中心とする研究がなされた。 近現代日本の共同体論の再検証でとりわけ重要となる和辻倫理学は、その周知ぶりに反し、なおその背景/形成過程に不明な点を抱えている。今回の研究では、ひとまずその一端を解明することに焦点を当て、テクストとしては『人間の学としての倫理学』に先行する著作「初稿 倫理学」などを中心に取り上げた。 また、平成30年3月には、その仕上げとして、当該テクストの編者らを招聘して、研究会「和辻倫理学の形成 『初稿 倫理学』をめぐって」を開催、当該テーマについての討論も実施した。この結果、和辻倫理学の背景に、当時最新の哲学研究・哲学的人間学研究などとの交流の成果を認めることができた。これは、和辻倫理学が近代日本の東西の思想研究との交錯のなかから生まれたものであることを改めて実証するものとして、相応の意義を有するものであると言える。また、この一連の研究・討論を通じ、研究者間での和辻倫理学の背景をめぐる大枠に加え、問題意識の共有も行うことができた。この観点からすれば、今年度の取り組みは一応の成功をおさめたと言える。 なお、上記の全体での取り組みに加え、今年度は部会単位で個別のテーマをめぐる検討会も実施した。平成29年10月には、「超越部会」の主催で、国外の研究者を招聘して、「日本神話における主体性」をテーマに、近代の主体ならびに共同体形成における「神話」の持つ意義を再検証した。平成29年12月には、「経済部会」と研究会「哲学/倫理学セミナー」の共催で、近代社会における資本主義の精神の背景を討論するワークショップを実施した(哲学/倫理学セミナー第122回例会「「資本主義の精神」とは何か?」)。これらはいずれも、来年度以降に本格的になされる共同体論の倫理学的再検討の、モデルケースとなるものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の取り組みの中心である「和辻倫理学の参照軸としての設定」は、大きな滞りなく進み、また一応の成果を見たと言える。18人にも及ぶ西洋思想・日本思想の専門家が、それぞれの専門をまたいで和辻倫理学の再検証を行うというのは、それ自体、近年にまず類を見ない試みであったが、これが首尾よくなされた結果として、とりわけ近代日本の文脈と照合させつつ近代西洋思想との交流の足跡を解明したことの意義は、特筆に値する。 また、この成果は和辻倫理学の問題意識――マルクスの批判的継承、ヘーゲルの「人倫」をめぐる所論の受容等々――を浮き彫りにするものともなっているが、これらはいずれも来年度以降の研究の起点となりうるものであり、来年度への課題継承という点でも研究はおおむねスムーズに進んでいると言える。 また平成29年度には、共同体論をめぐる二つの個別のテーマ研究も実施することができたが、これは(限定的な規模であったとはいえ)当初の目標を超える成果であったと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の段階では、和辻倫理学の背景検証における日本倫理思想史との照合などの点で、なお課題が残されたままとなっている。また、たとえば和辻の「経済」批判の主軸の一つである「町人根性論」などの検証にあたっては、当時の経済史・経済思想史の読み直しが不可欠であるが、これには外部の専門家の知見が必要となると予想される。そこで、平成30年度はまず、外部との連携を視野に入れつつ、こうした課題を解消することを当面の目標とする。 そのうえで、平成30年度の後半は、「家族・経済・超越各層をめぐる思想の内在的理解」をテーマに、部会ごとの個別のテーマ研究(文献学的方法に基づく、共同体論の思想史的背景の整理)を、本格的に活発化させていく予定である。またそれに伴い、昨年度までの実績や課題をもとに部会内部のメンバーの配置を一部組み替えるとともに、部会をまたぐようなテーマに取り組むグループを新設する。これにより、平成29年度と比べて、部会間の連携をいっそう活発化させていくことを目指す。
|
Research Products
(32 results)