2019 Fiscal Year Annual Research Report
家族・経済・超越――近現代日本の文脈からみた共同体論の倫理学的再検討
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17H02260
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊野 純彦 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (00192568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 純二 東北学院大学, 文学部, 教授 (00345240)
横山 聡子 (宮下聡子) お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (00511825)
古田 徹也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (00710394)
池松 辰男 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (10804411)
岡田 安芸子 (藤村安芸子) 駿河台大学, 現代文化学部, 教授 (20323561)
吉田 真樹 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (20381733)
荒谷 大輔 江戸川大学, 基礎・教養教育センター, 教授 (40406749)
中野 裕考 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (40587474)
佐々木 雄大 日本女子大学, 人間社会学部, 助教 (40598637)
麻生 博之 東京経済大学, 経済学部, 教授 (50317905)
岡田 大助 江戸川大学, 基礎・教養教育センター, 准教授 (50713210)
山蔦 真之 名古屋商科大学, 国際学部, 准教授 (50749778)
朴 倍暎 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (70361558)
三重野 清顕 東洋大学, 文学部, 准教授 (70714533)
宮村 悠介 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (70747089)
頼住 光子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (90212315)
板東 洋介 皇學館大学, 文学部, 准教授 (90761205)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 和辻倫理学 / アリストテレス / ヘーゲル / 家族 / 経済 / 超越 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の研究では、各部会がこれまで継続してきた共同体に関する個別の研究が深められた。例えばアリストテレスの奴隷制擁護論を読み替えて現代社会の分析に適用した研究(中野裕考)や、フェミニズムから男性中心主義的だと批判されがちなヘーゲルの家族論について、それが単に性の問題だけでなく市民社会論・国家論にまたがるような「自然」をめぐる大きな問題と関わっていることを指摘した報告(池松辰男)などが挙げられる。 他方、それら諸思想の参照軸となる和辻倫理学についての再検討もなされた。主要なものとしては、和辻の学問における宗教の位置づけについて、和辻に宗教的感性を認めない立場に対して、むしろ豊かな宗教性感性を有していたからこそ信仰と文化史研究を区分して前者を断念したと論じ、和辻解釈に新たな視点をもたらす報告が木村純二によってなされた。また研究分担者の山蔦真之が、和辻の「個人」概念についてカントやヘーゲルとの比較を通じて検討し、日本倫理学会2019年度大会共通課題において発表している。これらの研究は、単に和辻の思想の解明に留まらず、近代日本における伝統思想および西洋思想の受容・交錯実態に関する研究としても評価することができる。 また現代の共同体をめぐる問題状況の思想的前提を明らかにする研究としては、研究分担者の荒谷大輔が、著書『資本主義に出口はあるか』において、ルソーとロックの思想を参照軸としつつ今日の資本主義社会の思想史的来歴、およびそのオルタナティブを描き出すことを試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)全体的評価 (A)「家族」「経済」「超越」の三層をめぐる個別研究、(B)参照軸となる和辻倫理学・共同体論の検討、(C)近代日本における伝統思想および西洋思想の受容・交錯実態の解明の、それぞれについて着実な研究が積み重ねられている。また、2020年度はそれらを総括しつつ、今日の共同体をめぐる問題状況の思想的前提を問い直す作業が行われる予定だが、それを先取りする研究(荒谷大輔『資本主義に出口はあるか』や、池松辰男によるヘーゲル家族論の再検討など)も見られた。 (2)課題 2018年度以来の課題ではあるが、研究部会および研究分担者相互の連携には依然として課題が残る。各研究の問題提起のポテンシャルを生かせるような議論の枠組みの構築が求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる2020年度は、これまでに蓄積されてきた研究成果を総括し、今日の共同体をめぐる問題状況の思想的前提を問い直すことが目指される。 専門分野を超えた有機的な対話の方法論については、研究分担者の荒谷大輔・古田徹也らが日本倫理学会にて開催した専門間対話に関するワークショップにおいて継続した議論を展開しており、そこでの知見は本研究にも生かされるはずである。 また、研究分担者全員が参加する研究会の開催を予定しているが、その具体的な実施形態や頻度等については、新型コロナウイルス流行に関する状況の変化に応じて、適宜変更することがある。 これらの成果のうち、和辻の思想に関する研究は、ナカニシヤ出版より論文集として刊行される予定である。編集主幹は研究分担者の木村が務め、各論考の執筆者は木村・板東・藤村・宮村・吉田・頼住が担当する。また、個別の共同体論については、『倫理学紀要』(東京大学文学部倫理学研究室より刊行予定)に特集ページを組む。麻生・池松・佐々木・宮下らが寄稿を予定している。
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Research Products
(24 results)