2020 Fiscal Year Annual Research Report
New developments of the philosophy of mathematics
Project/Area Number |
17H02263
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
菊池 誠 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (60273801)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 賢吾 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (00224072)
岡田 光弘 慶應義塾大学, 文学部(三田), 名誉教授 (30224025)
三好 博之 京都産業大学, 理学部, 教授 (60286135)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 数学の哲学 / 論理学の哲学 / 計算の哲学 / 数学基礎論 / 証明論 / 集合論 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代の数学の哲学には (1) 数学の算術および集合論への還元,(2) 一階論理上での集合論の公理化,(3) 一階論理による証明概念の形式化,(4) チューリング機械による計算可能性の特徴付けという[四つの原理]がある.本研究はこの[四つの原理]と現代の[標準的数学観]の関係,[四つの原理]とそれらの相互の関係をに検討することで,数学の哲学の新たな展開と,計算・推論・情報の概念の哲学的解明を目指すものである.2020年度中は新型コロナウイルス感染症の拡大の影響のため研究会やワークショップの開催ができなかった.そのため,2020年度中は分担者の個人研究及び共同研究によって研究を実施し,以下の成果を得た.(1) 意味論と価値論の関係,システムの概念の分析を行なった.特に,意味論と構文論の関係と主観と客観の関係の同型性,要素・全体・環境という三層構造における機能の概念に基づくフレーゲの文脈原理および合成原理の再解釈を行なった.(2) PRA 証明論,証明論的順序構造と項書き換え系,図的情報提示の論理デザインのための社会心理学的調査,線形論理の観点による存在論的 TM 意味論研究,デフォルト推論の意味論と computer security への応用を考察した.(3) 直観主義論理(あるいはそれよりさらに弱い最少論理)に特殊な命題定項を加えた拡張言語への強い論理(古典論理等)の埋め込みについて議論した.(4) フレーゲの関数概念とラムダ抽象の関係の再考を行ない,フレーゲの関数概念には表現におていも内容においても未熟で不整合な点があることについて議論した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は数学および哲学の両面から数学の哲学の[四つの原理]と現代の[標準的数学観]を再検討し,さらに,[四つの原理]の分析と改訂を目指すものである.前者は中長期的な研究で,単年度で成果を求めるものではなく,本研究の研究期間全体を通して成果を挙げることを目指すものである.後者はより短期的な研究である.2020年度中は新型コロナウイルス感染症の影響が強く,当初予定していた研究会やワークショップ,対面での研究討議は全て実施不可能であり,また,大学の教育その他の業務の負担も著しく増大していた.その影響により,学会等での発表の回数は少なく,予定されていた3冊の書籍も刊行することができず次年度に延期することになった.一方で,数学の哲学と他の領域の関係の分析が進み,特に,社会科学における組織論や機能論と数学の哲学における意味論の関係を詳しく検討することができ,その結果を社会科学や工学の研究者とともに書籍の形で公表することができた.20世紀後半の分析哲学におけるプラグマティズムの影響や,価値論と意味論の関係の検討,それに基づくフレーゲの哲学の再考などの可能性が考えられる.このように,新たな可能性が見出されたことは評価に値すると考えられるが,当初の計画が予定通り進んでいないことを鑑みれば,全体としては研究の進捗はやや遅れていると判断せざるを得ない.
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度と同様に2021年度も新型コロナウイルス感染症の影響により,シンポジウムやワークショップの開催が困難であることが予想される.また,2021年度中には国際会議 Asian Logic Conference を開催の予定であったが,2020年度中にこの国際会議も中止が決定された.2021年度の研究は具体的な実施方法については当初の予定からは大きな変更が必要となっている.ただし,研究の内容については2020年度までの研究を踏襲する.特に,数学の哲学の[四つの原理]と現代の[標準的数学観]の再検討については,特に20世紀後半の哲学的な議論に基づき現在の証明論と集合論の再解釈を試みる.また,[四つの原理]の分析と改訂については特に19世紀の数学の展開とフレーゲやカントールの哲学の再考を中心に進める.その上で,2021年度中には,主にこれまでの研究成果を振り返り,今後の新たな課題を検討することで本研究の総括を行う.
|
Research Products
(9 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 価値創造の考え方2021
Author(s)
國部克彦,玉置 久,菊池 誠
Total Pages
256
Publisher
日本評論社
ISBN
978-4-535-55994-3