2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H02282
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
鷲巣 力 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (30712210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 公三 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (70159242) [Withdrawn]
樋口 陽一 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 名誉教授 (60004149)
小関 素明 立命館大学, 文学部, 教授 (40211825)
加國 尚志 立命館大学, 文学部, 教授 (90351311)
中川 成美 立命館大学, 文学部, 教授 (70198034)
湯浅 俊彦 立命館大学, 文学部, 教授 (70527788)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 加藤周一 / 知識人 / 丸山眞男 / 林達夫 / 山口昌男 / 網野善彦 / 反戦思想 / 科学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は戦後日本を代表する国際的知識人加藤周一の思想を戦後思想史のなかに位置づけることである。本研究の基礎作業が加藤の「手稿ノート」の研究とその成果としてデジタルアーカイブ化して公表することである。本年度は《Journal Intime 1948-1949》《Journal Intime 1950-1951》の二冊について、デジタルアーカイブ化して公開した。昨年公開した8冊の「青春ノート」の抄録を刊行するべく、編集校閲作業を進めた。さらに『加藤周一 その青春と戦争』(共著)の編集執筆も進めた。 加藤と丸山眞男との比較研究は、東京女子大学の丸山眞男記念比較思想研究センターと本研究を支える加藤周一現代思想研究センターとの間で研究提携の協定書を締結した。丸山研究センターの川口雄一氏は加藤研究センターの客員協力研究員についてもらい、研究会にて丸山眞男研究の推移について報告した。また『丸山記念研究センター報告』(第13号)に「加藤周一文庫と加藤周一の方法」を寄稿した。さらに山口昌男文庫をもつ札幌大学の公開講座に、本研究の研究者代表である鷲巣と川口雄一氏が参加して、研究報告を行なった。加藤と林達夫との比較研究では、鷲巣が中心となり林達夫研究を進め、成果として『イタリア図書』に「林達夫への精神史的逍遥」の連載を続けた。 加藤は生涯を通して反戦を貫き、反戦小説も著わしたが、研究分担者の中川成美は他の戦争文学との比較のために『戦争を読む』(岩波新書)を刊行した。 加藤周一記念講演会には、フランス哲学の浅田彰氏を招聘して「普遍的知識人の時代は終わったのか」と題した講演を行なって、加藤がもつ現代的意義について論じてもらった。研究会では、上記の川口氏の報告のほか、猪原透協力研究員の「科学し研究と加藤周一」と題した報告、石塚純一協力研究員の「網野善彦、山口昌男、加藤周一」と題した報告を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画が「やや遅れている」としたのは、主として「デジタルアーカイブ」構築作業である。当初計画では、《Journal Intime 1948-1949》と《Journal Intime 1950-1951》、そして《Notes on Arts》と『一休『狂雲集』註』の四冊をデジタルアーカイブ化する予定であった。加藤周一研究センターと加藤周一文庫が作成するデジタルアーカイブは「キーワード検索」機能をもっている。このキーワード検索を付与する作業は、多大な時間がかかり、加藤に対する高度な理解が必要である。しかし、十分に作業に熟達しているスタッフが不足したこと、かつ作業を進めるスタッフの院生が修論執筆によって、また別のスタッフが非常勤講師の仕事が始まったことによって、思いのほか時間を取られ、予定を遂行することが困難となった。《Notes on Arts》と『一休『狂雲集』註』の二冊については、2018年6月に公開する予定となった(結局、3カ月の後れ)。 さらに6つの分科会のうち2つの分科会責任者だった渡辺公三研究分担者が責任者として担当した「加藤周一と鶴見俊輔――その大衆性と政治性」そして「海外における加藤の評価」という研究主題が、諸事情により渡辺氏が研究分担者でなくなるという事態のなか、研究会の発表まで進められないままに終わってしまったことである。 計画のひとつであった研究会報告書の作成は、『丸山記念研究センター報告』へ「加藤周一文庫と加藤周一の方法」の執筆、『札幌大学創立五〇周年記念公開講座報告』への「加藤周一文庫の現在と将来」の執筆や『青春ノート』(今週刊行予定)および『加藤周一 その青春と戦争』(今週刊行予定)への執筆および編集作業に時間を取られた結果、主として時間が不足して困難となった。反省点の一つであるが、寄稿したふたつの報告は、われわれの研究報告でもあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように研究計画がやや遅れた理由については、何らかの改善を図ることが求められている。そうでなければ、2018年度もふたたび同じ問題が生じる可能性が高い。そこでまず「手稿ノート」のデジタルアーカイブ化作業については、スタッフを1名増強することとした(すでに2017年度途中から実施済み)。2018年度も可能ならばもう1名のスタッフを増やしたいと考えるが、上記のように加藤周一に対する高度の理解を必要とするので、誰でもよいというわけにはいかない。能力を見きわめながら、資金と相談しながら判断していくことになる。2018年度は4冊の手稿ノートの分析およびデジタルアーカイブ化を進める予定である。 研究分担者ではなくなった渡辺公三氏については、これまで連携研究者であった三浦信孝中央大学名誉教授と桜井均立正大学研究員を本研究の研究分担者とすることによって補いたい。両氏とも、フランス思想、フランス文学に深く通じており、かつ長年にわたって加藤周一と親交のあった研究者である。両氏によって「加藤周一とフランス文化」と「海外における加藤周一の評価」については不足なく補える。「加藤と鶴見俊輔――その大衆性と政治性」については、加國尚志、小関素明、鷲巣力の研究員が補う。 東京女子大学の丸山眞男記念比較思想研究センターとの研究提携について、さらに深めていくために、研究活動においても、企画展示においても、講演活動においても、共同企画「丸山が語る加藤周一 加藤が語る丸山眞男」という企画展示を予定する。また研究員の相互に派遣しあうことによって、研究活動の実態を学びあうことも視野に収めている。 2018年度は加藤周一歿後10年であり、10月には立命館大学における「土曜講座」において4回の連続公開講座を予定し大学外の協力も求めていく。2019年度は加藤周一生誕100年を迎え、日仏会館と国際シンポジウムを計画する。
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Research Products
(20 results)