2018 Fiscal Year Annual Research Report
アウタースペース/インナースペース/インタースペース・アートの美学
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17H02286
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
前川 修 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (20300254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 秀雄 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00324393)
古賀 一男 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 名誉教授 (30089099)
水野 勝仁 甲南女子大学, 文学部, 准教授 (30626495)
大橋 完太郎 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (40459285)
森 公一 同志社女子大学, 学芸学部, 教授 (60210118)
松谷 容作 國學院大學, 文学部, 准教授 (60628478)
岩城 覚久 近畿大学, 文芸学部, 講師 (60725076)
増田 展大 立命館大学, 映像学部, 講師 (70726364)
真下 武久 成安造形大学, 芸術学部, 准教授 (10513682)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バイオ / 宇宙 / アート / メディア / 無重力 |
Outline of Annual Research Achievements |
理論研究/事例研究に分けて説明する。 理論研究:①生命・自然班/②映像班/③知覚・脳科学班のうち、①生命・自然班については、8月開催の研究報告会においてバイオ/メディア/アートの結びつきをめぐり、戦後の言説的系譜を取りまとめ、以後、メディア論を軸にしながら、引き続き最新の言説の整理へ向かう方向と、逆に生物学の起点(19世紀初頭)へ向かう方向の可能性が議論された。②映像班では、同じく8月の報告会で、宇宙映画を素材にしながら無重力を重力下で表象化する方法について議論を行なった。③知覚・脳科学班では、8月の報告会では宇宙服のもたらす知覚の問題について議論をし、3月の報告会では、宇宙空間で視点を喪失する状態から逆に地上での幽体離脱的な反重力的視点を捉え直す議論を行ない、さらに2009年に開催の『宇宙と美術と人体と』展の作家へのインタビューをもとにした報告を素材に議論を進めた。また、本科研メンバーの真下/森によるドローンを使った作品制作の経過報告についても脳科学の観点から意見を交換した。 なお、生命自然班では、定期的に(年4回)バイオアートとメディア論に関する言説整理と文献消化の作業も行い、その一部を翻訳出版するプランも立ち上がっている。 事例研究では、8月に早稲田の先端生命医科学センターおよびBioClub、筑波宇宙センターでの調査を行い、それぞれの分担者がオーストラリアのバイオアーティスト、オロン・カッツのラボ視察、アルスエレクトロニカの巡回展、佐賀宇宙科学館などの視察を行い、上記の研究会で意見交換を行った。西オーストラリアのSimbioticAでの学会には岩城・増田がそれぞれバイオアート、スペースアートについて報告を行い、各国の研究者と意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生命・自然班、映像班、知覚・脳科学班のうち、今年度明確になったのは、以下のポイントである。 映像班と知覚・脳科学班の連携のための結節点は、第一に、重力/無重力表象であるが、一方で現在の最新の撮影装置を使用した映画をめぐる考察と、他方でVRを素材にしたアーティストによる地上での重力および視点の分裂性をめぐる考察を引き続き各々検討していく必要のあることがわかった。生命・自然班については、第一に、さらに言説を遡及的に検討していく必要があり、自然哲学から生物学が分岐する地点に照準することが今後の作業の上で不可欠であることが判明した。第二に、宇宙生物学や宇宙生命科学との結節点を見出すためには、生命一般に議論を拡大し、対象を網羅するよりも前に、限界生物を中継地点として考察を今後進めていく必要のあることがわかった。 事例研究としては、各関係機関(バイオアートおよびメディアアート関連)を調査しているが、バイオアートについてはアートフェスティバルで短期間展示されることもあり、タイミングよく視察する難しさがあったが、各国で開催される展覧会およびシンポジウム情報を交換することで引き続き調査に当たりたい。また、無重力の視覚を実際に作品制作のプロセスを素材にしながら議論することが各分担者にとってきわめて有意義であった。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の計画に基づき進めていくが、3つの班をどのように収斂させていくかを計画よりも具体化しなければならない論点はある。 ①生命・自然班については、一方で生物学の起点から現在を捉えなおす作業に着手していくが、他方で、③との宇宙生物学/宇宙生命科学との交差点となる具体的な生物事例を巡っての議論、同時に人間を中心に据えた宇宙での無重力環境下での環境形成と脳科学や知覚(論)との議論を行う必要がある。 ②映像班は、これまでと同様、宇宙表象を見る体験から議論する枠組みを構築していくが、他方で、アートの実践へとこうした枠組みをつないでいく議論も、同時に必要になってくると思われる。以上のプランをすべて同時進行で進めていくが、今年度前半には、①の生物学の起点に、②の宇宙表象としての映画に、③の宇宙環境下の論点に力点を置く(生物事例についても意見交換を行う)。年度後半には、それぞれの収斂点の進度を考慮しながら、相互につながる三つほどの結節点を明確にしたい。なお、作品制作のプロセスが年度を通じて進行させ、適時コメントや議論を行いながら、最終的には何らかの形で展示および講評を行いたい。 以上、中規模以上の研究集会を2回、それ以外にもその準備報告会を数回開催し、作業を進めていくことにしている。
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Remarks |
研究会開催情報と関連機関へのリンク、資料一覧を掲載。
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Research Products
(20 results)