2017 Fiscal Year Annual Research Report
カタストロフィの想像力:ドストエフスキー文学の現代的意味とその世界展開
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17H02329
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
亀山 郁夫 名古屋外国語大学, その他部局等, 学長 (00122359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 良児 名古屋外国語大学, 外国語学部, 教授 (40123327)
甲斐 清高 名古屋外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50367835)
野谷 文昭 名古屋外国語大学, 外国語学部, 教授 (60198637)
梅垣 昌子 名古屋外国語大学, 外国語学部, 教授 (60298635)
諫早 勇一 名古屋外国語大学, 外国語学部, 教授 (80011378)
望月 哲男 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 名誉教授 (90166330)
番場 俊 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (90303099)
越野 剛 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 准教授 (90513242)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ドストエフスキー / カタストロフィ / ロシア文化 / 表象文化論 / 非寛容 / 黙過 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、2つのイベントを中心に研究活動を行った。1、全体研究集会「カタストロフィの想像力:ドストエフスキー文学の現代的意味とその世界展開」(2017年7月15日、東京大学)では、望月哲男(「『白痴』:時間論の背景」)、亀山郁夫(「復活と死の境界にて――『白痴』をめぐる一考察」)、番場俊(「『白痴』の顔への文化史・文化理論的アプローチ」)の3研究発表を中心に、主に『白痴』を対象としつつ、時間論、作品論、表象文化論の観点からアプローチした。2、ドストエフスキー国際ワークショップ及びドストエフスキー国際シンポジウム(A:名古屋、B:東京)の開催である。国際ワークショップでは、越野剛の基調報告(「ドストエフスキーにおける病と火事」)をめぐって集中的討議が行われ、国際シンポジウムA「ドストエフスキーと世界文学における《赦し》」(3月10日、名古屋外国語大学)では、デボラ・A・マルティンセンの基調報告「非寛容の悲劇-ドストエフスキー『白痴』論」を中心に、望月、番場、林良児、甲斐清高がパネリストとして論評し、国際シンポジウムB「ゼロ年代のドストエフスキー」(3月13日、東京大学:本郷)では、マルティンセンによる基調報告「ドストエフスキー『罪と罰』における恥と罪」及び作家の平野啓一郎による特別講演を中心に、諌早勇一による総括コメント、沼野充義、平野、亀山をパネリストとする集中討議が行われた。その他、亀山は、日本ドストエフスキー協会との連携のもと、名古屋外国語大学にてドストエフスキーに関する3度のパイロットセミナーを開催した。主な発表論文としては、亀山郁夫「『黙過』の想像力――『カラマーゾフの兄弟』(『文學界』、2017年10月号)」(査読無)、望月哲男「名場面からたどる『罪と罰』(『NHKテキスト まいにちロシア語』、2016年4月号~2018年3月号)」(査読無)等がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は、ドストエフスキーの5大長編の中の一つ『白痴』を研究対象として全体研究集会が持たれ、ドストエフスキー国際ワークショップ、ドストエフスキー国際シンポジウムでは、同じく『白痴』、そして『罪と罰』が議論の対象となった。個別研究においては、第1チームが「テロリズムと倫理」を、第2チームが「ドストエフスキーと異端派」を、第3チームが「精神科学の観点から見たドストエフスキー」を、第4チームが「ポスト社会主義圏における創造的展開」を目標に掲げたが、第1チームの実績としては、亀山郁夫「『黙過』の想像力」(『文学界』)がある。第2チームの実績として、望月哲男により継続的に行われている分離派、異端派研究がある。第3チームの成果としては、越野剛の基調報告「ドストエフスキーにおける《病》の想像力」にその結実を見ることができる。問題は、第4チームのテーマが、まだ研究の緒についたばかりでほとんど成果を収めることができなかった点である。来年度の課題としたい。ただし、国際規模の集会においては、予想を上回る実績を残すことができた。予定した国際ワークショップに国際シンポジウムを合体させ、その双方で、本研究テーマと深く関わる「病」「非寛容」「恥辱」等の主題が据えられた。また、世界展開の例として、ウィリアム・フォークナー(梅垣昌子)、マルセル・プルースト(林良児)、チャールズ・ディケンズ(甲斐清高)らを参照軸として数々の意見が出され、世界文学との比較の観点に一定程度の広がりを獲得することができた。ただし、歴史的観点から見る「カタストロフィ」の問題性については十分な研究がなされなかったと思われる。この観点については、2018年度の重点課題の一つとすることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、第1チームが「ユートピアと自由」を、第2チームが「ドストエフスキーと正教」を、第3チームが「小説と思想・科学の言語」を、第4チームが「欧米におけるドストエフスキー文学の創造的展開」をテーマに掲げている。第1チームでは、『悪霊』と『カラマーゾフの兄弟』が議論の中心となり、第2チームでは、引き続き、異端派との関連性のなかで研究が続けられる。第3チームは、若干の軌道修正を行い、翻訳論により踏み込んだ議論を展開できればと考える。2018年度は、第4チームのテーマにとくに重点を置きたいと考える。ドストエフスキー文学の現代性は、とくに演劇、映画ジャンルでのプロット応用で創造的展開を見せている事情によるもので、今年7月(ないし9月)に予定している全体研究集会でもこのテーマを第一の議論の対象としたい。また、2018年10月に開催予定の日本ロシア文学会全国大会のプレシンポジウムにおいては、「《カタストロフィ》とロシア文化」(仮題)と題するシンポジウムを開催し、研究代表者の亀山が、『白痴』における生と死の境界性をめぐる報告を行う予定である。なお、これとは別途、海外から研究者(パーヴェル・フォーキン氏と交渉中)を招聘し、「ドストエフスキーにおける《カタストロフィ》の想像力とその世界展開」と題する国際シンポジウムを開催する予定である。
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Research Products
(12 results)