2018 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパにおけるモビリティの増大に伴う農村人口変動と新たなルーラリティの創出
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17H02431
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
山本 充 専修大学, 文学部, 教授 (60230588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 聡史 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (10314460)
伊藤 徹哉 立正大学, 地球環境科学部, 教授 (20408991)
飯嶋 曜子 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (20453433)
市川 康夫 明治大学, 研究・知財戦略機構, 日本学術振興会特別研究員 (60728244)
飯塚 遼 秀明大学, 観光ビジネス学部, 講師 (80759522)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 農村 / 農村移住 / ルーラル・ジェントリフィケーション / モビリティ / 地域政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
スコットランド・インバネス近郊農村、東チロル・ガイル河谷、南フランス・ジュラ地域において、景観調査および農村への移住者のインビュー調査、アンケート調査を行った。インバネス近郊村では、インヴァネスとの近接性が向上したことにより住宅地開発が進展し、伝統的農村が通勤者農村と変容していったこと、2000年代以降、流入者の性質が変化し、専門的職種に従事する高所得者層が流入し、ジェントリフィケーションが進行していることが明らかになった。東チロル・ガイル河谷では、夏期休暇で訪れた経験をもとに、山地の景観や環境、そこでにアクティビティを求めて、ドイツやオランダなどから定住者が流入していることが明らかとなった。ジュラ地域の調査結果から、地方の人口増加において中都市および小都市の影響が重要であること(雇用、教育、居住アクセス)、また、農村への人口回帰の嚆矢は1968年の五月革命を発端とする若者の移住であり、その後1990年代にかけて都市の中産階級の郊外移住を中心に拡大したことが明らかになった。 また、ミュンヘン工科大学、およびミュンヘン大都市圏事務局などにおいて、ヨーロッパの都市における「モビリティ」の評価・現状に関する資料収集を行った。ミュンヘン大都市圏において、公共交通機関における大都市への近接性に地域間格差が存在し、格差是正へ向けた高速道路網および鉄道網の整備が進展していること、大都市圏内での鉄道網の整備については、基礎自治体の連合による施策が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 加えて、EUの資料に基づき、農村・地域政策の変遷を把握するとともに、政策における多様なスケールの領域および、農村地域の位置づけを把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オーストリア、フランス、イギリスにおけるそれぞれの調査対象地域において、現地調査を遂行し、農村移住に関してある程度の評価が可能なデータを収集することができた。そして、それぞれの成果を研究会において発表、議論することで、国ごとの異同を把握でき、今後の調査にとって有益となった。また、こうして収集したデータをもとに学会発表を行い論文を公開した。加えて、こうした農村移住の背景にあるヨーロッパの都市社会におけるモビリティについても資料を収集して、モビリティの増大を評価することが可能となり、かつ、EUの農村政策の概要について把握することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
地域レベルの各種政策において、アクセシビリティの確保・増加がどのような理念のもとで計画され、そして、実行されてきたか、各レベルの計画書や報告書、担当者へのインタビューによって把握する。加えて、そうした政策のもと、ドイツを中心として、モビリティがどのように増大しているのか、移動の目的ごとに、どのような属性がどこからどこに移動しているか把握する。 ヨーロッパレベルにおいて、また、同時に国レベルにおいて、都市から農村への人口移動を統計を用いて把握する。季節的な移動については、主たる居住地で登録する第一居住地登録と副次的な居住地に登録する第二居住地登録のデータを用いて把握し、都市から農村への移動を、観光から定住に至る間の多様な形態をトータルに捉えることを試みる。 オーストリア、イギリス、フランスにおいて、昨年度に引き続き、事例農村を取り上げ、現地調査を行う。それぞれ、人口動向を統計資料によって把握し、そして、現地観察によって景観上の特色を、統計資料と現地観察により、商業・サービス機能の立地状況、種類、質(経済面)を、アンケートとインタビューによって、職業・年齢・居住歴など社会の特性を、役場や民間組織におけるインタビューによって、文化活動の種類や参加状況(文化面)を把握する。これら調査結果を統合することにより、農村への流入者が加わることで生み出される新たなルーラリティの特質を明らかにする。 これらそれぞれの成果を持ち寄り、情報と課題を共有し、その上で議論を行い、政策によるアクセシビリティの増加がモビリティの増大、ひいては農村への流入をもたらし、新たなルーラリティの創出に至るプロセスを考察する。
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Research Products
(11 results)