2017 Fiscal Year Annual Research Report
Republicanism, Constitutionalism, and Liberalism in American Thought: Ideas for Controlling Democracy
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17H02479
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇野 重規 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (00292657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷澤 正嗣 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (20267454)
森川 輝一 京都大学, 法学研究科, 教授 (40340286)
片山 文雄 東北工業大学, 教職課程センター, 准教授 (40364400)
石川 敬史 帝京大学, 文学部, 准教授 (40374178)
乙部 延剛 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (50713476)
小田川 大典 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (60284056)
仁井田 崇 名城大学, 法学部, 准教授 (70611630)
前川 真行 大阪府立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80295675)
山岡 龍一 放送大学, 教養学部, 教授 (80306406)
井上 弘貴 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (80366971)
小野田 喜美雄 東北大学, 法学研究科, 特任フェロー (80754499)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アメリカ思想 / 共和主義 / 立憲主義 / リベラリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の初年度にあたる本年度は、研究体制の構築をはかった。 18世紀研究班については、アメリカ建国期の政治思想を研究することが中心的課題となる。石川敬史はこれまでアダムズを中心に研究を進めてきたが、今年度はマディソンら『ザ・フェデラリスト』を執筆した「建国の父」たちはもとより、大西洋を超えた君主制や立憲主義をめぐる議論の連続・非連続についても考察を加えた。その成果を「アメリカ連邦共和制における主権とは何か」と題して報告し、全参加者で議論を行った。結果として、主権をめぐる論争において、予想以上にヨーロッパとアメリカとで思想的な相互影響があることが明らかになった。 20世紀研究班については、プラグマティズムからリベラリズムへの展開、およびロールズ以降の政治哲学へと発展する過程を検討することが課題となる。谷澤正嗣はロールズの影響を受けた第二世代、第三世代の研究者について検討を行うが、本年度は特に政治的責務論について、シモンズを中心に哲学的アナーキズムを研究し、その成果を報告した。乙部延剛はこれまでコノリーなどを研究してきたように、フランス現代思想とアメリカ政治理論の架橋が重要な研究課題である。今年度は特に現代政治哲学における分析系の哲学と、これに対抗する大陸系の政治哲学について検討を行い、その成果を報告した。谷澤、乙部の報告についても活発な議論が行われた。二つの報告によって、英米の分析系哲学と、それに対する大陸系政治哲学の変化、及び英米の政治哲学内部における多様な潮流の位相が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は18世紀研究班と20世紀研究班から研究成果が報告され、その内容の検討と共有が行えた。それぞれに有意義な内容を含むものであり、今後の共同研究に対して重要な貢献となるであろう。18世紀研究班については、今後もヨーロッパとアメリカの政治思想の間の相互作用について、検討を進めていきたい。「主権」のような基礎概念についても、両者の間には興味深い差異性がみられる。この差異性の持つ意味をさらに検討していくことで、その意義はより大きくなるであろう。 20世紀研究班についても、特にロールズ以降の政治哲学の検討において、大きな進展がみられた。一言にロールズ以降といっても、分析系の政治哲学が発展するなか、多様な潮流はダイナミックな変化を見せている。さらにその外部には、ヨーロッパ大陸の哲学的伝統とも連なる多様な展開が見られる。これら現代政治哲学の全体像を俯瞰しつつ、全体としての研究の方向性を見定めることが重要である。 19世紀研究班、及び20世紀研究班のうちロールズ以前については、今年度は研究報告は行われなかったが、着実に研究は進んでおり、次年度においてその成果が明らかになるはずである。全体として研究は概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も定例の研究会を続け、通史的な視点の確立と全体的枠組みの決定を目指す。共和主義、立憲主義、リベラリズムを貫く座標軸を見定めることが重要である。 まずは18世紀における共和主義と立憲主義の関係について集中的に検討を行う。共和主義と立憲主義はヨーロッパからの影響を受けつつ、アメリカの地で独特な展開を見せた。両者は独立戦争を通じて、どのように交錯したのか。党派的には共和主義のリパブリカンと立憲主義のフェデラリストが対立したように見えるが、二つの思想関係は決して単純ではない。対立する側面と共有する側面の両方を見ていく。 次にプラグマティズムとリベラリズムの関係についても考察を進める。19世紀アメリカでは、固有の哲学であるプラグマティズムが発展する。このプラグマティズムが20世紀において、どのようにアメリカン・リベラリズムの生成と発展に寄与したか、デューイを中心とする思想家の関係を探っていきたい。その上で、共和主義、立憲主義、リベラリズムを貫く歴史的構造把握を目指す。 この目的のため、昨年度に続いて、研究会を開催する。二年間の間にすべてのメンバーの報告を終え、さらにメンバーでは補い切れない分野について、適宜外部講師を招く。このような研究会を通じて、共和主義、立憲主義、リベラリズムの定義、それぞれの関係、アメリカ政治思想史の通史的展望について、メンバーで構想を共有することを目指す。さらには、三つの構想を単に歴史的なものとせず、現代的な意味において 再定義する可能性を模索したい。流動化の進む現代に於いて、民主政を単に制限するばかりでなく、それと同時に民主政を市民のイニシアティブで再構築していくためには、いかなる制度的工夫が求められるか。この点について何らかの示唆を見出すことが、この研究の最終的なゴールを決定する上で、重要である。
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Research Products
(13 results)