2020 Fiscal Year Annual Research Report
財政競争における部分協調の維持条件に関する理論研究
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17H02533
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 光 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (10313967)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津布久 将史 大東文化大学, 経済学部, 講師 (20802333)
古村 聖 武蔵大学, 経済学部, 准教授 (30735783)
須佐 大樹 立命館大学, 経済学部, 准教授 (30759410)
家森 信善 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (80220515)
内藤 徹 同志社大学, 商学部, 教授 (90309732)
笠松 怜史 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 助教 (50848364)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 財政政策 / 政策協調 / 地域金融 / 労働経済 / 不完全競争 |
Outline of Annual Research Achievements |
財政競争理論班において行われた研究が複数、国際学術雑誌に掲載されるに至った。そのいくつかの概要は以下のとおりである。Kawachi et al. (2020)では、国際資本市場へのアクセスが容易な地域同士の税競争は逐次手番になり、国際資本市場とのリンクがない地域同士の場合は同時手番の競争になることが明らかになった。ただし、この結果は公共投資を政策手段にした場合には逆になることも示されている。Fukasawa et al. (2020)では、財政競争理論を日本のふるさと納税制度の下での地域間競争に適用できるという発想のもとで、日本の市町村が過剰な返礼品競争を行っている可能性について検証した。2015年から2018年の全市町村のデータを用いた空間計量経済学アプローチによる推定の結果、返礼品の過剰な競争ゆえに、競争を抑制した場合に比べて均衡において純収入が7.5%程度低くなる可能性を指摘している。Kasamatsu and Ogawa (2020)では、過剰な税競争が生じる状況において、国際資本市場とのアクセス性がよいほど部分的な2国間協調が成立しやすいことを無限機関繰り返し税競争モデルのもとで証明した。さらに、Kasamatsu et al. (2020)では、資本市場におけるポジションが類似した国同士の間で税競争が行われる場合には、隣国に対して利他的な政治リーダーが各国の選挙を通じて選ばれるが、一方が資本輸入国であり、他方が資本輸出国であるといった形で異なるポジションにある国の間で税競争が繰り広げられる場合には、隣国に対して非利他的な政治リーダーが選ばれることを明らかにした。いずれの研究も、単純に税政策というわかりやすい手段以外に、政策決定のタイミングや国内政治構造といった国際協調が難しい手段で競争する場合の均衡の性質を明らかにするという研究目的に沿った成果となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本事業スタート初年度は、計画以上に進捗する成果を上げて、その後も順調に研究を進めていた。しかし、本年度は計画していた国際学会での成果報告がすべてできない状況になり、研究進捗にブレーキがかかった。ただし、学術論文としての成果は、しっかりとしたレベルの国際誌に出ているので、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となるので、既に評価を受けるために投稿している論文の査読コメントへの対応を中心に、学術雑誌への論文投稿及び掲載を果たすことを中心に活動する。また年度の後半には、5年間の研究過程を整理する中で、残された課題と新たなテーマを議論するミーティングの場をもち、次期に向けた新たな政策分析領域の設定を行う。
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