2017 Fiscal Year Annual Research Report
An empirical investigation on methodological conversion of economic policy for SMEs through economic gardening method
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17H02569
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
竹村 正明 明治大学, 商学部, 専任教授 (30252381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 一 明治大学, 商学部, 専任教授 (00205478)
石田 万由里 玉川大学, 経営学部, 准教授 (30782370)
山本 尚史 拓殖大学, 政経学部, 教授 (80381341)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エコノミックガーデニング / 中小企業政策 / 自治体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中小企業振興政策の方法論的転換の効果と方法を実証的・理論的に明らかにすることである。平成29年度は初年度で、計画に沿って主に2つの作業を完了した。第1に自治体調査である。具体的な作業としては、経済成果の高い自治体を特定することであった。この成果は、先行する作業と結合し、経済レジリエンスを測定することで実現した。経済レジリエンスは、地域経済のパフォーマンス変数として地域産出や労働生産性よりも有力である。それは地域産業の有機的結合状態を測定すると期待されるからである。つまり、外的ショックに対して経済パフォーマンスを維持する地域は、つながりの欠損に対しての補完性が高いと考えられるのである。地域内産業のつながりの有効性(強いつながり、柔軟なつながりと測定は構成概念となる)が、産業成果を安定化させるのである。 今年度の作業として、経済レジリエンスを外的ショックに対する経済の落ち込み具合(耐性)と回復速度(ショック前までの水準への復帰の程度)として測定し、全国14都市を特定した。リーマンショックに対して、経済レジリエンス(耐性がありと回復速度が早い)都市が813都市(工業統計と商業統計に現れる)中、14しかないことが驚きである。 第2に、自治体データベースの作成である。当初の計画では、この作業を外注によって行う予定であった。しかし、経済レジリエンスを特定する先行作業によって813都市を特定したので、市販の自治体データベースによってそれらの都市はカバーできていることがわかった。これ以外の自治体は、財務データを公表していないか、公表していても期間が限定的で、データベースとしては機能しないので、この813自治体を本研究の基本的なデータベースとすることにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況は良好である。 まず、本年度に計画していた経済レジリエンス測定モデルの開発が、前年度の作業によって一部先行的に実現したからである。この作業は非常に有効で、測定変数の選択に理論的な基礎付けが必要ではあるが、経済レジリエンスを実証的に推定できることを示した。 今年度達成課題は、自治体データベースの確立であった。市販のデータベースに不足する自治体を入力業務を外注することで確立する計画であった。ところが、経済レジリエンスの測定モデルの開発によって、このデータベース構築にも、非常に有効な手法が獲得できた。それは、各種データの揃わない自治体の存在が判明したことである。分析のフィージビリティを考えると非常に効率的になるだろう。 経済レジリエンスの測定モデル開発では、商業統計表と工業統計表を用いた。そこでの問題意識は、世界金融恐慌2007-2008(日本国ではリーマンショックと呼ばれる)で、日本国の各都市が受けた外的ショックとそこからの回復度によって、経済レジリエンスを測定することであった。外的ショックに対する経済の落ち込み具合(耐性)と回復速度を測定した。 3つのモデルを想定する。均衡回復型レジリエンス、生態系的レジリエンス、そして進化型レジリエンスである。(1)均衡回復型レジリエンスは、ショック前の成長経路に回復することが判定基準である。(2)生態系的レジリエンスは、ショック後に、成長経路が異なることが特徴である。生態系は、どのように回復するかわからないので、複数の回復成長経路を想定するのが一般的である。進化型レジリエンスである。これは、外的ショックから回復するときに、完全に従来の成長経路と異なるレベルで復活することである。ゼロベースでの成長や戦争で都市が完全に破壊されたような場合に観察される可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30(2018)年度の主たる課業は、経済レジリエンス推定モデルの開発であった。本年度はそのモデルの開発を行うが、既述の通り、すでに昨年度においてモデルの開発が一部実現した。そこで本年度は、さらなる精緻化を進めるのみならず、実証分析も行うことができるだろう。 経済レジリエンス推定モデルとは、外的ショックへの耐性と破壊状態からの回復速度を測定する理論枠組みである。先のモデルでは外的ショックとして2008年前後に起こったリーマンショックを措定した。今年度は、すべての年度でそのレベルを推定することができるだろう(ただし、商業統計は隔年であるので、推定はその年度に準ずる)。 均衡回復型レジリエンスを推定する尺度として、耐性と回復量が定義できる。耐性は、経済の落ち込み具合である。たとえば、2009年の工業産出高が2007年の何%かで測定できる。回復力は、2013年の工業産出高が2007年の何%かで測定できる。第2に、生態系的レジリエンスを推定する手法として、各市の経済状態を推定した。具体的には、2003年から2007年までを第1期(安定的な成長をしていた時期)、2007年から2009年を第2期(リーマンショックが一番大きかった期間)、そして2009年から2013年を第3期(アベノミクスによる成長経路の発現)と措定できるだろう。 それぞれの期間で工業生産高の年平均変化を測定し、第2期が第1期に比べてどれだけ大きいかで、その都市の耐性(ここでは頑健性と概念化している)が特定できる。それはリーマンショックの影響が軽微であったことを意味している。一方、第3期の数値が第1期よりも大きい場合に、生態系的レジリエンスがあると解釈できる。このモデルを実証的に検証するのが本年度の課題である。
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