2019 Fiscal Year Annual Research Report
現代家族の過程と実践をめぐる質的研究に対する組織的取り組み
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17H02596
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
木戸 功 聖心女子大学, 現代教養学部, 教授 (80298182)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸江 哲理 神戸女学院大学, 文学部, 准教授 (10723968)
安達 正嗣 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 教授 (20231938)
鈴木 富美子 東京大学, 社会科学研究所, 特任助教 (50738391)
阪井 裕一郎 福岡県立大学, 人間社会学部, 講師 (50805059)
松木 洋人 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (70434339)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 家族社会学 / 全国家族調査 / 質的調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
第4回全国家族調査(NFRJ18)質的調査の実査を行なった。2019年5月にインタビュー調査の第一次依頼を行い214名からの応諾を得た。7月には2019年度第1回全体研究会を2日にわたって聖心女子大学で開催し、調査に際して必要となる文書類やICレコーダー等の機器を本研究会メンバーに配布するとともに、実査に向けた最終的なインストラクションを実施した。あわせて、第一次依頼に対する応諾者の中から、多様性班、家族と高齢者班、子育て班、結婚・ワークライフバランス班のそれぞれの研究班が、調査を依頼する対象者を選定した。 8月より開始したインタビュー調査は、担当者が対象者に電話等で直接依頼をし、日程等の調整しながら順次実施された。11月に実施した101ケース目をもってインタビュー調査の実査は完了した。調査ケースごとに、実査終了後に担当者は業務を委託した業者に音声データの文字起こしを依頼した。 11月に2019年度第2回全体研究会を聖心女子大学にて開催し、インタビューデータにおける個人情報の秘匿化を含むデータ加工の方針を確認した。本調査においては、インタビューのやりとりを文書化したデータに加えて、データ収集のプロセスやその文脈を担当者以外の者が一定程度共有することができるように、ケースごとにメタデータを作成することにした。 インタビュー調査を実施した101ケースのうち、8ケースについてはさらにフィールドワーク調査への協力も得ることができた。フィールドワーク調査については11月より順次調査を開始した。そこでは調査担当者が協力者のご自宅を訪問し、日常的な家族のやりとりをビデオカメラで撮影するという記録方法を採用した。ただし、その後の新型コロナウィルスの感染拡大により、訪問しての撮影に代えて、ビデオカメラを預けて、ご自身で撮影してもらうという方法をとるにいたった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度内に目標としていた100ケースをクリアし、インタビュー調査を完了することができた。ただし、2020年初頭からの新型コロナウィルスの感染拡大などの想定外の事情により補助金の繰越しを2020年度、2021年度と行い、研究の進捗にはやや遅れがでた。当初予定していた対面での研究会の実施が叶わず、調査担当者の手元に残る、ローデータ(音声など)等の回収も遅れることになった。 2020年度は調査担当者による加工済みデータの作成とその回収、さらにそれをふまえて研究会メンバー間でのデータの共有を目標とした。12月に2020年度第1回全体研究会をオンラインで開催し、何人かのメンバーによる担当したケースのデータを用いた分析のアイデアが報告された。2021年2月にはその時点で使用が認められた74ケースのデータセットをNFRJ18インタビューデータver. 1として配布し、研究会メンバーによる利用を開始した。これをふまえて2021年3月に第2回全体研究会を開催し、何人かのメンバーによる分析のアイデアが報告された。その後9月には5ケースを追加し、NFRJ18インタビューデータver. 1.1を共有している。 2021年9月に開催された日本家族社会学会第31回大会では、テーマセッション(3)「全国家族調査18質的調査にもとづく成果報告」を組織した。そこでは4人の研究会メンバーによる報告がなされ、本調査にもとづくデータを使用した研究成果が公のものとなった。 感染状況が落ち着いた2021年11月より、研究会メンバーの手元に残るローデータ(音声など)が記録されたSDカード等の物品回収を行い、2022年3月までにすべての回収を終えた。また、調査協力者へのお礼を兼ねて、インタビューデータの抜粋とそれに対する調査を担当した者のコメントを付したリーフレットを作成し、2022年3月に送付した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題として実施したNFRJ18質的調査は、日本家族社会学会の事業である全国家族調査(NFRJ)に質的研究の立場から参画するものである。先行する量的調査より対象者を引き継ぎ、100名を目標にインタビュー調査を実施し、さらに数ケースのフィールドワーク調査を実施することを試みた。共同研究として質的調査を計画し実施することで、研究者間の相互のやりとりを活性化させ、互いに学び合う機会を作ることで質的な調査研究の水準を向上させることも狙いの一つであった。 本研究の今後の推進方策は大きく二つある。まず、研究会メンバーによるデータの利用促進があげられる。全国家族調査として初めて実施された質的調査のデータを用いて、現代日本の家族をめぐる新たな知見を生み出すことが求められる。これについては、全てのメンバーによるものではないが、インタビュー調査の成果物の一つとして、書籍の出版に向けた準備にとりかかっている。また、フィールドワーク調査については、ひきつづきデータセッションを継続しながら、分析の可能性を探る。 公共利用データの作成をその目的の一つとしている全国家族調査の一環として実施された本調査は、将来的なデータの公共利用を見越した設計と実査が行われている。いまひとつの推進方策としては、得られたデータのアーカイブ化に向けたとりくみをあげることができる。質的調査データのアーカイブ化に関してはインフラとしてのプラットフォーム作りが課題であるが、本研究のみの力でそれが実現できるわけではない。とはいえ、今後そうした環境が整った際にはすみやかにデータの寄託等ができるように準備を進める。具体的にはインタビューデータの形式の統一や補正と、研究会メンバーによるデータの利用促進と合わせて進めることができるような、インタビューデータのデータセッションの開催を企画している。
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Research Products
(5 results)